質問本文情報
平成二十四年六月四日提出質問第二七五号
市街化区域農地への「農地に準じた課税」に関する質問主意書
提出者 吉泉秀男
市街化区域農地への「農地に準じた課税」に関する質問主意書
市街化区域農地への固定資産税課税に関し、「地方税法の一部を改正する法律」(昭和四十六年法律第十一号)によって地方税法附則に第十九条の二と第十九条の三等が追加され、昭和四十七年度から「宅地並み課税」を導入することが決定された。しかし、四十七年度は議員立法で実施が延期された。翌昭和四十八年度は、第七十一国会に政府が提出した「地方税法の一部を改正する法律案」に対し、「宅地並み課税」実施を求めて自由民主党が修正案を提案し、それが可決された。この結果、いわゆる「三大都市圏の特定市の市街化区域農地」のうち、地価が高いA・B農地に限って附則第十九条の三が適用され、「宅地並み課税」が始まった。一方、「宅地並み課税」が導入されなかった市街化区域農地でも、附則第十九条の二で「宅地なみ評価」が行われたが、附則第十九条の三は適用されず、附則第十九条による農地としての課税が継続された。こうして「評価は宅地並みだが、農地として課税を行う」という、「農地に準じた課税」が誕生した。
その後、宅地並み課税の適用対象は拡大したが、市街化区域に「宅地並み課税」と「農地に準じた課税」が併存する構造は今日まで継続している。地方都市圏の市街化区域等で広く実施されている「農地に準じた課税」につき、以下の二点について質問する。
「農地に準じた課税」は、形の上では右のように昭和四十八年度に誕生した。しかし、当時は、地方税法附則第十九条が、農地への課税が昭和三十八年度分の課税標準額に基づく固定資産税額を超えないように調整していた。このため、「宅地並み評価」は課税に影響しなかったと考えられる。
「宅地並み評価」が課税に影響し始めるのは、「地方税法等の一部を改正する法律」(昭和五十一年法律第七号)によって附則第十九条が改正され、農地課税に「負担調整率」が登場した昭和五十一年度であると考えられるが、この点に関し事実確認を求める。
二 農地と住宅用地の税額比較について
市街化区域農地への課税強化は、「住宅難を解決するための地価対策」(昭和四十五年八月の地価対策閣僚協議会)と位置づけられている。このため、住宅用地への転用が想定されているようで、昭和四十八年度に開始された市街化区域農地への「宅地並み課税」では、同年に住宅用地に導入された課税標準特例(導入時は二分の一、後に三分の一に強化)と同じ扱いが行われた。「農地に準じた課税」についても、後にこの特例が導入されている。
しかし、異なる点もある。住宅用地では、翌四十九年度に、住宅一戸あたり二百平方メートルまでの負担をさらに半減する「小規模住宅用地」特例が登場する。一方、市街化区域農地には、現在に至るまでこれに対応する施策が施されていない。
平成二十二年度の総務省資料によると、全国の住宅用地地積の約六割が小規模住宅用地であり、宅地細分化が進行している市街化区域では、より比率が高いと思われる。そこで、市街化区域農地を住宅用地に転用する場合を考える。農地の間は造成費相当額が控除されているため、評価(決定価格)は転用で若干高くなると考えられる。しかし、住宅用地になると、小規模住宅用地の特例が適用される。
実際の税額は、特例適用の後、前年の負担水準に応じて課税標準額をさらに軽減した額に対して算出される。「農地に準じた課税」を全体的に見ると、現在は住宅用地より負担水準が低めの傾向がある。しかし、負担水準は年々上昇している。平成二十二年度の負担水準が一.〇以上(いわゆる本則課税)の比率を地積ベースで計算すると、「農地に準じた課税」では田が四十四パーセント、畑が二十パーセントである。小規模住宅用地は三十二パーセント、住宅用地は三十三パーセントが本則課税なので、「農地に準じた課税」の負担水準が極端に低いとは言えない。いずれ「本則課税」に達して負担水準の違いがなくなるはずで、小規模住宅用地に相当する軽減がない農地の方が、同じ用地に課せられる固定資産税額が高くなるものと考えられる。
そこで、決定価格と造成費相当額が平均的な「農地に準じた課税」の農地を住宅用地に転用した場合、税額がどの程度増加すると考えられるかを質問する。もちろん、負担水準はいずれも本則課税で、転用の影響を受けないものと仮定する。まず、最も単純な、前面道路に変化がなく、一筆の農地がそのまま一筆の住宅用地となり、全てが小規模住宅用地である場合について、税額の変化を示していただきたい。ただ、実際には、転用時に区画が分割されたり、公共用地が提供される場合もあると思われる。そこで、追加的にどのような状況が生じることが多く、それがどう影響するかについても、説明を求める。
右質問する。