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平成二十四年二月一日提出
質問第二八号

情報収集衛星の契約における三菱電機の過大請求に関する質問主意書

提出者  吉井英勝




情報収集衛星の契約における三菱電機の過大請求に関する質問主意書


 報道や三菱電機(株)の発表によれば、同社は防衛省から受注した地対空誘導弾の製造に関し実際の作業量を上回る人件費等を水増しして過大請求し、過大な金額の支払いを受けていたという。さらに同社の過大請求は、防衛省だけでなく情報収集衛星の契約に関して、内閣官房(内閣衛星情報センター)や(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)に対しても行われていたという。情報収集衛星については、「大規模災害への対応」を目的の一つとして導入しながら、東日本大震災や東京電力・福島第一原発事故という未曾有の大規模災害でも「安全保障」を盾に取り、その画像を一点たりとも国民の前に公開していない。導入以来、既に八千二百億円以上もの巨額の予算を投じながら、目的に掲げた活用実態を国民の前に全く公開しない問題等を指摘し、予算の浪費を続ける情報収集衛星の予算の執行停止を繰り返し求めてきたが、政府は計画どおり情報収集衛星を運用し後継機の開発を進めている。
 よって、次のとおり質問する。なお、金額は円単位で表記し、元号は使わず西暦で答えられたい。

