衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成二十年五月八日提出
質問第三六四号

後期高齢者医療制度における世帯のとらえ方に関する質問主意書

提出者  山井和則




後期高齢者医療制度における世帯のとらえ方に関する質問主意書


 後期高齢者医療制度は、七十五歳以上の国民を、これまでの世帯単位の健康保険制度から分離するものである。これまでの生計を一にする家族の絆を基本とする健康保険制度の在り方から、個人単位の在り方に、制度設計は大きく変更された。しかし、この制度設計の変更は多くの不整合を生じさせている。世帯のとらえ方の問題について、以下質問する。なお以下の質問においては、国民健康保険料の軽減措置について考える場合、市町村が七割・五割・二割軽減の三段階の軽減措置をとっていると仮定する。

一 厚生年金年額二一〇万円を受給する七十六歳の夫と、基礎年金年額七九万円を受給する七十三歳の妻からなる、年金収入のみで生活する夫婦二人世帯では、後期高齢者医療制度の導入によって、夫は後期高齢者医療制度、妻は国民健康保険に加入することとなる。夫婦共に国民健康保険に加入している時には夫の所得で夫婦二人が生活しているととらえられ、年金収入が、二人世帯の被保険者均等割額の二割軽減を受けることの出来る二三八万円以下であるため、被保険者均等割額と世帯平等割額の二割軽減を受けることが可能であった。しかし、夫が後期高齢者医療制度に移行してからの保険料の算定に当たっては、後期高齢者医療制度の被保険者は世帯に一人であると扱われ、年金収入が、単身世帯の場合に被保険者均等割額の二割軽減を受けることの出来る二〇三万円を超えているため、被保険者均等割額の二割軽減措置は受けられない。以上の理解に間違いはないか。間違いがあれば、指摘していただきたい。
二 一で挙げた夫婦の妻の保険料の算定に当たっては、夫は特定同一世帯所属者と扱われ、夫の所得も含めた合計所得が基準となる。この結果、妻のみを単身世帯と考えた場合には適応される、被保険者均等割額と世帯平等割額の七割軽減の対象ではなくなり、平等割額については五年間の五割軽減措置はあるが、原則的には二割軽減が適応される。以上の理解に間違いはないか。間違いがあれば、指摘していただきたい。
三 一と二に示した事例において、世帯主である夫が妻を扶養する形で、夫婦が居住と生計を一にする世帯を構成している事実は、夫が七十五歳になる前も後も何ら変わりはない。しかし、夫が後期高齢者医療制度に移行することによって、後期高齢者医療制度においては、妻が後期高齢者医療制度の被保険者でないことを根拠に、妻を扶養し、妻と世帯を構成しているという事実は無視され、保険料軽減が行われない。一方、妻は、夫に扶養され、夫と世帯を構成している事実を認定され、単身とみなされた場合より保険料軽減が縮小される。後期高齢者医療制度に移行した夫には、妻と世帯を構成している事実が否定され、国民健康保険に残る妻には、夫と世帯を構成している事実が認定されるのは、整合性がないと考えるが、政府の見解はいかがか。
四 厚生年金年額四〇〇万円を受給する七十六歳の夫と、基礎年金年額七九万円を受給する七十三歳の妻からなる、年金収入のみで生活する夫婦二人世帯では、後期高齢者医療制度の導入によって、夫は後期高齢者医療制度、妻は国民健康保険に加入することとなる。夫婦共に国民健康保険に加入している時には夫の所得で夫婦二人が生活しているととらえられ、夫婦合わせた年金収入が、二人世帯で三割負担となる五二〇万円未満であるため、夫の窓口負担は一割であった。後期高齢者医療制度での夫の窓口負担の割合を定める現役並み所得の判定においては、後期高齢者医療制度の被保険者は世帯に一人であると扱われ、単身で年金収入三八三万円以上であるので、夫の窓口負担は三割負担となる。さらに、二年後に、妻が七十五歳になると、夫婦の収入が合わせて五二〇万円未満であるとして、夫の窓口負担は一割に軽減される。以上の理解に間違いはないか。間違いがあれば、指摘していただきたい。
五 四で挙げた夫婦の妻の国民健康保険保険料の算定に当たっては、夫は特定同一世帯所属者と扱われ、夫の所得も含めた合計所得が基準となる。この結果、妻のみを単身世帯と考えた場合には適応される、被保険者均等割額と世帯平等割額の七割軽減の対象ではなくなり、平等割額については五年間の五割軽減措置はあるが、原則的には軽減措置は適応されない。以上の理解に間違いはないか。間違いがあれば、指摘していただきたい。
六 四と五に示した事例において、世帯主である夫が妻を扶養する形で、夫婦が居住と生計を一にする世帯を構成している事実は、夫が七十五歳になる前も後も、妻が七十五歳になる前も後も、何ら変わりはない。にもかかわらず、後期高齢者医療制度に移行した夫については、国民健康保険に残る妻を扶養している事実は無視され、単身者としては高収入であるとみなされて、三割負担が課せられる。一方、国民健康保険に残った妻については、夫に扶養され、夫と世帯を構成している事実を認定され、保険料軽減措置が受けられない。後期高齢者医療制度に移行した夫には、妻と世帯を構成している事実が否定され、国民健康保険に残る妻には、夫と世帯を構成している事実が認定されるのは、整合性がないと考えるが、政府の見解はいかがか。
七 さらに、四と五に示した事例において、夫婦の在り方も、収入も、現役並み所得判定基準も、全く変わらないのに、夫の窓口負担は、夫婦とも七十五歳までは一割(平成二十年度末までの特別措置による)、夫七十五歳以上かつ妻七十五歳未満では三割、夫婦とも七十五歳以上では一割と、変わっていく。この窓口負担の変化には、何の根拠もなく、制度としての欠陥であると考えるが、政府の見解はいかがか。
