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平成二十一年六月十日提出
質問第五二七号

水俣病未認定患者救済法案に関する質問主意書

提出者  岩國哲人




水俣病未認定患者救済法案に関する質問主意書


 水俣病未認定患者救済法案(以下、法案)に関連して、以下、政府に対し質問する。

一 本年五月十八日の報道によると、水俣病の原因企業チッソが、与党の法案に盛り込まれた同社の分社化後も、熊本県水俣市での操業を継続する方針を宣言するとのことであった。
 分社化には、「水俣から撤退して加害企業の消滅につながる恐れがある」などとの反対があるため、水俣での操業継続を宣言することで不安を解消し、今国会での法案成立を後押しする狙いがあるとの意見もある。
 この点、最高裁は、八幡製鉄政治献金事件判決(最大判昭和四十五年六月二十四日)等において、憲法第三章に定める国民の権利及び義務の各条項は、性質上可能な限り内国の法人にも適用されると判示しており、営業の自由、居住移転の自由のような経済的自由権は法人にも認められると一般に解される。
 もっとも、法人に対して人権保障が及ぶとしても、法人は強大な社会権力を持つものが少なくないことから、政策的考慮に基づいて自然人とは異なる規制が必要な場合があると考えられる。また、自然人の人権との抵触がある可能性が大きいため、法人の自由や権利に対して必要な限度での規制を認めざるを得ないことから、法人の人権については、自然人よりも広汎な積極的規制を加えることが許されるものと解される。
 また、立法においては、高度な政策的判断に基づく裁量が国会に認められている一方で、立法不作為が国家賠償法上違法と評価される場合もある。
 この点、政府・与党は分社化に積極的であるが、チッソに対し、一定期間移転を制限して水俣市での操業を義務付ける立法措置が可能か否かについていかに考えるか、政府の見解如何。
二 法案第十四条は、特定事業者が認可事業再編計画に基づいて行う事業会社の設立及び事業会社への事業譲渡その他の行為については、詐害行為取消権の規定、否認権の規定は適用しないとしているが、この規定の趣旨をどのように認識しているか。
 また、同規定に対しては、憲法第二十九条で保障される財産権を侵害するのではないかとの指摘もあるが、これに対する政府の見解如何。
三 否認権は、破産等の手続きにおいて、一般債権者のために比較的広範な要件の下で機能するのに対し、詐害行為取消権は、破産外において厳格な要件の下で行使され、「すべての債権者の利益のために」という民法第四百二十五条の文言にかかわらず、権利行使をした債権者のために機能する。
 また、否認権は、総債権者間の平等を図る観点から、詐害行為取消権と異なり、詐害意思を要件としない権利行使も認められる。
 このように、両者の機能は異なる面もあるが、法案第十四条が一律に適用除外として規定している理由は何か。
四 法案においては、株式売却益を補償に充てることとされている。
 思うに、株式という市場原理の支配するものによる利益と、公害被害者救済という生存権(憲法第二十五条)とも密接に関係する社会福祉は性質上なじまない。
 さらに、昨年来の世界的な金融危機の結果、金融市場の脆弱性を多くの人々が知るようになった現在において、公害被害者救済の原資として株式売却益のような不安定なものを充てることに対しては否定的見解があるが、政府の見解如何。
五 水俣病認定の前提である地域指定が解除された場合、胎児性・小児性患者を含む潜在的被害者の水俣病認定申請が不可能となり得る。
 西尾環境事務次官は、本年二月十六日の記者会見で、「ある程度の期間をもって、救済を求める人を確定する。それでも残る方は、どういう方々か」「水銀排出が止まってから四十年たって解決しないのは残念。今の方々に解決がついたら、終了するのがあるべき姿だ」と述べたとのことであるが、胎児性・小児性患者を含む潜在的被害者への対応策について、特段の措置を設ける考えはあるか、政府の見解如何。

 右質問する。



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