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平成二十一年五月一日提出
質問第三六五号

十五・四兆円で日本経済は経済危機から脱却できるのかどうかに関する再質問主意書

提出者  滝  実




十五・四兆円で日本経済は経済危機から脱却できるのかどうかに関する再質問主意書


 前回の質問主意書に対する答弁書(内閣衆質一七一第三二七号、以下「答弁書」という)に対して再度質問する。

一 答弁書の二及び三についてで、「国債を財源とする財政出動によって将来世代への国債の負担が重くなることはないとは一概にいえない」ということであった。この議論に反対するつもりはないが、反対に「国債を財源とする財政出動によって将来世代への国債の負担が重くなるとは一概にいえない」ということも事実である。国は単純に「国債発行が将来世代への負担になる」と決めつけるのを止めるべきであり、財務省のホームページにあるそのような表現を削除すべきなのではないか。
 答弁書では「我が国の債務残高対GDP比の発散を止めることが極めて重要である」とある。それは大規模景気対策によって間違いなく止められることは、次のようにして示すことができる。GDPをY、債務残高対GDP比をr、景気対策の規模をK、それによってGDPはmKだけ押し上げられるとすると、税収の増加分を無視しても、その景気対策後の債務残高対GDP比は
 (rY+K)/(Y+mK)=r+K(1/rm)/(Y+mK)
となるから、m>1/rであるような景気対策をすれば、債務残高対GDP比は減っていくことになる。現状ではr=1.741(OECD Economic Outlook 84 より)であるから、m>0.57であればよい。つまり一兆円の規模で〇・五七兆円以上のGDP押し上げ効果がある景気対策であれば、債務残高対GDP比は減る。景気対策の規模が大きければ大きいほど、減少幅も大きくなる。実際は景気対策による税収の増加もあるので、押し下げ効果はさらに拡大する。
 債務残高対GDP比のrが限りなく大きくなると、ほぼどんな景気対策を行っても債務残高対GDP比は下がるということになる。日本はすでにそれに近い領域にあり、余程効果の少ない景気対策でない限り、景気対策を行えば行うほど債務残高対GDP比は下がる。rが大きくなればなるほど、景気対策によってrは大きく下がるが、逆に十分な景気対策を怠ってGDPを下げてしまうとrを大きく上昇させてしまう。実際、このままでは今年度債務残高対GDP比は大きく上昇してしまうが、この現実をどう考えるか。
二 今回の景気対策は、環境への配慮も見られる点や、消費を促す形での減税等、評価できるところも多いが、問題はこの規模で一〇〇年に一度の経済危機から脱することができるのかという点にある。
 中国は昨秋、総額四兆元(約五十六兆円、GDP比十五%)の景気対策を始め、その結果景況感指数は四か月連続で上昇し、銀行融資も増加しており、すでにその効果がはっきりと現れている。一方で、景気対策をためらう欧州では景気回復の兆候は見られない。世界大恐慌の際も、金本位制から離脱し大規模な景気対策を行った国ほど、景気が早く回復した。
 今回政府が提出した財政規模十五・四兆円の景気対策であるが、最終的な政府支出が本当に十五・四兆円に達するのかという点にも疑問がある。例えば、助成金・補助金を出したとき、果たしてどれだけの人がこの不況の中で、住宅・車・家電を買ったりするだろうか。二〇一一年から増税が始まるとなれば、不況の深刻化を予測し、当然消費行動にもブレーキは掛かる。国民が買わなければ助成金・補助金も使われない。
 日本経済研究センターは、今回の景気対策の真の '真水, は総額五・六兆円、GDP押し上げ効果は一%にすぎないとの試算を四月二十七日に発表している。また、モルガン・スタンレーでも真の '真水, は七・三兆円と見積もり、GDP押し上げ効果は一%程度としている。
 政府が試算したGDP押し上げ効果は一・九%だが、これは十五・四兆円がすべて使われたときの数字であり、見通しが甘すぎるのではないか。
三 答弁書によると「需要不足のすべてを財政支出で埋め合わせることについては、過度に公需依存となり、民間経済の自律的回復をむしろ遅らせる」とある。状況によって、あるいは景気対策のやり方によってはそのようなこともあると思われる。しかし、国の経済がデフレスパイラルに陥ったとき、需要不足を財政支出で補わなかったら、経済は果てしなく縮小し、国が貧乏になり、民間経済の自律的回復どころではなくなる。国民の可処分所得が減り続けたら、民間の力では反転は無理で国が強力な経済対策を断行する以外に経済の発展は望めないのである。現在の日本経済がどのような状況にあるのかを十分理解すべきである。
 一九九七年に日本のGDPは五百十三兆円、二〇〇七年には五百十五兆円であった。名目成長率の政府目標は二〇〇八年度が△三・二%、二〇〇九年度が△三・〇%だということは二〇〇九年度のGDPは四百八十四兆円で、十二年前より約六%縮小させることが現在の国家目標となっている。十二年間かけて国を六%も貧乏にすることを国家目標にするような政府は日本以外どこにも見あたらない。
 IMF発表のデータによれば、十二年前に比べ名目GDPはイギリスで七十一%、米国で六十九%の増加となっている。民間経済の発展とは、売上が伸び賃金が上がるという状態であり、国が思い切った経済対策を断行しない限り、経済の停滞が続くのではないか。
 実質成長率はそれほど悪くないと言われているが、実質GDPは、パソコンの改良によってかさ上げされている。例えば、二年半前に発売になったWindows Vistaの普及率はまだ二割程度と言われている。パソコンの新機能は使われていないように、パソコンの進歩が国の発展を示すとは言えず、国の実質経済成長率をかさ上げすべきではない。今、日本経済に求められているのは大規模経済対策で名目成長率を上げることにより経済を活性化させ、民間経済が自律的に回復できる環境を国が整えることではないか。
四 名目GDPの予測を別添の図で示した。二〇一〇年度と二〇一一年度の名目成長率が一%と三%の二種類のグラフを示してある。三%成長は余程の大規模景気対策を行わなければ無理だが、それでも二〇一一年度のGDPは二〇〇七年度の五百十五兆円に達しない、つまり経済が成長軌道に乗ったとは到底言えない状況である。つまり二〇一〇年度も二〇一一年度も、景気対策を打ち切る状況には無く、消費税増税など論外だと思うが、政府はこのことをどう考えているのか。

 右質問する。


名目GDP予測(兆円)


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