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平成二十二年十月五日提出
質問第二六号

那覇地検の記者会見と検察官の権限と責任、及び刑事訴訟法の規定等に関する質問主意書

提出者  高市早苗




那覇地検の記者会見と検察官の権限と責任、及び刑事訴訟法の規定等に関する質問主意書


 平成二十二年九月七日に日本領海内で発生した中国漁船による公務執行妨害等被疑事件については、去る十月一日に提出した質問主意書において、外国人による日本領海内での漁業等を禁じた「外国人漁業の規制に関する法律」を適用しなかった理由などについて質したところである。
 また、九月二十四日に那覇地検が行った記者会見で鈴木亨次席検事が「今後の日中関係も考慮すると、身柄を拘束して捜査を続けることは相当でない」と述べたことについても、検察官の権限と責任、今後の公訴提起に向けての検察官の裁量権の範囲等について、様々な疑問を感じている。
 従って、次の事項について質問する。

一 そもそも検察官には、「今後の日中関係も考慮すると、身柄を拘束して捜査を続けることは相当でない」という外交に関わる政治的判断を行う権限や責任があるのか。
 権限や責任があるとしたら、根拠となる法律名と条文を示されたい。
二 刑事訴訟法第二百四十七条は「公訴は、検察官がこれを行う」と規定しており、この規定によって、検察官は公訴を提起する権限を独占するとともに、「公訴を提起しない」権限も与えられていると解される。
 そして、刑事訴訟法第二百四十八条は「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる」と規定している。
 これらの規定につき、次の質問をする。
 @ これらの規定は、「検察官の裁量権の範囲」を示したものだと解釈してよいか。
 A 刑事訴訟法第二百四十八条が公訴を提起しなくても良い理由として列挙している「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況」には、例えば「今後の日中関係」も該当し得るのか。
  該当するとしたら、条文中のどの文言がそれに当たるのか。
  本事件については、公訴提起の有無は現時点では不明であるから、一般論として問う。
三 検察庁法第四条は「検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ、裁判の執行を監督し、又、裁判所の権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、又は意見を述べ、又、公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う」と規定している。この規定について、次の質問をする。
 @ 国法上、検察官以外に公訴権を認められた者はない。よって、「公訴権こそは、検察官に与えられた権限の中でも極めて重要なもの」だと考えるが、見解を伺う。
 A 検察庁法第四条に、「公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う」と規定されているが、検察官が「公益の代表者」として行う事務の中に「外国艦船乗組員の逮捕留置に関する援助法」第一条から第十一条に規定された「外国艦船乗組員の逮捕、留置、引渡しに関する諸権限」は含まれるか。
 B 前問につき仮に含まれるとしたら、本事件については「公益の代表者」として如何なる公益を守ったのか。
四 検察庁法第六条は「検察官は、いかなる犯罪についても捜査をすることができる。検察官と他の法令により捜査の職権を有する者との関係は、刑事訴訟法の定めるところによる」と規定している。
 そして、刑事訴訟法第百九十一条第一項は「検察官は、必要と認めるときは、自ら犯罪を捜査することができる」と規定している。
 これらの規定につき、次の質問をする。
 @ これらの規定について、『新版 検察庁法 逐条解説』には、「他の捜査機関の捜査活動が不活発であるときや、他の捜査機関の能力が不十分であるため完全な捜査が期し得ないようなときに、いかなる犯罪についても捜査をすることができる検察官が自ら捜査に乗り出すことは、国家刑罰権の適正な実現のうえからきわめて重要なことであって(後略)」と記されている。
  この見解については正しいと考えるか。
 A 本事件について、検察官は、「刑法(公務執行妨害)」、「外国人漁業の規制に関する法律(外国人による日本領海内での漁業禁止)」について、それぞれ捜査を行ったか。
  行ったとしたら、その理由は何か。行わなかったとしたら、その理由は何か。
 B 本事件について、検察官は、前問に記した法律以外の法律についての抵触の可能性について、捜査をしたか。
  したとしたら、具体的に被疑者が抵触した可能性があると考えられた法律名を回答されたい。
五 本主意書で紹介した法律が認めた検察官の「起訴独占主義」や「起訴便宜主義」の「意義」については、『ジュリスト増刊 刑事訴訟法の争点 第3版』に、高松高等検察庁の宗像紀夫検事長(当時)が、「訴追の公正性や全国的な統一性を確保するとともに、検察官が有罪判決を得られる見込みがないと判断した場合や、情状等にかんがみ訴追を必要としないと判断した場合に訴追裁量権を適正に行使することにより不必要な訴追を避け、被疑者・被告人の権利・利益の保護やその改善更生を図ることにある」と書いている。この点につき、次の質問をする。
 @ 前記の高松高等検察庁検事長の見解は、適切なものと考えるか。
 A 現段階では、本事件の公訴提起の有無は不明だが、今後、「訴追の公正性」や「全国的な統一性」が確保されるべきだと考えるか。
 B 「処分保留の上、釈放」された被疑者である中国人船長は、既に出国したが、同被疑者について、今後、その「改善更生」を図ることは可能か。具体的な手段があれば、回答されたい。

 右質問する。



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