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平成二十年六月十日提出
質問第五一〇号

スズキ(株)における不払い残業(サービス残業)に関する質問主意書

提出者  佐々木憲昭




スズキ(株)における不払い残業(サービス残業)に関する質問主意書


 スズキ(株)(以下スズキという)は、軽自動車の大手企業であり、また小型車の海外売り上げ比率も高く、自動車業界では売り上げ額第四位(二〇〇八年三月連結)に位置する多国籍企業である。またスズキは、九期連続で史上最高の売り上げを更新し、急成長を遂げている。
 スズキの本社は浜松市にあり、主要工場はこの本社周辺の静岡県内にあり県下のトップ企業である。静岡県内における大企業としての経済的な影響力は大変大きく、社会的責任もきわめて大きなものがある。
 このような大企業が労働者へのサービス残業問題で、古くは一九八〇年代から、最近では一九九七年、二〇〇三年、二〇〇五年に、労働者からの申告により、浜松労働基準監督署からその都度サービス残業の調査と是正指導を受けてきた。二〇〇三年には、会社内の業務のやり取りはパソコンの電子メールでおこなうことから、送受信の時刻が全て記録に残ってしまうため、送受信時刻を消し証拠が残らないようなプログラムをつくりサービス残業をおこなわせていた問題が国会で取り上げられた。こうした悪質さが国会で指摘されたこともあり、スズキは「七〇〇〇万円のサービス残業代を支払った」と報じられた。
 しかしながら、同社は、労働基準監督署の指導を受けたときは一時的にサービス残業の是正はするものの、しばらくするとまたサービス残業を繰り返すのが常となっているのである。
 昨年十二月及び今年二月、スズキの労働者らが浜松労働基準監督署に対し、スズキ本社のサービス残業の調査と、過去二年間分の不払い残業代の支払い、現行の自己申告制による時間管理からICカードなど客観的記録方法への切り替えを申告した。申告を受けた浜松労働基準監督署は、昨年十二月二十一日、スズキに調査に入り、サービス残業を確認し、指導をおこなっている。
 この間(一九九七年から二〇〇七年まで)同社は、労働基準監督署から四回に及ぶ指導を受けているにも関わらず、反省の姿勢は見られず、むしろその対応は、より悪質となっている。
 今年二月二十六日、同社労働者らは、労働基準法に則ってスズキを処罰するよう浜松労働基準監督署に申告をおこなった。
 しかし、同労基署の主任監督官は、「私は二年間さかのぼって残業代を払えとはとても言えない」との発言を公然とおこなっている。そのために、スズキの現場労働者らは、四月八日に静岡労働局に、四月二十五日には厚生労働省に、過去二年間分の不払い残業代の支払いをはじめ、二度と不法行為を繰り返させないための要請をおこなってきた。
 今年五月末、スズキ人事課は、労働組合を通じ「三カ月以上のサービス残業時間調査はおこなわない、三カ月以上の不払い残業代も支払わない」と申告者に回答をおこなってきた。職場では、いまだに申告に沿った是正は、おこなわれていない。
 スズキが違法行為を反省し、不払い残業代を支払う気がありさえすれば、労働者の協力を得て実態調査をすることは可能である。そして、過去二年間分の不払い残業代をスズキに支払わせることも可能である。この間ミズノ(株)十八億円、近畿大学一億円など、さまざまな企業等でサービス残業の是正指導がおこなわれ、いずれも過去二年間にさかのぼって残業代が支払われることになった。
 これまで、手を替え品を替え労働者にサービス残業を強いてきたスズキの会長(鈴木修氏)は、株主総会でサービス残業問題について質された際、「サービス残業は労働者の協力がなくてはできない」などと、あたかも労働者にも責任があるかのような発言をしている。
 二〇〇二年、「雪印」や「ミドリ十字」の企業不祥事が社会問題化したことに対応してスズキは、「スズキ企業倫理規程」を制定した。そこには、「会社の役員および従業員が法令、社会規範、社内規定を遵守し、公正かつ誠実に行動する……以って、会社における企業倫理の実を上げ、社会における信頼を獲得することを目的とする。」と明確に謳われている。企業の社会的責任やコンプライアンスの遵守が厳しく問われている今日、いまこそスズキは、自らが掲げた「企業倫理」に沿った対応が求められているのである。
 労働基準法は、守るべき労働条件の最低限の基準を示したものである。少なくとも二年間さかのぼってサービス残業の調査をさせ、それに基づき「不払い残業代」を払わせるという最低基準は守るべきである。
 以下、質問する。

一 スズキ人事課では二〇〇七年九、十、十一月の三カ月間のサービス残業代の調査をおこなっているが、同社は「(これは)労基署の指示にもとづいておこなっている」と答えている。労働基準法に基づき本来、過去二年間さかのぼって支払わなければならないサービス残業代を、しかも申告(請求)されているにも関わらず「三カ月間のみの調査」にとどめている。なぜ法律が遵守されないのか。当該会社の主張通り「労基署が三カ月間の調査でよし」という提示をしているのか。それとも、労基署による是正指導はおこなっているものの、その「期間等」については当該会社の主張通り容認しているのか。明らかにされたい。
二 厚生労働省の制度として、現場の労基署の監督官を監察する制度がある。「私は二年間さかのぼってサービス残業代を払えとはとても言えない」と公言している監督官に対して、この監察制度が機能しているとは言えない。このような監督官の態度は、この制度の趣旨に基づく是正の対象とすべきだと考えるがどうか。また、どのような場合が是正の対象になるのか基準を示されたい。
三 スズキは不払い残業(サービス残業)を指摘されれば、その時は一応是正はするが、ある程度時が経てば、また違法行為を繰り返している。法違反をおこなっても企業名を公表せず、サービス残業の調査も三カ月程度で収めるという、国としてのきわめて甘い対応が、こうした事態を繰り返させているのではないか。二年間分の不払い残業代の支払いは当然であるが、同時に、サービス残業(不払い残業)を繰り返す企業には、罰則条項に沿った処罰をおこなうべきである。サービス残業は割が合わないと企業側が実感する、実効性のある法体系に改善するべきではないか。
四 厚生労働省の二〇〇三年の通達では「使用者は労働時間を適切に管理する責務を有しています」としている。ところが、スズキは設計などの企業秘密に関わる部門の事務所の出入りにはICカードを使用しているが、労働時間の管理は相変わらず自主申告制でおこなっている。厚労省通達は、タイムカードやICカードによる労働時間の客観的管理は原則であるとしている。しかしながら、国内でも有数の地位にある会社が、国の通達に反し、客観的な時間管理を長年にわたっておこなわない状況が続いているのである。その理由がどこにあると考えているか。また、この二〇〇三年「通達」を周知徹底するために、今後いかなる対策を講じるのか、明らかにされたい。

 右質問する。



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