(一) 現時点で判明している情報収集衛星に関する三菱電機の過大請求額は、内閣官房(内閣衛星情報センター)とJAXAにおいてそれぞれいくらか。また、現時点で判明している同社の防衛省に対する過大請求額はいくらか。
(二) 二〇一一年七月十一日提出の質問主意書の中で、情報収集衛星の予算計上の打ち切りができない理由を質したが、これに対する答弁書(内閣衆質一七七第三一五号)に「情報収集衛星の開発については、内閣衛星情報センターから、その委託を受けた事業者が、複数の事業者からの提案を受け、その技術や価格を総合的に評価した上で衛星の製造を請け負う事業者を選定する」とある。これまでに打ち上げた情報収集衛星(軌道投入に失敗したものを含む)と現在開発中のもののすべてについて、@内閣衛星情報センターから「委託を受けた事業者」、A提案を出した「複数の事業者」と「価格」、B「技術や価格を総合的に評価」する基準、C「衛星の製造を請け負う事業者」として「選定された事業者」とを明らかにされたい。また、右の契約の形態を何と呼ぶのか。
(三) 情報収集衛星の予算は内閣官房(内閣衛星情報センター)に計上されている。実際の契約と支出に関しては、他府省庁に支出委任があったり、JAXA等の独立行政法人に委託された後に委託先から再委託があったり、さらに再委託先から再々委託があったりと、契約や支出の状況は複雑である。情報収集衛星の導入から現在までの支出委任の状況、支出委任を受けた府省庁の委託先名称、委託先の再委託先名称、再委託先の再々委託先の名称を分かりやすく示されたい。
(四) 情報収集衛星の導入から現在までの、三菱電機への情報収集衛星に関する国の年度別支払額はいくらで、その総額はいくらか。
(五) 情報収集衛星の導入から現在までの、三菱電機への情報収集衛星に関する発注府省庁別、発注機関別の年度ごとの支払額はいくらで、その総額はそれぞれいくらか。
(六) 情報収集衛星の導入から現在までの、三菱電機へのJAXAの情報収集衛星に関する年度別支払額はいくらで、その総額はいくらか。
(七) JAXA以外にも(独)情報通信研究機構(NICT)も、三菱電機との間で随意契約により情報収集衛星に関する業務を行っているが、情報収集衛星の導入から現在までの、同社へのNICTの年度別支払額と、その総額はいくらか。
(八) (独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)も情報収集衛星に関する業務を行っていると思うが、情報収集衛星の導入から現在までの、三菱電機へのNEDOの年度別支払額と、その総額はいくらか。
(九) NICTやNEDOに対しては、三菱電機の過大請求と支払はなかったのか。あれば現時点で判明している額はいくらか。この二つの独立行政法人への同社の過大請求も調査する必要があるのではないか。調査を行わないとすれば、その理由を示されたい。
(十) かつて日本電気(株)(NEC)は防衛庁(当時)に対し、装備品契約をめぐり過大請求を行っていた。同社の過大請求の事案は具体的にどのようなもので、過大請求額はいくらだったか。
 また、NEC以外にも防衛省(防衛庁)の契約では過大請求があったが、これまでのすべての事案について、その具体的な内容と過大請求額とを明らかにされたい。
(十一) 受注企業が過大請求等の不当な金額を請求し、それに応じて不適正な支出が行われる背景には、発注者側の契約や会計処理が適正でない等、発注者側にも問題があると考えられる。防衛省、内閣衛星情報センター、JAXAにおいては適正な契約や会計処理が行われていると判断しているのか。
(十二) 防衛省(防衛庁)は、発注先から過大請求等の不正な行為がなされないよう、どのような方策をとっているのか。また、今回、三菱電機から過大請求が行われ請求どおりの支出が行われたのは、該当する方策に何らかの問題があったからではないか。防衛省の方策は十分であったと考えているのか。
(十三) 同様にJAXAにおいても、前身である宇宙開発事業団(NASDA)当時に、NECから水増しされた金額を請求されていたが、当該事案の具体的な内容と過大請求額はいくらだったか。また、三機関(NASDA・ISAS・NAL)統合の前を含めJAXAでは、NEC以外には過大請求はなかったのか。当該事案の具体的な内容と過大請求額とを明らかにされたい。
(十四) JAXAは発注先から過大請求等の不正な行為がなされないよう、どのような方策をとっているのか。また、今回、三菱電機からの過大請求が行われたのは、該当する方策に何らかの問題があったからではないのか。
(十五) JAXAは情報収集衛星に関する三菱電機との契約は、競争性のない契約、随意契約によって行っている。随意契約は、発注先が提示するいわゆる「言い値」になったり、談合の温床になったりする問題を抱えていると指摘されている。JAXAは、三菱電機をはじめ発注先が提示する金額が妥当なものであるか、どのようにして判断しているのか。
(十六) JAXAの資料によると、JAXAは随意契約の際に予定価格を設けていないとなっているが、予定価格を設けない理由は何か。随意契約であっても予定価格と、それを決定するための設計価格に相当するものを設けるべきではないのか。
(十七) JAXAは日本の宇宙開発の主要な実施機関として、情報収集衛星以外にも様々な人工衛星やロケット等の研究や開発を進めている。三菱電機はJAXAから数多くの案件を受注しており、情報収集衛星以外のすべての契約も含めて同社からの過大請求がなかったか調査を行うことが必要と考えるが、同社とのすべての契約を対象として調査を行うのか。行わないのであれば、その理由も示されたい。
(十八) 今般の三菱電機の水増し過大請求に伴い、内閣衛星情報センターは同社に対し指名停止の措置を取り、JAXAは同社に対し競争参加資格の停止を行っている。これらの措置の期間は、それぞれいつまでか。また、その期間は何を根拠に決めたものか。
