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平成二十一年三月三十日提出
質問第二五六号

風車による健康被害と補助金交付認定に関する質問主意書

提出者  保坂展人




風車による健康被害と補助金交付認定に関する質問主意書


 第一七〇国会において「風力発電施設に関する質問主意書」を提出し、二酸化炭素削減効果、低周波騒音による健康被害、被害者の救済措置等、景観破壊と国立・国定公園の維持などについて政府の見解を求めた。しかし、極めて不十分な答弁と考えざるを得なかった。風車による健康被害の認識、健康被害者救済と被害拡大の防止、補助金認定要件の適正運用と申請書類精査等について、あらためて確認したい。
 従って、次の事項について質問をする。

一 風力発電施設運転による健康被害の認識と調査研究について
 先般の質問主意書において、風力発電による健康被害について具体的な事例をあげて、被害発生に関する政府の考えを明らかにするよう求めた。それに対する答弁は、「『低周波音対策検討調査委員会』が平成一五年三月に取りまとめた報告書においては、各国の低周波音に関するガイドライン並びに過去の研究報告を踏まえ、『一般住空間における低周波音のレベル程度では、病的な影響を引き起こす直接的な要因となる可能性は少ないものと思われる。』と整理されている。」というものであった。
 しかし、質問において示したように、風車近隣においては、多様な被害症状が数多く訴えられており、被害者の多くは、風車運転の停止時ないし居住地域から離れると症状は治まる、と述べている。このことは、風車による健康への影響を明確に示すものと考えられる。
 そこで、風車運転による健康被害についての認識と調査研究にかかわる問題等について政府の見解を問う。
 1) 近年、風力発電施設建設は、東海地方から中部山岳地帯、紀伊半島などに進出し、居住区の間近にウインドファームと称する大型の風車群が建てられるようになった。その結果、風車周辺の住民から、不眠、血圧上昇、めまい、頭痛、吐き気、腹痛、全身のこり、圧迫感など多様な健康への影響が訴えられるようになったという。引っ越しを余儀なくされた住民や、血圧上昇により倒れて入院し、亡くなられた方もいるという。このような事態を政府は承知しているか。また、どのような対処を考えているか。
 2) 環境省は、低周波音による苦情の申し立てへの対応の目安として「参照値」を示し、参照値以下の音圧レベルであっても、一〇パーセンタイル値で苦情の申し立ての可能性があるとしているが、静岡県東伊豆町では、一昨年末に一〇基の風車が建設を終えて試験運転に入ったところ、ただちに近隣居住者の三割以上から被害の訴えが出され、町には苦情が殺到したという。愛知県豊橋市細谷地区、愛媛県伊方町でも同様の状況だったという。こうした被害状況は「各国の低周波音に関するガイドライン並びに過去の研究報告を踏まえ」て「整理」しただけで影響評価ができるものではない、と考える。
  政府は、環境省においてまず、被害多発地域で実態調査をおこない、調査と同時に、被害者宅において超低周波・低周波音の測定をして被害との関連を明らかにするよう努める必要があるのではないか。考えを伺いたい。
 3) 先の質問主意書への政府答弁における「一般住空間」とはいかなる空間、地域を指すのか、風車周辺居住区域は「一般住空間」にあたるのか、明らかにされたい。また、「一般住空間における低周波音のレベル」とはどの程度の音圧レベルなのか、1/3オクターブバンドの測定評価量レベルでお示しいただきたい。
二 風力発電施設運転に伴う健康被害者の救済と被害拡大の防止について
 先の質問主意書において、既設風車により健康を害されている被害者の救済を求めた。政府は、電気事業法、同法施行令、騒音規制法など関連法規とその条文、条項を列記して答弁としている。被害者救済と被害拡大防止には現行法規上の制約があることは認識しているが、政府答弁のままでは被害者を放置しておくことになる。よって問題解決のために以下の質問をする。
 1) 当面、風車被害発生地域における騒音測定を早急に実施し、規制基準を超える地域については風車運転停止の措置を講じるよう、国は都道府県知事への指導を徹底する必要があると考えるが、いかがか。
