衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成二十二年十一月十八日提出
質問第一七七号

陵墓の治定と祭祀に関する再質問主意書

提出者  吉井英勝




陵墓の治定と祭祀に関する再質問主意書


 本年十月一日に提出した質問主意書(以下、前回質問主意書と略)で、牽牛子塚古墳(奈良県明日香村)と宮内庁が「斉明天皇陵」に治定している車木ケンノウ古墳(同県高取町)について取り上げ、陵墓の治定の見直しの問題を質した。牽牛子塚古墳が真の斉明天皇陵であるか否かの検証と、宮内庁による現在の斉明天皇陵の治定の正否の検証等を求めたが、これに対する答弁書は「斉明天皇陵の治定を見直さなければならないとは考えていない」というものであった。
 文化庁に確認したところ、牽牛子塚古墳の正確な墳丘範囲をつかむ調査中、凝灰岩製の横口式石槨のほぼ東南方向の下方に設定したトレンチで、このほど別の横口式石槨の一部が検出されたという。牽牛子塚古墳で巨大な石槨と八角形の墳丘が確認されたことにより、牽牛子塚古墳が真の斉明天皇陵ではないかという考えが強まっていることは前回質問主意書でも指摘した。日本書紀には、「斉明天皇と間人皇女を小市岡上陵に合葬し、斉明天皇の孫に当たる大田皇女を、その陵の前の墓に葬った」という旨の記述がある。新たに検出された石槨に大田皇女が埋葬されたと考えれば、斉明天皇陵の前の墓に大田皇女を葬ったという日本書紀の記述にも一致し、牽牛子塚古墳こそが真の斉明天皇陵ではないかという考えはさらに補強されるものとなる。新たな石槨の学術的検討は当然必要であるが、同時に現在の宮内庁による斉明天皇陵の正否の検証と、真の斉明天皇陵の学術的検証の必要性はこれまで以上に強まっているものと考えられる。
 よって、次のとおり質問する。