八 平成十七年国勢調査によれば、七十五歳以上の有配偶男性は約三二九万人、七十五歳以上の有配偶女性は二一三万人であった。この事実からすれば、最低でも一一六万組、一一六万人の七十五歳以上の高齢男性と、ほとんどが六十五歳から七十四歳と推定される一一六万人の高齢女性が、夫婦でありながら、後期高齢者医療制度とそれ以外の保険に分かれて、加入していると考えられる。このことからすると、一、三で指摘したような事例は稀ではないと思われるが、政府が以下のような事例の数を把握しているのなら、教えていただきたい。
 @ 四と五で指摘した、夫婦の一方のみが後期高齢者医療制度に加入することによって、一方の窓口負担が三割負担となる事例数
 A 一と二で指摘した、夫婦の一方のみが後期高齢者医療制度に加入することによって、被保険者均等割額や世帯平等割額の軽減が受けられないか、縮減する事例数
九 報道によれば、厚生労働省は平成二十年六月十六日までに、後期高齢者医療制度について新制度へ移行したことで本人の支払う保険料がどれぐらい増えたか減ったかを実態調査するとのことである。私は、この調査の必要性を、「後期高齢者医療制度創設に伴う高齢者医療負担に関する質問主意書」で主張したところであるが、平成十九年十月十六日付内閣衆質一六八第八七号の答弁書において、「お尋ねの点を把握するための調査については、…当該制度の施行前後という多忙な時期にこれらの調査の実施を依頼することは、当該制度の円滑な施行に支障を来たしかねないことから、お尋ねの調査を行い、公表することは考えていない。」と答弁があったところである。今回、制度施行直後の多忙な時期に実態調査を行うことを決定したということは、前回の答弁書にある、調査の必要性についての判断が間違っていたことを示していると考えられるが、政府の見解はいかがか。
十 後期高齢者医療制度による保険料の変化についての実態調査においては、後期高齢者医療制度に移行した人の保険料負担のみならず、後期高齢者医療制度導入の影響で保険料負担が変わる他の世帯員の保険料負担の変化も調査すべきであると考えるが政府の見解はいかがか。もし他の世帯員についての調査を行わないのであれば、その理由も明確にされたい。
十一 健康保険の被扶養者として保険料を負担していなかった七十五歳以上の高齢者が、後期高齢者医療制度に移行した場合、新たに保険料負担が発生することとなる。後期高齢者が、健康保険の被保険者に扶養され、居住と生計を一にする世帯を構成している事実は、七十五歳になる前も後も何ら変わらないにもかかわらず、七十四歳までは保険料負担がなく、七十五歳からは保険料を負担しなくてはならない理由を、七十四歳と七十五歳がどう違うのかを明確にして、改めて教えていただきたい。
十二 健康保険の被扶養者となっていた七十五歳以上の高齢者が、後期高齢者医療制度に移行した場合の保険料の軽減割合の判定は、後期高齢者本人と世帯主の所得の合計を基準として行われる。新制度導入によって、七十五歳以上の高齢者を、強制的に世帯から切り離して後期高齢者医療制度に移行させたにもかかわらず、世帯として生計を一にし、世帯主による扶養が行われている事実を前提とした軽減割合の判定を行うのは、制度として整合性がないと思われるが、政府の見解はいかがか。
十三 国民健康保険においても、保険料の軽減割合の判定は、被保険者と国民健康保険に加入していない擬制世帯主の所得の合計を基準として、行われるのが原則である。しかし、この原則については、平成十三年十二月二十五日付厚生労働省保険局長通知「国民健康保険における「世帯主」の取扱いについて」において「擬制世帯において世帯主の変更を希望する場合については、…当該擬制世帯に属する国民健康保険の被保険者を国民健康保険における世帯主とすることができる」とされたところであり、国民健康保険に加入していない擬制世帯主を、住民票上の世帯主としたまま、国民健康保険における世帯主のみを、国民健康保険被保険者へと変更できることとなったものである。これによって、国民健康保険においては、擬制世帯主の所得が高い場合にも、国民健康保険における世帯主のみを変更して、国民健康保険加入者の所得に応じた保険料の軽減措置を受けることが可能となっている。一方、後期高齢者医療制度においては、世帯主を、後期高齢者医療制度に加入していない擬制世帯主から、後期高齢者医療制度被保険者に変更する手続きは、存在していないと思われるが、間違いないか。もし擬制世帯主変更の手続きが後期高齢者医療制度には存在せず、国民健康保険に存在しているのならば、高齢者差別であり、制度として不整合ではないかと思われるが、政府の見解はいかがか。
十四 これまでの健康保険制度は、家族の絆を重視し、居住と生計を一にする世帯の在り方によって被保険者資格を認定してきた。一方、後期高齢者医療制度は、七十五歳という被保険者個人の年齢のみで被保険者資格を認定するものである。しかし、ここまでみてきたように、個人に注目する被保険者資格の認定と、世帯の概念を導入した現役並み所得認定や保険料軽減の仕組みの間には、多くの不整合が存在し、このような不整合を伴う制度には、とうてい国民の理解は得られない。世帯を基本とするこれまでの健康保険制度をそのままにして、七十五歳以上の高齢者のみに個人を基本とする制度を導入すると、どのように工夫をしても、制度上の不整合が生じるのではないかと思われる。この点を考えても、今回の後期高齢者医療制度を国民が納得できる整合的なものとするのは困難であると思われ、この制度は一旦廃止するべきであると考えるが、政府の見解はいかがか。

 右質問する。



経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.