 2) 騒音測定結果が規制基準値に満たない場合であっても被害は起こる。風車による健康被害は、八〇Hz以上の周波数における可聴音によるものではなく、それ以下の周波数帯域の超低周波・低周波騒音が原因とされている。風車騒音には、超低周波・低周波音成分が卓越して存在しており、こうした場合、騒音の測定評価法(A特性等価騒音レベル)では、これらの周波数帯域成分が過少に評価されるか、無視されることになる。WHO(世界保健機関)は、「環境騒音のガイドライン」で一般騒音測定は測定評価法として不適切であると指摘している。したがって風車被害地域においては、国の責任で1/3オクターブバンドによる測定とその影響評価をおこなう必要があると考えるが、いかがか。
 3) 現在、被害は急速に広がっている。しかし、現行法規内においては風車運転を規制する法律はない、とするならば、あらたな措置を可能とする立法により既設風車による被害者を救済すると同時に、被害の拡大を防がなければならない。このためには二つの法律が必要になる。ひとつは一定範囲の風力発電施設について、法の効力によって夜間の運転停止を可能にする「臨時措置法」(仮称)であり、もうひとつは、風車の建設について居住区から一定の距離をとる建設距離規制(セットバック)を定めた法律である。これらの立法により被害者を救済し、被害の拡大を防止する必要はあると考えるか。政府の今後の取り組みについての見解をお聞かせいただきたい。
三 補助金交付手続き上の認定要件適用の問題点と申請書類精査の必要性について
 補助金交付にかかわる質問については、先の答弁では「……その交付に当たっては、申請者に環境影響調査及び地元住民との協議等の実施を求めるとともに、外部の有識者により構成される審査委員会において採択審査を実施するなど、適切に執行している。」とのことであった。しかし、補助金交付決定が審査委員会での採択審査に付され、その精査のもとで決定がなされているのであれば、申請者である事業者は、交付要件とされる環境影響調査および地元調整をきちんと実施しているのであろうから、各地域において紛争、反対運動など起きるはずがない。しかし実態は、風車建設予定地域で紛争、反対運動が起き混乱が続いている。この事実をどう考えるのか。以下、「環境影響調査」と「地元調整」について、東伊豆町のクリーンエナジーファクトリー梶i以下CEF)および南伊豆町の鰍iパワー等(以下電源開発等)による事業展開の具体的事実に基づいて問題点を指摘する。「適切に執行している。」とする政府答弁が適切であったのか、再度、明確な回答を求める。
 1) 「環境影響調査および地元調整の実施」については、「新エネルギー事業者支援対策費補助金を応募される事業者のための新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法第八条に基づく利用計画の認定について(経済産業大臣の認定申請手続き)」および経済産業省の各地方局から出される「事業者への募集要項」に交付認定要件として実施が求められている。補助金交付を求めて事業を展開しようとする事業者は、要件としての「環境影響調査および地元調整」を誠実に実施、履行する義務を負わされていると考えるが、いかがか。
 2) 環境影響評価方法書並びに環境影響評価書(案)に対する住民の「意見書」への回答が拒否されたが、このようなことは許されるのか(CEF)。
 3) 縦覧にも付さずに、環境影響評価書(案)を環境影響評価書と偽って添付し補助金交付申請をすることが「適切」なのか(CEF、電源開発等)。
 4) 本来、環境影響評価書に基づいておこなわれるべき地元説明会を開催せず、建設予定地周辺住民への周知さえ欠いたまま、環境影響評価書(案)の縦覧前に首長の事業への同意印を取り付けて補助金交付申請をすることは不適切と思うが、いかに考えるか(CEF、電源開発等)。
 5) 前項の状態で首長の同意印を取り付けて地元承諾とすることは補助金交付申請手続き上、「適切」といえるのか(CEF)。また、前記のような手続きのもとになされた申請について、交付決定をすることが「適切に執行している。」ことになるのか(CEF、電源開発等)。
 6) 事実を踏まえない事業者の一方的報告や補助金交付申請のもとでの事業展開により各地域で紛争並びに建設反対運動が多発している。これらは所管官庁である資源エネルギー庁の不適切な交付決定によるところが大きいと考えるが、いかがか(CEF、電源開発等)。
 7) 南伊豆町では、送電線用の土地使用権取得に関して、同意を与えていない土地所有者への断りもなく測量用の杭を打ち込み、土地所有者の権利を侵して土地利用の承諾を迫っている。事業者のかかる不法行為による承諾の取り付けについて政府はどのように考えるか(電源開発等)。

 右質問する。



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