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平成二十三年九月二十六日提出
質問第四〇号

沖縄県八重山採択地区における教科書採択に関する質問主意書

提出者  赤嶺政賢




沖縄県八重山採択地区における教科書採択に関する質問主意書


 文部科学省は九月十五日、沖縄県教育委員会に対し、「八重山採択地区協議会の規約に従ってまとめられた結果」に基づいて、同採択地区を構成する石垣市、竹富町、与那国町各教育委員会が同一の教科書を採択するよう指導することを求める通知を発出した。これは、この間の経緯と事実関係を十分にふまえず、一連の不正常なプロセスを通じて育鵬社の公民教科書を選定した八重山採択地区協議会(以下、協議会という。)の答申に従って採択を一本化することを求めたものであり、地方教育行政に関わる重大な問題である。関係者や教職員、保護者、住民からは困惑と不信の声が上がっている。
 中川正春文部科学大臣は、九月二十日の記者会見で、法の趣旨、沖縄でつくっているルールとその運用、どこのプロセスが正しかったかについて外形的に分析し、文部科学省としての総合的な判断を示す可能性に言及している。
 政府は、次の事項について調査の上、事実関係と見解を明らかにし、不当な政治介入を排し、現行地方教育行政法、教科書無償措置法に基づく沖縄県教育委員会と関係市町教育委員会の努力を尊重する立場に立ち返るべきである。
 以下、質問する。

