衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成二十二年四月二日提出
質問第三四九号

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案に関する質問主意書

提出者  加藤勝信




労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案に関する質問主意書


 政府は、平成二十二年三月二十九日、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下「本法律案」という。)を国会に提出した。本法律案は、派遣労働者、派遣元事業主及び派遣先に与える影響が非常に大きいものであると考える。そこで、次の事項について質問する。

一 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)が施行されて二十年以上経過し、労働者派遣制度は労働力需給調整システムとして定着していると考えるが、政府は労働者派遣制度が果たしてきた役割をどのように評価・分析しているのか。
二 本法律案では、いわゆる登録型派遣(以下「登録型派遣」という。)、製造業務派遣及び日雇派遣の原則禁止が盛り込まれている。これでは、家庭の事情等により長期間フルタイムで働くことができない労働者や自らの都合に合わせて働くことを希望する労働者の雇用機会が失われる懸念がある。また、派遣先にとっても必要なときに必要な労働力を確保することが困難となり、円滑な企業経営に支障を来すことが懸念される。
 1 政府は、どういう問題点の解消を図るために、このように規制色の濃い法案を提出したのか具体的に示されたい。
 2 規制により派遣労働者の雇用機会や派遣先の労働力をどのように確保することとしているのか。
 3 離職を余儀なくされる労働者に対するセーフティネットをどのように整備するのか。
 4 これらの対策が十分な効果を上げることができない場合、政府はどのような責任を負う覚悟でいるのか。
三 行政機関が行う政策の評価に関する法律に基づき、行政機関は、法令の制定又は改廃により規制の新設、廃止又は変更を行う場合には事前評価を行わなければならないこととされている。厚生労働省は、本法律案の国会提出に当たって、労働者派遣法等の改正が国民生活や企業活動といった我が国経済にどのような影響を与えると政策評価しているのか、また、どのような手法により政策評価を行ったのか具体的に明らかにされたい。
四 現行労働者派遣法においては、派遣労働者の保護に関してその適正な就業が確保されるよう、労働者派遣契約、派遣元事業主が講ずべき措置、派遣先が講ずべき措置及び労働基準法等の適用に関する特例措置を規定している。本法律案において法律の題名及び目的規定にあえて「派遣労働者の保護」を盛り込んだ理由は何か。
五 リクルートワークス研究所「派遣法改正案の具体的影響と本質的な論点」(二〇〇九年十二月)によれば、日雇い派遣・スポット派遣の禁止により九万二千人、製造業務を除く登録型派遣の禁止により十一万二千人、製造業務派遣の禁止により六万四千人が失職する可能性があると推計している。政府はこの試算についてどのように評価しているのか。
六 本法律案により製造業務派遣等が原則禁止されることに伴い、当該派遣労働者が派遣先に直接雇用されると考えているのか。そのように考える根拠は何か。
七 リーマンショック後に派遣切りされた派遣労働者数及び解雇又は雇い止めされた契約社員数を明らかにされたい。
八 適用除外業務について
 1 現行労働者派遣法において、@港湾運送業務、A建設業務、B警備業務及びC医療関連業務が適用除外とされている理由を各業務ごとに明らかにされたい。
 2 港湾運送業務及び建設業務については、それぞれ港湾労働法及び建設労働者の雇用の改善等に関する法律により、実質的に労働者派遣を行うことができるが、その理由を明らかにされたい。
 3 医療関連業務については、労働者派遣法施行令により労働者派遣が可能な場合が規定されているが、法律で規定しない理由を明らかにされたい。
九 登録型派遣の原則禁止について
 1 本法律案では、登録型派遣を原則禁止とすることとしているが、登録型派遣と常用型派遣の区分の基準となる「常時雇用」の定義を明らかにするとともに、なぜ法律で具体的に定義しないのかその理由を明らかにされたい。
