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平成二十一年二月三日提出質問第八二号
北朝鮮拉致被害者の失踪宣告取り消しに関する質問主意書
北朝鮮拉致被害者の失踪宣告取り消しに関する質問主意書
政府認定の有無を問わず北朝鮮によって拉致され我が国もしくは第三国より連れ去られて現在も北朝鮮の管理下にある被害者(以下、拉致被害者という)が、拉致された事実が判明する以前に、単なる失踪者として民法三十条の失踪宣告を受けて除籍されている場合において、その宣告を取り消すには現行法上民法三十二条に依拠しなければならないところ、同条では失踪宣告取り消し要件として「失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったとき」の二つの事由が掲げられている。
しかし、平成十四年九月十七日のピョンヤンにおける日朝首脳会談において金正日が日本人拉致を認めたことにより今までに判明した事実は、拉致被害者は密かに拘束されたうえで連行され北朝鮮に入国せしめられて当地での生活を強いられているということであり、日本にいる親族や関係者との連絡通信手段は全く与えられていないのである。
このような場合、拉致被害者が同条の「(失踪者の)前条に規定する時と異なる時に死亡した」事由に該当しないことは明らかであるが、他方同条にある「失踪者が生存することの証明」は、拉致被害者においては北朝鮮に密かに抑留されている関係上極めて困難であり、「死亡したことを示す事実は存在しない」という以外に証明手段は現在のところ思い至らないのである。
この状況において、昭和五十三年八月十二日に鹿児島県日置市(当時、吹上町)の吹上浜で北朝鮮工作員に拉致された拉致被害者である増元るみ子氏と市川修一氏の親族がそれぞれ同人等の失踪宣告取り消しを求めているのであるが(鹿児島家庭裁判所、平成二十年(家)第七〇〇号および第七〇一号)、前記のような同宣告取り消しの要件の故に手続きが前進しない状態にある。
この事態は拉致被害者の親族にとっては精神的苦痛そのものであるが、政府にとってもその方針に反する事態に他ならない。何故なら、政府は、政府認定の拉致被害者に止まらず、拉致被害者全員の帰国つまり救出を国政の重要な目標として掲げているのであるが、拉致被害者の失踪宣告つまり死亡認定をそのまま放置しながら生存を前提にした全員救出を目指すのは矛盾そのものだからである。
このように、拉致被害者の親族にとっても政府にとっても、拉致被害者の失踪宣告による死亡認定は一刻も速く取り消さねばならないものであり、その対策は、緊急を要すると考える。
従って、次の事項について質問する。
右質問する。