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平成二十年十一月七日提出
質問第二一三号

三年後の景気回復の可能性に関する質問主意書

提出者  滝  実




三年後の景気回復の可能性に関する質問主意書


 麻生首相は十月三十日の記者会見で、事業規模約二十七兆円の新総合経済対策を発表し、同時に行政改革や景気回復を前提に、三年後に消費税率を引き上げる考えを明言された。麻生首相は「日本経済は全治三年」と言っておられる。このことに関して質問する。

一 首相の言う「景気回復」とは、どういう状態なのか、どういう経済指標がどうなればそう言えるのかを数字で定義していただきたい。
二 今回の新総合経済対策に関して、十月三十一日の朝日新聞に野村證券金融経済研究所による試算が載っている。それによると、五兆円の財政支出によるGDP押し上げ効果は計〇・五%程度。一方金融危機が深刻化した九月以降の円高と株安、世界経済の悪化は計一・四%もの押し下げ要因になる。ということは、この経済対策では景気を良くするどころか、景気悪化さえも抑えられないということではないか。もし、野村證券金融経済研究所の試算が政府の試算とは異なるのであれば、政府の試算を示していただきたい。
三 平成二十年八月内閣府発表の資料(第三十五回ESRI−経済政策フォーラム「経済政策とマクロ計量モデルの活用」)によれば二〇〇八年度のGDPデフレーターはマイナス一・〇%となっており、デフレは脱却できていない。民間シンクタンクがまとめた七〜九月期のGDPは年率換算で実質がマイナス三・〇%、名目がマイナス三・三%となっている。円高・株安・海外の景気後退など、日本の景気にとってマイナスの要因は多い。これから景気は更に悪化するのを政府が放置するのであれば、三年後の景気回復は望めないのではないか。
四 政府は、赤字国債を使って景気対策を行わないと言っているが、それであれば、今年で埋蔵金は使い果たし、今後は景気対策をできない、つまり景気が悪化しデフレスパイラルに陥っても放置するということか。また、今年度の国税収入は予算計上額を五兆円も下回るのではないかと言われるほど憂慮すべき状況にあり、金額はともかくとして、そのような事態が確実視される今回の景気対策は、実質的に赤字国債を財源としていることになるのではないか。
五 内閣府(新たな経済対策に関する政府・与党会議、経済対策閣僚会議合同会議)が平成二十年十月三十日に発表した「生活対策」の三頁〜四頁には「安易に将来世代に負担をつけまわすようなことは行わない」とある。将来世代への負担とは、国の債務そのもののことか、それとも債務のGDP比のことか。
六 もし、将来世代への負担の意味が債務そのものであるなら、百分の一のデノミを行えば簡単に負担は百分の一に減らせるが、それで十分なのか。
七 もし、将来世代への負担の意味が債務のGDP比という意味なら、内閣府の短期モデルの乗数表が参考になる。別添の表は短期金利を固定したまま、公共投資を毎年GDPの一%(五・二兆円程度か?)増やし続けたらどうなるのかのシミュレーションを示したものである。これによれば、全ての経済指標は大きく改善されている。それだけでなく、国の債務のGDP比は初年度マイナス一・五三%、二年目マイナス一・九九%、三年目マイナス二・三五%と減り続けている。三年目から増加ということはない。つまり赤字国債を発行して景気対策をすれば、将来世代への負担を減らすことが出来るということではないか。
八 平成二十年十一月四日の答弁書(内閣衆質一七〇第一五九号)の六について「御指摘の見解は、我が国経済が、バブル経済の崩壊により、極めて厳しい不況を経験し、ある時期には危機的な様相さえ呈していた平成十年当時において」とある。その一方で麻生首相は十月三十日の記者会見で百年に一度の暴風雨が吹き荒れていると述べられた。平成十年当時と今とでどちらの経済情勢が厳しいと考えているのか。

 右質問する。


表


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