 2 登録型派遣は、労働者派遣法制定時から認められている。本法律案において、それを原則禁止とする理由について具体的に示されたい。また、諸外国において登録型派遣を禁止している国はあるのか。あれば当該国名及び禁止の具体的内容を明らかにされたい。
 3 政府は、登録型派遣の原則禁止により、派遣労働者を雇用している中小企業をはじめ企業経営にどのような影響を及ぼすのか調査を行ったことがあるのか。
 4 政府は、登録型派遣の原則禁止によって失業する派遣労働者数及び廃業する派遣元事業所数がどの程度になると推計しているのか、積算根拠も含めて明らかにされたい。
 5 登録型派遣の原則禁止に関して、外資系企業の母国から日本に対する投資の参入障壁となるという指摘について、政府はどのように考えているのか。
 6 社団法人日本人材派遣協会の調査では、派遣労働者が今後希望する働き方として正社員希望が三十九%、派遣希望が二十九%、紹介予定派遣希望が十四%となっている。この調査結果について政府の評価を明らかにされたい。
 7 登録型派遣の原則禁止により、派遣元事業主にとっては、雇用の選択肢が狭められ、その結果、採用に慎重となり、ひいては労働者の雇用機会の減少につながるのではないかと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
 8 労働者派遣業界では、登録型派遣労働者のうち二割程度はその適性や能力の面で常用雇用にできないという意見がある。登録型派遣が原則禁止されれば、このような人たちの雇用機会が減少する懸念があるのではないか。政府の見解とその対策を明らかにされたい。
 9 働く人たちの中で自分の都合の良い日に自分の都合の良い場所で働くことを最優先して働き方を決めている人がどの程度いるのか。また、登録型派遣が原則禁止された場合、このような人は自らの雇用機会をどのように確保すればよいのか。
 10 働く人たちの転職状況を明らかにされたい。
 11 直近時点におけるハローワークの職業紹介、民営職業紹介、縁故による就職者数を明らかにされたい。
 12 政府は、ハローワークの職業紹介や民営職業紹介による就職者数をどの程度増やせば、登録型派遣の原則禁止による失業を回避することができると分析しているのか明らかにされたい。また、そのための具体的対策如何。
十 登録型派遣の原則禁止の例外について
 1 登録型派遣の原則禁止の例外として、いわゆる専門二十六業務、産前産後休業・育児休業・介護休業取得者の代替要員派遣、高齢者派遣及び紹介予定派遣が規定されている。これらについて登録型派遣を認める理由を各々明らかにされたい。
 2 現行労働者派遣法第四十条の二第一項第二号に規定されているいわゆる有期プロジェクト業務及び日数限定業務について登録型派遣が禁止される理由を示されたい。
 3 いわゆる専門二十六業務については、本法律案成立後、その範囲の見直しを考えているのか。その場合、範囲を拡大させる予定でいるのか、縮小させる予定でいるのか明らかにされたい。
十一 製造業務派遣の原則禁止について
 1 製造業務派遣については、平成十五年の法改正により解禁されたものであるが、今回、それを禁止する理由は何か。また、諸外国において製造業務派遣を禁止している国はあるのか。あれば当該国名及び禁止の具体的内容を明らかにされたい。
 2 政府は、製造業務派遣の原則禁止によって失業する派遣労働者数及び廃業する派遣元事業所数がどの程度になると推計しているのか、積算根拠も含めて明らかにされたい。
 3 製造業務派遣が原則禁止されれば、派遣先は直接雇用か請負を活用せざるを得なくなる。しかし、請負の活用は偽装請負の発生が懸念され、そのような懸念があるからこそ製造業務派遣を解禁して労働者派遣法を適用し、派遣元事業主及び派遣先に対する指導、助言及び勧告並びに派遣労働者の保護が図られてきたと考えられる。偽装請負の発生防止に向けて、厚生労働省は具体的にどのような対策を講じようとしているのか明らかにされたい。
 4 製造業務派遣の原則禁止に関して、外資系企業の母国から日本に対する投資の参入障壁となるという指摘について、政府はどのように考えているのか。
 5 昨年の衆議院議員総選挙における民主党のマニフェストでは、製造業務派遣の禁止の例外として新たな専門職制度を設けると明記していたが、マニフェストの内容と本法律案で常時雇用する労働者を禁止の例外としたこととの関連は如何。また、例外とした理由を明らかにされたい。
 6 製造業務派遣は製造業の技能の継承の観点から問題であるならば、期間工や季節工なども技能の継承の観点から問題ではないのか。期間工や季節工を禁止しない理由を明らかにされたい。
