衆議院

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平成二十年五月三十日提出
質問第四五五号

世界的な穀物価格の高騰等を踏まえたコメのミニマム・アクセス及び生産調整の在り方等に関する質問主意書

提出者  三日月大造




世界的な穀物価格の高騰等を踏まえたコメのミニマム・アクセス及び生産調整の在り方等に関する質問主意書


 世界的に食料価格が高騰し、世界各地で抗議運動等が発生するという危機的状況の中で、国連人権理事会は、価格高騰により十分な食料を確保できない現状を人権問題として捉え、また、六月にはFAO(国際連合食糧農業機関)による世界食料サミットがローマで開催予定であるなど国際社会においては、この問題に真剣に対応しようという機運が高まりつつある。
 一方、食糧問題が主要議題となると見込まれる「洞爺湖サミット」の議長国である我が国においては、輸入義務であると称してミニマム・アクセスにより輸入したコメの販売に苦慮し、国内においては、生産調整を拡大して、水田農業の活力を奪うなど国際社会の常識からも逆行した農業政策を行っている。
 このような状況を踏まえ、以下質問する。

一 世界的に穀物価格が高騰している要因について、政府としてはどのように分析しているか。また、特にコメについては、国際指標価格であるタイ産の輸出価格が五月に入って一トンあたり一千ドルを突破し、年初の水準の約二・五倍に達するなど急騰したが、この要因についてどのように分析し、また、今後どのように推移すると見通しているか。
二 ミニマム・アクセス米について
 1 我が国は、ウルグァイ・ラウンド農業合意に基づき、年間約七十七万トンのミニマム・アクセス米(以下「MA米」という。)を国家貿易により輸入しており、主に価格等の面で国産米では十分対応し難い加工用・飼料用等として販売しているが、平成十九年十月末時点で百五十二万トンもの在庫を抱えている。
  政府は、今般のコメの国際価格の高騰により国内における品不足感が強まっているフィリピン政府からの援助要請に対し、この在庫として積み上がっているMA米から二十万トンを支援する方針を固め、これについて米国政府と実務者レベルの協議を行い、支持を得たと報道されている。しかし、そもそも日本国政府が所有権を有するMA米の使途について、なぜ輸出国である米国政府と協議し、支持を得る必要があるのか、その理由について明らかにされたい。
 2 輸出国政府の同意の下で、食糧援助を求める第三国へMA米を転売することができるのであれば、MA米の有効な活用策の一つとなり、また、日本を経由せずに輸出国から被援助国へ直接輸出することで、MA米に係る輸送料や保管料等が節減でき、財政負担の軽減にもつながるものと考えるが、今後、食糧援助を目的としたMA米の第三国への転売について、どのような方針で臨むのか明らかにされたい。
 3 コメの国際価格の急騰を受け、四月二十二日に行われたMA米の買入入札においては、全量不落札という結果となったため、平成十九年度においては、政府が輸入義務としている約七十七万トンの予定数量に到達しない事態となっているが、これについて、今後どのように対応する方針なのか、また、平成二十年度におけるMA米の調達方針も明らかにされたい。
 4 世界的に食料価格が高騰し、アフリカ等の発展途上国を中心に多くの人々が十分な食料を手にすることができない危機的な状況が生まれている中で、日本が輸入義務と称して毎年七十七万トンものコメを輸入し、その多くを具体的な使途の見込めない在庫として抱えこんでいることに対して国際的な非難が高まりつつある。また、現在のようにコメの国際価格が高騰している状況下において、七十七万トンものコメを市場から無理に調達することは、コメの国際価格の上昇圧力ともなり、他の輸入国、とりわけ開発途上の輸入国にとってコメを輸入できない事態につながりかねない。
  さらに、国内においては、加工用途において国産米とMA米とは競合関係にあり、また、百五十二万トンと国産主食用需要の二十%弱に相当する量の在庫が積み上がっている状況下において、心理的に国産米価格の下押し圧力として作用している面があると考える。主食用需要の減少を理由として年々生産調整が拡大し、その一方で、国産米の価格が下落を続けている状況下において、MA米の輸入を続けることは農業者に二重の負担を押し付けるものである。
  以上の理由から、ミニマム・アクセスは廃止する必要があると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
三 国際的な穀物需給のひっ迫の影響は日本国内にも及んでおり、生鮮食品を除く食料の消費者物価指数は昨年秋以降上昇する傾向を示している。特に、小麦については、政府の売渡価格が昨年十月及び今年四月に相次いで引き上げられたことを受け、パン、麺等の小麦粉使用製品の価格が上昇している。
 このような状況下において、小麦粉の代替原料として、従来割高であった国産の米粉の活用の可能性が広がりつつある。小麦はその約九割を輸入により賄っているため、国産米粉で輸入小麦を代替することができれば、食料自給率の向上にも資するものと考えるが、米粉利用を推進していくことの重要性について政府の認識を明らかにされたい。また、小麦粉代替としての米粉需要をどの程度と見込んでいるのか、現在の小麦の使用実績に対する割合及び数量で示されたい。
四 飼料用米等畜産・酪農対策について
 1 飼料自給率の低い我が国においては、国際的なトウモロコシ価格の高騰の影響を受けた配合飼料価格の高騰により国内の畜産・酪農経営は危機的な状況にある。