(一) 前回質問主意書に対する答弁書で「斉明天皇陵の治定を見直さなければならないとは考えていない」が、「今後とも考古学を始めとする学術的成果には留意していく所存」という見解が示された。本年六月三日に提出した質問主意書に対する答弁書(内閣衆質一七四第五三五号)では「宮内庁書陵部陵墓課においては、陵墓等に関する様々な学説があることも踏まえて、調査及び考証に当たっている」という見解が示されている。これら答弁書の見解を踏まえ、宮内庁は今回の一連の調査成果に留意し、調査と考証に当たっているのか。取り組みの現状を明らかにされたい。
 また、斉明天皇陵の治定の正否に関する検証を行う必要があるのではないか。改めて問う。
(二) 前回質問主意書に対する答弁書で、宮内庁が斉明天皇陵として扱っている車木ケンノウ古墳から、被葬者が斉明天皇であることを確実に示す陵誌銘等は出土していないことが示されたが、日本書紀等の文献に車木ケンノウ古墳に斉明天皇を埋葬したという記述があるのか。あわせて、車木ケンノウ古墳に斉明天皇が埋葬されていると確実に肯定できる根拠を示されたい。
(三) 現在の斉明天皇陵のすぐ下には、斉明天皇の孫に当たる「天武天皇妃大田皇女」が葬られているとして宮内庁が「越智崗上墓」という名称で管理している陵墓がある。宮内庁は前回質問主意書に対する答弁書の中で、ここからも被葬者を確実に特定できる陵誌銘が出土していないことを明らかにしているが、大田皇女が埋葬されているものと確実に肯定できる根拠を示されたい。
 また、越智崗上墓とは、周知の埋蔵文化財包蔵地なのか否か、明らかにされたい。
(四) 前回質問主意書に対する答弁書で、牽牛子塚古墳の被葬者について「その被葬者を斉明天皇とする説があることは承知している」という見解が示されている。宮内庁が陵墓または陵墓参考地に治定していない古墳の中で、その被葬者が皇室の先祖であると考える学説について、宮内庁が把握しているものには他に何があるのか。古墳の名称と、考えられている被葬者とを列挙されたい。
(五) 宮内庁の治定による陵墓や陵墓参考地の被葬者とは別の被葬者が埋葬されているという学説がある古墳は少なくないが、宮内庁はその学説をどの程度把握しているのか明らかにされたい。
(六) 陵墓や陵墓参考地における祭祀の対象は何で、何を目的に行っているものなのか。
(七) 宮内庁の前身である宮内省が設置されて以降、陵墓や陵墓参考地の治定の変更や取り消しを行ったものがあるのか。あれば陵墓または陵墓参考地の名称、「古代高塚式の陵墓又は陵墓参考地」であれば考古学上の名称、被葬者、変更もしくは取り消しの日(西暦による)、変更もしくは取り消しの理由を明らかにされたい。
 また、その際、祭祀の対象はどのように変更されたか。
(八) 奈良県天理市の行燈山古墳は宮内庁によって「崇神天皇陵」に、同じく天理市の渋谷向山古墳は「景行天皇陵」に治定され現在に至っている。現在の治定が行われるまでは、行燈山古墳は景行天皇陵、渋谷向山古墳は崇神天皇陵として扱われていたと思うが、どのような検討を経て現在の治定に至ったのか、詳細を示されたい。
 また、その検討過程は何に記述されているのか。記録物の名称と、記述の全文を明らかにされたい。
(九) 本年八月四日に提出した質問主意書(以下、前々回質問主意書と略)に対する答弁書(内閣衆質一七五第三八号)で、行燈山古墳と渋谷向山古墳の治定の時期はどちらも文久年間と示されているが、この治定が行われるまで行燈山古墳では景行天皇が埋葬されているものとして、渋谷向山古墳では崇神天皇が埋葬されているものとして祭祀が行われていたのか。
 また、その祭祀は「皇室の伝統に基づくものとして古くから行われているもの」(二〇〇九年七月九日提出の質問主意書に対する答弁書(内閣衆質一七一第六五七号))だったのか。
(十) 宮内庁はこれまで一貫して「陵墓や陵墓参考地については、現に皇室において祭祀が継続して行われ、皇室と国民の追慕尊崇の対象となっているので、静安と尊厳の保持が最も重要なことである」と述べ、これを理由に学術的目的であっても陵墓や陵墓参考地に治定している古墳の調査や自由な立ち入りを拒んでいる。陵墓や陵墓参考地に治定されている古墳が「国民の追慕尊崇の対象となっている」という根拠を明示されたい。
(十一) 前回質問主意書で、「現在陵墓に治定されている古墳で行われている皇室の伝統に基づく祭祀とは、明治新政府が新たにつくった儀礼ではないのか」と質し、明確に答えるよう求めたが、それに対する答弁は前々回質問主意書に対する答弁書での見解をそのまま引用するだけで、明確な記述がなかった。
 宮内庁が「古代高塚式の陵墓又は陵墓参考地」として管理している百二十一の古墳の治定時期は、前々回質問主意書に対する答弁書で示されているように、元禄・享保年間のものは二十三で、残りの九十八の古墳の治定は幕末〜一九四〇年代前半である。二〇〇九年七月九日提出の質問主意書に対する答弁書に「陵墓における祭祀は、皇室の伝統に基づくものとして古くから行われているものと承知している」とある。しかし、前々回質問主意書に対する答弁書では「治定以降現在に至るまで皇室による祭祀が継続して行われているところ」と示されている。皇室による祭祀の継続の始まりは「治定以降」で、「古くから」とは元禄・享保年間(十七世紀後半から十八世紀半ば)までで、多くは幕末〜一九四〇年代前半ということか。
(十二) 幕末〜一九四〇年代前半に治定された陵墓や陵墓参考地は百二十一の古墳のうち九十八であり、陵墓や陵墓参考地として宮内庁が管理している古墳において「皇室の伝統に基づくものとして古くから行われている」祭祀の実態とは、明治新政府の下で作り出された儀礼なのではないか。重ねて明確な答弁を求める。あわせて、現在のすべての陵墓や陵墓参考地の祭祀が、古代からの皇室の伝統に基づくものであるという根拠があれば明示されたい。
(十三) 前々回質問主意書に対する答弁書に「平安時代に成立した「延喜式」にも、祭祀の対象となる陵墓の一覧が記載されているところ」とあるが、これには陵墓参考地は含まれていないという理解でよいか。
(十四) 宮内庁が「古代高塚式の陵墓」として管理している古墳は全体でいくつあり、延喜式記載の祭祀の対象に該当するものはそのうちいくつか。あわせて、延喜式に記載されているという祭祀の対象に該当する陵墓の名称・考古学上の名称・被葬者名・所在地・治定年月日(西暦による)をすべて明らかにされたい。
(十五) 前回質問主意書に対する答弁書で「中世以降、戦乱等の混乱により、一時祭祀が途絶えた陵墓等がある」と示されているが、これに該当するものは宮内庁が「古代高塚式の陵墓又は陵墓参考地」として管理している百二十一の古墳のうち、いくつか。あわせて、該当する陵墓または陵墓参考地の名称・考古学上の名称・被葬者名・所在地・治定年月日(西暦による)をすべて明らかにされたい。
 また、祭祀が途絶えた「一時」とは、具体的にいつからいつまでなのか。
(十六) 前回質問主意書において、陵墓や陵墓参考地に治定されている古墳に設けられている鳥居の目的について質したが、答弁書では「陵墓等における特定の区域とそれ以外の区域との境界を示すために設置されているもの」というものであった。陵墓等における特定の区域とは、具体的に何をさしているのか。
(十七) 宮内庁が神武天皇陵と治定している「四条ミサンザイ古墳」について、前回質問主意書に対する答弁書は「周知の埋蔵文化財包蔵地としておらず、その種類区分等は把握していない」というものであった。神武天皇はいつ没し、神武天皇陵はいつ造られたのか。西暦で示されたい。

 右質問する。



経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.