 7 製造業務派遣が原則禁止となった場合、製造拠点の海外展開を促すのではないかと懸念されるが、その影響を政府として調査しているのか。調査しているのであればその結果を示されたい。また、どのような対策を講じようと考えているのか。
 8 請負労働者も解雇や雇止めとなっており、雇用の安定が図られているとは言い難く、請負労働者についても有期労働契約を禁止すべきという議論があるが、これについて政府の見解を明らかにされたい。
 9 請負労働者については、労働基準法等一般的な労働法以外に法律がないことから、請負労働者を対象とする新法を制定すべきという議論があるが、これについて政府の見解を明らかにされたい。
 10 登録型派遣の原則禁止については、施行後二年間の暫定措置規定があるが、製造業務派遣の原則禁止にこのような規定を設けなかった理由を明らかにされたい。
十二 社団法人日本生産技能労務協会の緊急アンケート結果(二〇〇九年)について
 1 同アンケートでは、製造業務派遣が禁止となった場合、「新たに正社員を雇用する」と回答したメーカーが一割となっているが、この結果について政府の見解を明らかにされたい。
 2 1の結果から常時雇用以外の製造業務派遣を禁止することによって雇用の安定を図り、技能の継承が図られると言えるのか政府の見解を明らかにされたい。
 3 同アンケートでは、製造業務派遣が禁止となった場合、「製造業で働いていた派遣労働者の失業が増加する」と回答したメーカーが七割となっているが、この結果について政府の見解を明らかにされたい。
 4 同アンケートでは、派遣労働者の六十七%が製造業務派遣の禁止に反対しているが、この結果について政府の見解を明らかにされたい。
 5 業界団体のアンケート調査には公正さに欠けるという指摘があることから、政府において製造業務に就く派遣労働者のニーズや対策を調査すべきではないかと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
十三 製造業務派遣の原則禁止の例外について
 1 製造業務派遣の原則禁止の例外として常時雇用する労働者の労働者派遣が規定されているが、このような例外規定を設ける理由を明らかにされたい。
 2 登録型派遣の原則禁止の例外としていわゆる産前産後休業・育児休業・介護休業取得者の代替要員派遣、高齢者派遣及び紹介予定派遣が規定されているにもかかわらず、製造業務派遣の原則禁止の例外にこれらの労働者派遣が規定されていない理由を明らかにされたい。
十四 登録型派遣、製造業務派遣及び日雇派遣が原則禁止されれば、派遣労働者の失業、派遣先の労働力不足等が懸念されると考える。このような一般的な禁止規定は、我が国も批准している「民間職業仲介事業所に関する条約」(ILO条約第百八十一号)の「特定の状況の下で、特定の種類の労働者又は特定の部門の経済活動について、労働者派遣等を禁止することができる」旨の規定(第二条4(a))に反することになるのではないか。違反しないのであればその理由を具体的に明らかにされたい。
十五 登録型派遣が禁止される業務及び製造業務派遣が禁止される業務については、常時雇用する労働者であれば労働者派遣が可能となる。この常時雇用する労働者の定義については、期間の定めなく雇用されている者のみであるのか、有期の労働契約を反復更新されている労働者は含まれないのか明らかにされたい。有期契約労働者が含まれるのであれば、「常時雇用する労働者」という文言は誤解を招く懸念があり、定義規定を法律に明記すべきではないのか。定義規定を本法律案に明記しない理由を明らかにされたい。
十六 登録型派遣の原則禁止規定及び製造業務派遣の原則禁止規定の施行期日は、公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日とされている。このように三年間の猶予期間を設けた理由は何か。
十七 さらに、登録型派遣の原則禁止規定の施行の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日までの間、政令で定める業務については、登録型派遣を認めることとしている。この政令で定める業務とは具体的にどのような業務を想定しているのか。さらに、最大五年間の猶予期間を設ける理由は何か。
十八 日雇派遣の原則禁止について
 1 平成二十年に政府が提出した改正法案では、日雇労働者の範囲を「日々又は三十日以内の有期雇用労働者」と規定していたが、本法律案では「日々又は二月以内の有期雇用労働者」に拡大させている。このように日雇派遣の原則禁止の範囲を拡大させた理由は何か。