(十九) 三菱電機に対する措置は、内閣衛星情報センターは指名停止、JAXAは競争参加資格の停止だが、これらの措置の目的は何か。
(二十) 内閣官房が提出した資料によれば、情報収集衛星に関して内閣衛星情報センターが三菱電機に発注した契約はすべて随意契約で、JAXAが同社に発注した契約もすべて随意契約というのが実態であり、指名競争を含め競争性のある契約はない。一般競争入札も指名競争入札もなく、実態は随意契約ばかりなのであるから、同社に対する今回の指名停止の措置と競争参加資格停止の措置は何の制裁的意味も持たないのではないのか。今回の措置では情報収集衛星に関しては、内閣衛星情報センターとJAXAは従来どおり三菱電機と随意契約によって契約を結ぶことが可能なのではないのか。また、同社に対し、他の実効性のある制裁措置をとることはできないのか。
(二十一) 受注企業が過大請求等の不当な金額を請求し、それに応じて不適正な支出が行われる背景には、退職者が業務上密接な関係があった企業等に再就職するいわゆる「天下り」があるともいわれている。政府が情報収集衛星の導入を決定してから現在まで、@防衛省、A内閣官房(内閣情報調査室と内閣衛星情報センター)、BJAXAに在籍し、三菱電機に再就職した者は、それぞれのべ何人いると把握しているか。また、同社からは、のべ何人いると聞いているか。
(二十二) 情報収集衛星の導入を決定してから現在まで、三菱電機の社員、あるいは社員であった者で、@防衛省、A内閣官房(内閣情報調査室と内閣衛星情報センター)、BJAXAに採用され、採用が終わった後に三菱電機社員になった者は、それぞれのべ何人いると把握しているか。また、同社からは、のべ何人いると聞いているか。
(二十三) 三菱電機の社員、あるいは社員であった者で、現在も@防衛省、A内閣官房(内閣情報調査室と内閣衛星情報センター)、BJAXAに採用されている者は、それぞれ何人で、どういうポストに就いていると把握しているか。また、同社からは、それぞれ何人で、どういうポストに就いていると聞いているか。
(二十四) 内閣官房(内閣衛星情報センター)は情報収集衛星に関し、今年度予算四次補正案において百六十四億八千九百万円の増額を行い、一次補正の四千六百万円と合わせて最終的に今年度予算を八百三十四億九千二百万円に増額しようとしている。当初予算の六百六十九億五千七百万円と比較して約百二十五%増の予算となる。四次補正の理由は、内閣衛星情報センターの説明によれば「今後、昨年のように電力使用制限が行われた場合、計画どおりの情報収集衛星の打ち上げが困難になり、工程を前倒しできるものは前倒しする。そのために必要な予算を増額する。」とのことであった。昨年、電力使用制限令が発動された際に、情報収集衛星を製造していた三菱電機鎌倉製作所をはじめ、開発や製造に当たっていた他の施設や事業所で、情報収集衛星の開発や製造工程にどの位の影響があったか。影響があったとすれば、それは予定していた工程のおよそどの位の割合で、予定工程と比較してどの位の遅れが生じたのか。
(二十五) 枝野幸男経済産業大臣は、一月二十七日、今年の夏の電力需給に関し電力使用制限令を発動せず、電力使用制限令によらず乗り切れる十分な可能性がある旨を述べた。電力使用制限令を発動することなく今夏を乗り切れるのであるから予定どおり工程を進めることができる。したがって補正予算を組む根拠がなくなるので、情報収集衛星予算の四次補正は必要ないのではないか。
(二十六) 「大規模災害への対応」を目的に掲げながら、「今後の情報収集活動に支障を及ぼす」という理由で、東日本大震災や福島第一原発事故という未曾有の大災害に際しても、政府は災害に対応する機関・組織や研究者等に衛星画像を全く公開せず、利用もさせていない。二〇一一年六月三十日提出の質問主意書と同年七月十一日に提出した質問主意書に対する答弁書(内閣衆質一七七第二八六号、内閣衆質一七七第三一五号)において、「情報収集衛星の画像情報については、情報収集衛星等に関する秘密について保全措置を講じている者以外の者には非公開としており、東日本大震災への対応を行うに当たり、当該保全措置を講じている者以外の者に対して衛星の画像を提供する必要があったことから、内閣衛星情報センターが、商用衛星の画像を購入した」と、福島第一原発の事故状況を写した衛星画像について日本の情報収集衛星の画像を公開せず、改めて別に米国の会社が保有する衛星の画像を約三千六百万円で購入したことが明らかとなっている。
 野田内閣は情報収集衛星について「その研究・開発は、安心・安全社会の実現に資するものであることから、「平成二十四年度予算の概算要求組替え基準について」に定める「日本再生重点化措置」の目的に合致する事業であり、また、「国民に広く裨益する事業」に該当すると考えている。」(二〇一一年十二月七日提出の質問主意書に対する答弁書(内閣衆質一七九第一二〇号))と、情報収集衛星が「日本再生」の目的に合致し、国民に広く役立ち助けになるものと、何の具体的な証拠や根拠を示さずに強弁している。
 情報収集衛星の導入目的の一つ「大規模災害への対応」について、具体的な利用実態を国民の前に全く説明しないまま、既に八千億円を超す予算を投じ、さらにこれからも毎年六百〜八百億円もの予算を投じ続けることは、その導入の目的から考えても予算の浪費の典型である。情報収集衛星の開発、製造の中心となっている三菱電機からの水増し過大請求の実態の全容を解明し、しかるべき対応をとることは当然である。衛星製造を受注した三菱電機によって過大請求という不正な行為が行われていたのであるから、過去における過大な支払い分はすべて同社に返還させるとともに情報収集衛星の予算執行を止め、それに関する予算は東日本大震災や福島第一原発事故への対応に充てるべきではないか。

 右質問する。



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