一 今回の問題は、協議会規約の全面改定から始まった。採択に向けた作業がすでに開始されている六月二十七日に開かれた協議会の総会で、協議会会長の玉津博克石垣市教育長は、初めて規約改定案を提示し、その場で承認の手続きを取っている。さらに、従来、同採択地区において実施されてきた調査員による推薦図書の順位付けを廃止し、その点について「総会ではいろんな情報提供をしたので、伝えたかどうかはっきりしない」と述べ、複数の委員からは「事前に聞いていない」と指摘されていることが報じられている(「八重山毎日新聞」七月十七日付)。これらの改定が、各教育委員会に持ち帰って検討する手続きを経ずに行われている。この点についての事実関係と政府の見解を示されたい。
二 改定された規約では、調査員について「役員会が選任し、会長がこれを委嘱又は任命する」(第八条三)とされているが、玉津会長は、役員会を開催せずに調査員を任命し、翌二十八日に委嘱状を交付している。交付式は、協議会副会長の慶田盛安三竹富町教育長に日程を伝えないまま開催したことが報じられている(「琉球新報」七月十六日付)。この点についての事実関係と政府の見解を示されたい。
三 玉津会長は、調査員による推薦図書の順位付けの廃止について、「平成二年に文科省からの通達で順位付けをさせず、協議会で判断するようにと言われている」(「八重山毎日新聞」七月十七日付)と述べているが、これは、政府の見解と同じか。
四 規約の改定によって、協議会の構成は、各教育委員会の担当課長(指導主事)三名が外される一方、教育委員三名が加わり、総数は十一名から八名に削減された。沖縄県教育庁八重山教育事務所は、八月二日に口頭で、翌三日に文書で、「協議会メンバーに校長・三市町教育委員会指導主事を新たに追加し、教育専門家の意見を役立て、更なる採択地区協議会の協議の充実を図ること」を要請したが、協議会は十日の総会で委員の追加動議を否決した。こうした下で開かれた八月二十三日の協議会では、調査員による報告書で推薦図書に挙げられておらず、最も多い十四ケ所の問題点が指摘されていた(「沖縄タイムス」八月二十五日付、九月二日付)育鵬社の公民教科書が、時間にして約五分間、教科書名を明かさずに審議することを求める玉津会長の采配の下、二人の委員が教科書名を挙げずに選定における着眼点を述べただけで採決に付され、選定された(「琉球新報」九月八日付、同十六日付)。これら一連の経過をふまえ、協議会による選定が「教科書の内容についての十分な調査研究によって」(二〇一一年四月七日、「平成二十四年度使用教科書の採択について(通知)」)行われたものと判断するか、政府の見解を示されたい。
五 八月二十三日の協議会は、非公開で開かれ、記名投票を求める動議を賛成少数で否決し、無記名投票で選定を行った。また、協議会委員の氏名について、玉津会長は「採択後も公表しない」と述べている。一九九〇年三月二十日付で当時の文部省が発出した通知(「教科書採択の在り方の改善について(通知)」)は、「採択地区における採択地区協議会等の委員名については、採択関係者の責任を明確にする意味からも、各地域の実情に応じて、できるだけ公表していくことが望ましい。」としているが、今回の協議会の対応についての政府の見解を示されたい。
六 協議会委員に学識経験者として参加した石垣繁氏は、協議会が開催された二十三日の数日前に、玉津会長から「歴史は帝国書院に入れた方がいいんじゃないですか」と事前に投票を依頼されていたことを明らかにしている(「琉球新報」八月二十八日付)。背景として、自民党県連幹部が中山義隆石垣市長や保守系の石垣市議らに対し「沖縄戦はハードルが高すぎる」と繰り返し伝え、歴史教科書での強行採決の動きにブレーキをかけていたことが報じられている(「沖縄タイムス」八月二十五日付)。また、協議会副会長の崎原用能与那国町教育長は、同町教育委員である協議会委員と、育鵬社の歴史・公民教科書に投票することを相談し、玉津会長に事前に伝えていたことを明らかにしている(「琉球新報」八月二十九日付)。事前の投票依頼についての事実関係と政府の見解を示されたい。
七 教科用図書検定調査審議会が二〇〇二年七月三十一日に取りまとめた報告書(「教科書制度の改善について(検討のまとめ)」)は、市町村教育委員会と採択地区の関係の明確化について言及している。ここでは、まず「採択権限は各教育委員会にあり、採択地区協議会は地区内の構成市町村で同一の教科書を採択するための協議を行う場である」との見解を示しているが、この点に今も変わりはないか。すなわち、協議会は各教育委員会の諮問を受け、調査研究を行い、結果を答申することを基本的役割とする機関であり、その選定結果が各教育委員会による採択を法的に拘束するものでないことは明らかであるが、改めてその点を確認されたい。
八 同報告書は、市町村教育委員会に対し、「採択地区協議会等他市町村の教育委員会との協議に臨む前に、(略)協議が一度で整わないことも想定し、(略)再協議の場合の手続を定めておく」ことを促しているが、六月二十七日の総会で、玉津会長の提示した規約改定案は、各教育委員会が協議会で選定した教科書と異なる決定をした場合に「再協議した結果を八重山採択地区の最終結果とする」と明記していたため、副会長の慶田盛安三竹富町教育長らが反対し、「役員会で再協議することができる」に変更された経緯があることを承知しているか。従って、規約第九条五に規定する役員会による再協議の結果をもって同地区の採択結果とすることへの各教育委員会の合意はないと考えられるが、この点についての政府の見解を示されたい。以上のことから、八月三十一日に開かれた役員会では、竹富町教育委員会に対し、答申通りに採択するよう求める要請を多数決で決めるほかなかったものであるが、竹富町教育委員会は九月二日の臨時教育委員会で、育鵬社の公民教科書を不採択とした八月二十七日の委員会決定を再確認したことで、規約に定められた協議会による手続きは終了したと考えられるが、政府の見解を示されたい。
九 規約に定められた協議会による手続きは終了し、三市町教育委員会による採択結果は一致しなかったことから、三市町教育委員会は、教科書無償措置法第十条に基づく沖縄県教育委員会の指導、助言、援助の下、九月八日、三市町の全教育委員による協議の場を設けた。中川文部科学大臣は、九月十三日の記者会見で、「協議は調っていないというふうに考えていかざるを得ない」との見解を示しているが、協議の場では、協議の形態について各教育委員会に分かれて検討した結果、与那国町教育委員会は合意を前提として全教育委員で協議すること、石垣市教育委員会は協議の形態についてはまとまらなかったこと、竹富町教育委員会は十三名の教育委員全員で協議することをそれぞれ主張・発言し、議長が全教育委員で協議することをはかったところ、異論は出されず、協議は一応の成立を見ていることを政府は承知しているか。協議後、石垣市教育委員会及び与那国町教育委員会が協議を無効とする文書を発出しているが、これについて、三市町教育委員会の教育委員長が連名で「当教育委員会の議を経ておらず公務文書としての機能を有しない」とする文書を発出していることを承知しているか。
十 協議会の答申後、三市町教育委員会の採択結果が分かれた下で、慶田盛竹富町教育長が役員会による再協議を求めたのに対し、協議会会長の玉津石垣市教育長は「竹富町は違法な決定をした」「市教委としての採択をひっくり返すわけにはいかない」、崎原与那国町教育長は「答申通りではない教科書を採択した竹富町はルール違反だ」「与那国町はすでに意思決定している」と述べ(「沖縄タイムス」八月二十八日付)、現行教科書無償措置法の規定に従い、同一の教科書を採択することを求める沖縄県教育委員会の通知が出されるまで、再協議に否定的な考えを示していた。九月八日の協議の場においても、玉津教育長は「採択結果は曲げない」、崎原教育長は「多数決をしたら負けるからやらない」と述べ、同様の姿勢で臨んでいる。こうした両教育長の対応は、「採択地区内の市町村の教育委員会は、協議して種目ごとに同一の教科用図書を採択しなければならない」ことを定めた現行教科書無償措置法第十三条第四項に反するものと評価せざるを得ないが、政府の見解を示されたい。
十一 中川文部科学大臣が「協議は調っていないというふうに考えていかざるを得ない」との見解を示したことに対して、沖縄県の大城浩教育長は「これまで文科省の指導、助言を受け進めてきた。驚いている」と発言している(「沖縄タイムス」九月十四日付)。「ここではしごが外されるとは」との沖縄県教育庁関係者の発言も報じられている(「琉球新報」同日付)。八日の協議に至る過程で、文部科学省と沖縄県教育委員会との間で、どのようなやり取りがあったのか。一方、この見解が示された十三日、自民党の文部科学部会と日本の前途と歴史教育を考える議員の会の合同会議が開かれ、文部科学省の代表も出席している。会議の司会を務めた義家弘介参院議員のホームページによると、「文部科学部会として、『八重山採択地区協議会』の答申に基づき教科用図書を採択するように竹富町教育委員会を指導するよう、文部科学省に要請」したことを明らかにしているが、このような要請があったのか。

 右質問する。



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