  政府は、これを期に、これまでの安価な輸入飼料を前提とする効率性重視の畜産・酪農政策を見直して、自給飼料基盤の抜本的強化対策を講ずるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
  また、このような状況下において、水田を水張りの状態で、農家が従来使用している機械・設備等をそのまま利用することができ、また、飼料自給率及び食料自給率の向上につながるものとして飼料用米生産に対する注目度が高まっているが、一方で、主食用米と比べ販売価格が安いため、農業者の生産コストを大幅に割り込んでしまうという課題がある。
  今後、政府として飼料用米の生産振興にどのように取り組んでいくつもりなのか明らかにされたい。また、需要を踏まえた飼料用米の生産可能数量をどの程度と見込んでいるのかを示されたい。
 2 配合飼料価格の変動により畜産経営に及ぼす影響を緩和する「配合飼料価格安定制度」については、金融機関から九百億円の借入れをして補てんする状況となっており、平成二十年七月から九月期以降の補てん財源が不足し、限られた範囲での補てんとならざるを得ない状況にある。今後も飼料価格の高騰が見込まれる中、畜産・酪農家の飼料購入に係る負担軽減と所得確保を図る観点から、配合飼料価格安定制度の緊急的な対策が必要である。二月二十日の衆議院農林水産委員会における決議(「平成二十年度畜産物価格等に関する件」)においても、「配合飼料価格安定制度については、同制度による補てん金の支払が農家にとって重要な役割を果たしていることにかんがみ、通常補てん基金が財源の上で安定的に運営されるよう万全の措置を講ずること」と明記されている。
  以上の理由から、配合飼料価格安定制度については、「異常補てん基金」やその他の財源を確保し、いかなる場合であっても「通常補てん」の基本部分の補てんを継続できるよう対策を講ずるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
五 コメの生産調整等について
 1 現在の生産調整の仕組みは、麦・大豆等コメ以外の作物の生産を奨励し、これに対して産地づくり交付金による支援を行うなどコメを作らせないことが前提となっている。政府は、今後もこの生産調整の枠組みを維持していくつもりなのか、維持していくのであればその理由も明らかにされたい。
 2 輸出国が自国民への食料供給を優先するため輸出規制を実施するなど現下の国際情勢にかんがみれば、不測の事態における食料自給力を確保しておくためにも、水田を徹底的に有効活用する必要があると考える。現在のコメを生産しないことを奨励する生産調整においては、地域によっては、土壌条件が麦・大豆等の転作作物の栽培には適さない場合もあり、このために、生産調整に協力しない農業者が存在し、水田が遊休化してしまっている面がある。
  食料安全保障の観点から生産装置としての水田を維持していくためにも、現行のコメを作らせない生産調整を廃止し、米粉原料米穀や飼料用米等主食用需要以外に仕向ける水稲の作付を推進する方向へ政策転換を図る必要があると考えるが、政府の考え方を明らかにされたい。
 3 食料自給力の確保という観点からは、耕作放棄地についても農地に復元できるものは復元し、有効活用を図っていく必要がある。耕作放棄地については、平成十七年時点で三十八・六万ヘクタールと東京都の約一・八倍に相当する面積が存在しており、農林水産省では、「現状を的確に把握した上で、それぞれの状況に応じたきめ細やかな対策を実施することにより、五年後を目途に耕作放棄地の解消を目指す」としているところであるが、耕作放棄地の解消に向けた取組の進捗状況を明らかにされたい。また、今後、農業者の減少・高齢化等により、耕作放棄地となり得る可能性のある農地が増えていくことが考えられるが、耕作放棄地の発生防止という観点からどのように取り組んでいくのか明らかにされたい。
六 農林水産省は、国の統計業務の減量・効率化等を進める観点から「米の消費動向等調査」を二〇〇七年度で廃止したとしている。官民挙げて「めざましごはんキャンペーン」等消費拡大に向けた取組を実施している中で、同調査は、コメの一人一か月当たり消費量を把握するための政策的にも重要な統計であり、これを廃止するという判断は全くの矛盾である。コメ政策を考える上での基盤として、「米の消費動向等調査」は引き続き実施していくべきものと考えるが、政府の考え方を明らかにされたい。
七 アフリカ諸国は、近年目覚しい経済成長を遂げているものの、食料の多くを海外からの輸入に依存しているため、世界的な穀物価格の高騰のあおりを受けて食料品の価格が高騰し、市民による抗議行動等が発生するなど社会的不安が高まりつつある。特に、コメについては、西アフリカの国々の主食であるが、従来トウモロコシを主食としてきた東アフリカの国々の消費量も増えており、国際価格の高騰によって大きな影響を受けているものと考えられる。
 現在、横浜において、「第四回アフリカ開発会議(TICAD4)」が開かれているところであるが、これまで農業分野において、同様にコメを主食とし、高度な水稲生産技術を有する日本はどのような支援を行ってきたのか明らかにされたい。また、今後、アフリカ諸国の経済的自立を支援していく観点から、政府として、アフリカ諸国に対する農業支援、食糧支援にどのように取り組んでいくつもりなのか明らかにされたい。

 右質問する。



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