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平成二十一年三月三日提出
質問第一七九号

芸術・文化活動への公的助成制度に関する質問主意書

提出者  石井郁子




芸術・文化活動への公的助成制度に関する質問主意書


 現在の景気悪化の影響によって、芸術団体の公演が中止になるケースがあるだけでなく、「銀行に新規の融資を断られた」、「給与の支払いが遅れている」など、芸術団体が制作・運営資金を確保することが、きわめて困難になっている。また、民間劇場、映画館への影響も懸念され、作家・実演家の暮らしはますます困窮している。こうした事態にかんがみても、公的助成によって芸術団体の活動を支えることはますます重要になっている。
 ところが、政府の公的助成は、毎年のように削減されている。しかも、その方式は、「赤字補填」方式であるため、かえって芸術団体の「赤字」を累積するものになっており、芸術団体からは改善が求められている。そこで、以下質問する。

一 文化庁の重点支援事業は、二〇〇二年度に「新世紀アーツプラン」として再編されたが、それ以降、予算は減り続け、舞台芸術と映画が独立項目となった二〇〇三年度には、舞台芸術・伝統芸能で六六億五〇〇〇万円、映画製作に一二億七四〇〇万円を計上していたものが、二〇〇八年度にはそれぞれ四六億六〇〇万円、六億一九〇〇万円となり、三割以上の減額となっている。この事態をどう考えるか。なぜ重点支援を削減するのか理由を明らかにされたい。削減をやめ、思い切って増額することが必要と考えるがいかがか。
二 文化庁の重点支援事業は、一九九六年に「アーツプラン二一」としてつくられ、団体の活動を三年間継続して支援するものとして実施されてきた。ところが、二〇〇五年度に突然、支援対象が団体から個別の公演事業に変更となった。この変更は文化審議会などでも審議されたことはないものである。団体等から支援対象の変更について、文化庁や文化審議会に対し要望が出されたことはあるのか。あるとすれば、どこに出されたものか。そのうえで、変更の理由は何か、明らかにされたい。
三 文化庁の重点支援事業の採択が個別公演事業ごとに変更になったため、芸術団体は、申請事務も煩雑となり、団体としての見通しを持った計画を立てることが困難になっている。重点支援事業は、「アーツプラン二一」当時の団体ごと三年継続の採択に戻すべきだと考えるがいかがか。
四 現在の文化庁の重点支援事業や日本芸術文化振興会の助成事業は、「対象経費の三分の一以内」かつ「自己負担金の枠内」となっているため、芸術団体がいくら努力しても、「赤字」が生じるようになっている。
 (一) 芸術家会議が二〇〇八年十一月に発表した「文化芸術の振興政策に関する提言」では、文化庁の重点支援事業を受けて公演を実施すると「赤字」がふくらむことを事実として例示している。それによれば、オーケストラの場合で年五回の事業で六〇〇〇万円もの「赤字」が累積している。そもそも基盤が弱い芸術団体への公的助成が「赤字」を累積させることは、芸術団体の基盤をますます弱くすることで本末転倒だと考えるがいかがか。
 (二) アメリカやヨーロッパなどの諸外国では、芸術活動への助成において「自己負担金」を条件としている例は見当たらず、日本の特異な方式と考えるがいかがか。
 (三) 二〇〇六年に実施された日本芸術文化振興会の委託調査の中で行われたアンケート調査でも、「支援要請の際の問題点」としてあげられているなかで、もっとも割合が高いのは「自己負担金の確保」になっており、半数以上が「自己負担金」を確保することの困難を問題としてあげている。今日、景気悪化の影響で芸術団体が資金を集めることはきわめて困難になっており、「自己負担金」を公的助成の条件としている限り、仮に予算が増額になっても公的助成を必要としている芸術団体が応募すらできない。文化庁の重点支援事業における「自己負担金」の枠を撤廃すべきと考えるがいかがか。
五 芸術団体が公演活動などの創造活動をすすめるためには、事前に制作費用が必要であり、公的助成を採択した活動に、一定額の「前払い制度」を導入すべきである。
 (一) 二〇〇三年六月十一日の文部科学委員会において、私が「前払い制度の導入」を要望した。その際、政府は、「芸術団体重点支援事業」で「完成の見込みがある場合には完成前であっても制作段階に応じた支援を行っている」と述べ、「このシステムを今後どうするか、課題だとは認識しておりますけれども、助成金が税金によって賄われていることを考えますと、完成しないものに助成するというのはなかなか困難な面もございます」と答弁された。その後、「前払い制度」について検討されたのか。
  また、文部科学省が扱う補助金において、事業途中で一定額を支払うものはあるのか。
 (二) 日本芸術文化振興会が行った委託調査(二〇〇七年一月発表)によれば、アメリカのNEA(全米芸術基金)の助成事業では、助成金交付よりも先に事業を始めてはならないとされ、事業が完了する前に助成金が支払われる制度となっている。イギリスのアーツカウンシル(イングランド芸術評議会)による公演事業に対する助成金も何段階かに分けて支払われる。このように、諸外国の制度では、「前払い」をふくんだ制度になっている。こうした制度を検討し、日本でも芸術活動への公的助成における一定額の「前払い制度」を導入することを検討すべきと考えるがいかがか。
 (三) 文化庁の重点支援事業は、公演終了後に清算を確認してから支払われることになっているが、実際には、公演終了後、何カ月もたってからようやく支払われるという事態になっている。「前払い制度」の導入について検討しつつ、芸術団体の活動に支障を与えないよう、重点支援事業への支払いは公演終了後すみやかに行われるべきと考えるがいかがか。
六 芸術活動への公的助成にあたっては、「金は出しても口は出さない」ことが原則である。文化芸術振興基本法は、活動を行うものの「自主性を尊重する」ことを基本理念としている。二〇〇九年度政府予算案において、文化庁の重点支援事業と日本芸術文化振興会の助成事業を「一元化」するとしており、これに伴い、芸術文化振興基金による映画製作への助成は廃止され、文化庁から日本芸術文化振興会への補助金による助成に一本化されることになっている。すでに、二〇〇九年度事業の「応募要領」が文化庁から発表されているが、それによると、作品の選定は、文化庁が「内定」を出すことになっており、政府の関与が強まるのではないかと懸念の声が出されている。公的助成の対象となる作品の採択にあたっては、日本芸術文化振興会の独立性を保持し、専門家による採択を維持すべきと考えるがいかがか。

 右質問する。



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