 2 日雇派遣の背景には、派遣先の迅速な労働力の確保や派遣労働者の簡便な雇用機会を図りたいとのニーズがあるものと考えられるが、政府は、日雇派遣を原則禁止とする中で、現在の派遣先と日雇で働こうとする労働者の迅速なマッチングをどのように図るつもりでいるのか。
 3 日雇派遣の原則禁止の例外として認められる業務及びその理由を明らかにされたい。
 4 日雇派遣労働者については、どのように日雇紹介へ移行させるのか。具体的方策を示されたい。
 5 現在、ハローワークにおける日雇紹介件数及びその仕事の内容を明らかにされたい。また、今後のハローワークにおける日雇紹介件数の見込みを明らかにされたい。
 6 現在、民営職業紹介所における日雇紹介件数及びその仕事の内容を明らかにされたい。また、今後の民営職業紹介所の設立数の見込み及び日雇紹介件数の見込みを明らかにされたい。
 7 日雇派遣の問題の一つに社会・労働保険の適用が指摘されていたが、日雇紹介へ移行した場合、社会・労働保険の適用問題は解決すると考えているのか。また、どういう根拠に基づいてそのように考えているのか。
 8 派遣元事業主と派遣労働者の労働契約期間を二ヶ月超とし、毎日派遣先を変えるような形態は、日雇派遣の原則禁止の脱法行為であると考えられるが、その有効な防止策について政府はどのように考えているのか。
十九 第百七十一回国会に民主党、社会民主党及び国民新党が衆議院に提出した「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案」では、派遣労働者に係る雇用契約であって、二月以内の期間の定めのあるものは、二月に一日を加えた期間の定めのあるものとみなす規定が盛り込まれていたが、本法律案にそれが規定されていない理由を明らかにされたい。
二十 グループ企業派遣の規制について
 1 本法律案では、グループ企業内の労働者派遣の割合を八割以下とする規制が規定されているが、このような規定を設ける理由は何か。
 2 派遣割合を算出するに当たって、派遣就業に係る総労働時間を用いた理由及び厚生労働省令で定める具体的内容を明らかにされたい。
二十一 本法律案には、離職した労働者について一年間の労働者派遣の禁止が規定されているが、このような規定を設けた理由は何か。また、この規制の例外として規定されている「雇用の機会の確保が特に困難であり、その雇用の継続等を図る必要があると認められる者として厚生労働省令で定める者」とは具体的にどのような者を想定しているのか。
二十二 本法律案が施行された結果、離職を余儀なくされた派遣労働者や廃業を余儀なくされた派遣元事業主に対して、政府はどのような対策を考えているのか。
二十三 職業紹介の充実について
 1 本法律案は、登録型派遣、製造業務派遣及び日雇派遣の原則禁止を規定しており、労働者派遣事業の大幅な縮小は避けられないと考える。そのため、政府は、公共職業安定所又は職業紹介事業者の行う職業紹介の充実等必要な措置を講ずるよう努めなければならないと規定しているが、労働力需給のミスマッチを防止するために職業紹介を具体的にどのように充実させるのか。
 2 職業紹介の充実に係る政策目標の具体的内容を示されたい。また、その政策効果はいつ、どのような手法で分析・検証するのか。さらに、政策効果が目標を下回った場合、禁止されている労働者派遣の解禁の可否について理由も併せて明らかにされたい。
二十四 労働者派遣契約の解除に当たって講ずべき措置について
 1 本法律案では、労働者派遣契約の当事者は、労働者派遣契約の締結に際し、労働者派遣契約の解除に当たって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置に関する事項を定めなければならないと規定しているが、具体的にどのような措置を定めなければならないのか。
 2 派遣先は、その都合により労働者派遣契約の解除を行うに当たっては、派遣元事業主による派遣労働者に対する休業手当等の負担をしなければならない。派遣先の金銭的負担は、休業手当の他にどのようなものを想定しているのか。派遣元事業主の逸失利益はこの規定の対象に含まれるのか。
二十五 有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等について
 1 本法律案に有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等の規定が盛り込まれた理由を明らかにされたい。
 2 有期雇用派遣労働者等の定義規定について、「相当期間」とは具体的にどのくらいの期間を示すのか。「厚生労働省令で定める者」とは具体的にどのような者を想定しているのか。
