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平成二十二年十一月十六日提出
質問第一七〇号

六ヶ所再処理工場のガラス固化溶融炉試験等に関する質問主意書

提出者  服部良一




六ヶ所再処理工場のガラス固化溶融炉試験等に関する質問主意書


 六ヶ所再処理工場のアクティブ試験は、二〇〇八年一〇月末に高レベル廃液ガラス固化溶融炉の炉底に白金族元素が堆積し停止して以来技術的な解決がつかず、日本原燃は、本年一〇月であった竣工予定を、二〇一二年一〇月に延期した。
 現在、同試験の再開方針につき、原子力安全・保安院および再処理ワーキンググループにおいて、二〇一〇年八月二三日付で日本原燃から提出された報告書「再処理施設高レベル廃液ガラス固化建屋 ガラス溶融炉運転方法の改善検討結果について(改正版)」(以下、「改正報告書」)に基づき検討がなされている。「改正報告書」によれば、現在のアクティブ試験は日本原燃による二〇〇八年六月一一日付「安定運転条件報告」に基づいている。この安定運転の考えは同年六月三〇日の原子力安全・保安院報告「『安定運転条件報告』について」で要約・定式化され、同日の核燃料サイクル安全小委員会に提案され了承されている。そこでは、まずA溶融炉の試験において「安定した運転状態の維持」及び「長期に運転状態を維持」について確認し、その「確認が得られた後」に同様の過程をB溶融炉で実施することと明記されている。
 ところが、今回の「改正報告書」では、現在まで使用してきたA溶融炉がなぜ停止せざるを得なかったのかという実態に基づいた総括を優先させることなく、化学試験の後に入るアクティブ試験(実廃液試験)を、A溶融炉ではなく、まずはB溶融炉で行うとしている。
 国は東海村のガラス固化技術開発施設(TVF1号炉)の検討を基に、ガラス固化を「完成された技術」と見なし、その根拠となる資料は「ガラス固化技術開発施設における高レベル放射性廃液のガラス固化処理技術開発」(二〇〇四.七.核燃料サイクル開発機構・研究開発課題評価委員会)であるとしている(内閣参質一七四第六〇号平成二十二年四月三十日質問主意書への答弁書)。
 しかし、この報告書の総合評価には「完成された技術」という記述はなく、白金族元素の堆積は「極めて重要な課題」であり「この問題の解決に当たることを期待する」となっている。このような根拠にならない資料を提示することは、国がガラス固化技術の検証を厳密に実施せずに、六ヶ所再処理工場の溶融炉設置を許可したことになると考えられる。そして今回も、六ヶ所A溶融炉の失敗を検証せずにB溶融炉で試験を先行実施したとしても、同じ失敗が繰り返される懸念が否めない。
 未完成な技術に長い年月と多額の税金と公共料金が投入される可能性への懸念ならびに技術の見通しの有無を明らかにする必要があるとの認識から、A溶融炉の失敗原因の徹底した検証が必要であると考え、以下質問する。

一 今後のアクティブ試験の進め方について
 1 アクティブ試験の前々段である低模擬廃液を用いた化学試験の段階に後戻りすることについて、しかもそこに今後の大きなウエイトが置かれていることについて
  (1) アクティブ試験の中でどう位置付けられているのか。
  (2) 本件は再処理ワーキンググループで問題になっていないのか。
  (3) 化学試験の終了を認めた原子力安全・保安院や核燃料サイクル安全小委員会などの責任をいかに認識しているか。
 2 日本原燃が「改正報告書」で示しているB溶融炉試験を優先させる考えについて
  (1) これは、二〇〇八年六月三〇日の原子力安全・保安院及び核燃料サイクル安全小委員会の考えに反しているのではないのか。
  (2) 本件について、原子力安全・保安院はどう考えているのか。
  (3) この方針転換は、再処理ワーキンググループでは問題になっていないのか。
 3 B溶融炉での試験を優先させる理由について
  (1) その理由は何か。
  (2) 日本原燃がいう「実廃液の影響を受けていないB系列」という理由に立てば、裏返すとA溶融炉は実廃液の影響を受けているから後の順序にするということか。
  (3) その場合、A溶融炉が受けた実廃液の影響とは具体的にどんなもので、それがなぜ試験後回しの理由になるのかについて、日本原燃から説明を受けているのか。受けているのなら具体的に説明をされたい。
 4 「改正報告書」では、「安定した運転状態の維持」、「ガラス固化体の品質規格」等を判断する指標が示されていない。
  (1) このことを明確にさせるつもりか。
  (2) この指標が明確でなければ、肝心のアクティブ試験がきわめておざなりなもので終わる危険性があると考えるが、その点はどう考えているのか。
 5 今回の対策は、KMOCというモックアップ試験結果から温度管理の方法を持ち込むようなやり方に限られている。このような一時凌ぎ的方式を認めて、それで再び白金族元素の堆積が起こった場合、原子力安全・保安院や再処理ワーキンググループ等はどう責任をとるのか。
二 白金族元素の堆積原因について
 1 炉内残留物の除去作業が後回しにされていること、及び白金族元素堆積の原因について
  (1) この作業は白金族元素など残留物が堆積する原因を実態的に探るために必要な作業ではないのか。
  (2) 日本原燃に白金族元素堆積の原因に関する明確な総括を行うよう要求するべきではないか。
  (3) 東海村で運転されているTVF2号炉は白金族元素堆積対策の見通しがついているのか。
三 現在開発中の改良型溶融炉について
 1 改良型溶融炉を二〇一二年から使用する予定があるか。
 2 現在の溶融炉を用いたアクティブ試験が二〇一二年一〇月になってもうまくいかない場合は、どのように対処するつもりか。
四 その他
 1 六ヶ所溶融炉設置の際「完成された技術」とした根拠資料の総合評価にはそのような結論がないが、再度「完成された技術」とした根拠とそのことを認めた国の審議委員会名と委員名を回答されたい。
 2 TVF1号炉ですでに白金族元素の堆積が問題になっていたにもかかわらず、六ヶ所のガラス固化溶融炉を五.五倍にも大型化し、コストを理由に事前の廃液濃縮過程を省略したことの影響について、どこかで検証がなされているのか。
 3 原点に戻り六ヶ所A溶融炉の徹底検証を行い、場合によっては思い切った見直しをする予定はないか。
 4 竣工延期の二〇一二年一〇月になっても高レベル廃液ガラス固化溶融炉の技術的目処がついていない場合、国として再処理を見直す最終的判断をするつもりはないのか。

 右質問する。



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