二十六 均衡を考慮した待遇の確保について
 1 本法律案では、派遣元事業主に派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する派遣先の労働者との「均衡」を考慮することを規定しているが、この「均衡」の具体的内容及び「均等」との違いを示されたい。
 2 昨年の衆議院議員総選挙における民主党のマニフェストには、「派遣労働者と派遣先労働者の均等待遇原則を確立する」と明記されていたが、本法律案ではそれが実現されていないと考える。これはマニフェスト違反であると認めるのか。認めないのであれば、その理由を明らかにされたい。
 3 派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者の賃金を比較したところ、派遣労働者の賃金の方が高かった場合には、本法律案により派遣労働者の賃金を引き下げなければならないのか。
 4 派遣元事業主が派遣労働者と派遣先の労働者の均衡待遇を確保しなかった場合、派遣元事業主はどのようなペナルティを受けるのか。
 5 派遣元事業主が派遣労働者と派遣先の労働者の均衡待遇を確保しなかったことを派遣労働者が主張する場合、その立証責任は派遣労働者が負うのか。
 6 派遣労働者と派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準などの事情を比較したところ、派遣労働者の賃金の方が高かった場合には、本法律案により派遣労働者の賃金を引き下げなければならないのか。
 7 派遣元事業主が派遣労働者と派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準などの事情を考慮しなかった場合、派遣元事業主はどのようなペナルティを受けるのか。
 8 派遣元事業主が派遣労働者と派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準などの事情を考慮しなかったことを派遣労働者が主張する場合、その立証責任は派遣労働者が負うのか。
 9 本法律案では、派遣先は、派遣元事業主の求めに応じ、派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する当該派遣先の労働者に関する情報であって均衡待遇に必要なものを提供する等必要な協力に努めなければならないと規定しているが、提供する情報の範囲を具体的に示されたい。また、その場合、当該派遣先の労働者の個人情報は如何にして保護されるのか。
二十七 労働者派遣事業の業務の内容に係る情報提供義務の創設について
 1 本法律案では、派遣元事業主は、事業所ごとの派遣労働者数等の情報を提供しなければならないと規定しているが、法律に規定されている事項の他に厚生労働省令ではどのような事項を規定する予定でいるのか。
 2 いわゆるマージン率の平均も情報提供義務の範囲に含まれているが、厚生労働省令で定める算定方法を具体的に示されたい。
二十八 労働者派遣料金額の明示について
 1 労働者派遣料金額の明示に当たって厚生労働省令で定める額の具体的内容とは何か。
 2 労働者派遣料金額の明示は、書面で行わなければならないのか。
二十九 待遇に関する事項等の説明について
 1 派遣元事業主が派遣労働者として雇用しようとする労働者に対し説明しなければならない事項のうち、法律に規定されている事項の他に厚生労働省令で定める事項とは何か。
 2 採用時における待遇に関する事項等の説明は、書面によって行わなければならないのか。
 3 採用時における待遇に関する事項等の説明は、労働基準法による労働条件の明示や労働者派遣法による就業条件の明示と併せて行うことができるのか。
 4 採用時における待遇に関する事項の説明に誤りがあった場合、派遣元事業主はどのようなペナルティを受けるのか。
三十 期間を定めないで雇用される労働者に係る派遣先の労働契約申込義務について
 1 本法律案は、派遣受入期間の制限のない業務(いわゆる専門二十六業務等)に就く期間を定めないで雇用される派遣労働者について、派遣先の労働契約申込義務の適用対象から除外することを規定しているが、「期間を定めないで雇用される労働者」とは、文字どおり期間の定めのない労働者のみを指すのか、有期労働契約を反復更新されて一年を超えて雇用されている者又は一年を超えて雇用される見込みのある者は含まれないのか明らかにされたい。
 2 派遣受入期間の制限のある業務(いわゆる非専門二十六業務等)に就く期間を定めないで雇用される派遣労働者については、現行労働者派遣法どおり派遣先の労働契約申込義務が適用されるのか。
三十一 本法律案では、労働者派遣契約の締結に際し、当該職業紹介により従事すべき業務の内容及び労働条件その他の紹介予定派遣に関する事項を定めなければならないと規定されているが、「その他の紹介予定派遣に関する事項」の具体的内容は何か。
三十二 労働契約申込みみなし制度等の創設について
 1 本法律案では、派遣先がいわゆる違法派遣であることを知りながら派遣労働者を受け入れた場合には、その時点で、派遣先が派遣労働者に対して労働契約を申し込んだものとみなすと規定している。しかし、このような労働契約申込みみなし規定は、企業の採用の自由や労働契約の合意原則(労働契約法第三条及び第六条)に違反するのではないかという疑問がある。このような規定を盛り込んだ理由及び採用の自由や労働契約の合意原則に違反しない理由を具体的に示されたい。
 2 @適用除外業務への派遣受入れ、A無許可・無届事業所からの派遣受入れ、B派遣受入期間の制限違反、Cいわゆる偽装請負及びD登録型派遣の原則禁止に違反した派遣受入れが労働契約申込みみなし規定の対象となった理由について、各々明らかにされたい。
 3 労働契約申込みみなし規定により、派遣先は派遣労働者との労働契約の内容の決定に関与できないが、これは、企業はいかなる条件で労働者を雇うのかについて原則として自由に行うことができるという最高裁判決(三菱樹脂事件 昭和四十八年十二月十二日)に抵触するのではないか。抵触しないならば、その理由を明らかにされたい。
 4 違法派遣についての立証責任は、派遣労働者と派遣先のどちらにあるのか。
 5 常時雇用する労働者の範囲に有期労働契約を反復更新して一年を超えて引き続き雇用されている者又は一年を超えて引き続き雇用される見込みのある者が含まれるとした場合について、当該派遣労働者が登録型派遣が禁止される業務(いわゆる非専門二十六業務等)に派遣就業していて、労働契約の雇止めを受けた場合、当該派遣労働者は常時雇用する労働者ではないと判断されるのか。また、その場合、労働契約の申込みみなし規定が適用されるのか。
 6 いわゆる二重派遣については、職業安定法第四十四条で原則禁止されている労働者供給に該当するが、本法律案では、労働契約申込みみなし規定の対象となっていない理由及び今後の法制化の見通しを示されたい。
三十三 法違反の是正に係る勧告について
 1 派遣先に対する法に違反した場合の是正の勧告について、指導又は助言の前置を要しないものとすることを規定した理由を明らかにされたい。
 2 労働政策審議会建議「労働者派遣制度の改正について」(平成二十年九月二十四日)は、指導又は助言を行わず是正勧告を行う範囲について、法違反を繰り返すなど悪質な派遣先とすることを提言しているが、その悪質な派遣先の判断基準の内容を示されたい。
三十四 一般労働者派遣事業の許可及び特定労働者派遣事業の開始の欠格事由を追加しているが、追加した欠格事由ごとにその理由を明らかにされたい。
三十五 労働者災害補償保険法の一部改正について
 1 本法律案は、派遣先の事業主等に対する報告、文書提出若しくは出頭命令又は派遣先の事業の事業場等への立入検査を規定しているが、このような規定を盛り込んだ理由を明らかにされたい。
 2 派遣労働者の安全衛生責任は派遣先が負うにもかかわらず、労災補償責任は派遣元事業主が負うという現行の法制度には矛盾があると考えるが、本法律案にはその見直しが盛り込まれていない理由を明らかにされたい。
三十六 期間を定めないで雇用される労働者に係る特定を目的とする行為について
 1 労働政策審議会に諮問し、妥当であると答申された改正法案要綱には、期間を定めないで雇用される労働者に係る特定を目的とする行為の解禁が盛り込まれていたが、本法律案には、この規定が削除されている。今回の労働者派遣法の改正は、労働政策審議会において公労使の三者が審議し、ギリギリの調整を経て取りまとめられたものであると理解している。それにもかかわらず、審議会答申と異なる本法律案が提出された背景と理由について、政府・与党内の議論を含めて具体的に明らかにされたい。
 2 労働政策審議会の答申と異なる立法措置を講ずることは、政治の信用を失い、法律の施行に当たって労使の協力を得ることが困難となる懸念があるのではないか。

 右質問する。



経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.