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平成二十四年七月九日提出
質問第三三一号

私的さい帯血バンクの実態に関する質問主意書

提出者  阿部知子




私的さい帯血バンクの実態に関する質問主意書


 昨年三月十一日の東日本大震災を引き金に起きた福島第一原発事故はいまだ収束せず、被ばくによる白血病等の発症への不安を背景として、骨髄、末梢血、さい帯血など造血幹細胞の移植医療への関心が高まっている。また、今後発展が期待される再生医療の貴重な資源として、とりわけ間葉系幹細胞を含むさい帯血が再び注目を集めている。
 白血病に代表される血液疾患に対する根本的治療法である造血幹細胞移植医療は、「移植を希望するすべての患者に公平かつ適正に移植医療を提供するために相互に助け合う」という理念に基づき、日本骨髄バンク(一九九一年十二月設立)や日本さい帯血バンクネットワーク(一九九九年八月設立)が、政府の財政支援のもと公的事業として行われており、国民の善意と無償のドネーションにより担われてきている。
 公的さい帯血バンク事業は、全国的に統一的運営を確保するため日本さい帯血バンクネットワークを組織し、国の財政支援のもとに臍帯血の安全性と品質の確保を図るため一定の保管基準に従って、現在全国八か所の各地のさい帯血バンクが設置運営されている。
 一方、私的さい帯血バンクとは、いわゆる「さい帯血プライベートバンク」として、新生児本人や家族の将来の病気や事故に備え、有償でさい帯血の保存を目的とする民間企業である。
 二〇〇九年、私的さい帯血バンクの一つ、「つくばブレーンズ」(茨城県)が、裁判所から破産手続きの開始決定を受けた。約千五百人分のさい帯血を保管していたとされるが、破産時にはID番号が記載されていないなど、保管状態や関連書類の不備などにより所有者が特定できないさい帯血もあり、債権者集会で問題となった経緯がある。
 以下、私的さい帯血バンクについて質問する。

一 今回破たんした「つくばブレーンズ」のような、民間によるさい帯血プライベートバンクの実態は未だ明らかではない。現在国内に何社あり、その経営実態はどのように把握されているのか。
二 私的さい帯血バンクが保管しているさい帯血は現在何件あるか。企業ごとに示されたい。
三 白血病などの発生率は十万人に数人とされ、そのうち移植が必要な患者は二〜三割とされている(二〇〇二、八、二三さい帯血バンクネットワーク)。つまり、移植が必要となるのは十万人に一人程度ということである。
  私的バンクに保管されたさい帯血のうち、実際に治療に使われたケースはこれまで何件あるか。対象疾病ごとに示されたい。
四 「つくばブレーンズ」の経営破たんにより、保管されていたさい帯血は所有者と他の民間バンクの間で新たに契約が交わされ移管されたというが、所有者の不明なさい帯血は何件あり、現在どのように管理されているのか。
五 私的さい帯血バンクは、財務状況や経理の公開が義務付けられていないため、所有権者にとって経営破たん等によるリスク回避は事実上不可能である。また、幹細胞の分離方法や凍結保管体制の基準が統一されておらず、いざという時に移植に使用できない可能性等、技術的な問題点が指摘(日本造血細胞移植学会他)されていることから、採取・保管の質の担保が不可欠である。まず実態調査を行った上で何らかの規制を検討すべきであると思われるが、見解を問う。
六 アメリカ血液骨髄移植学会では声明の中で、「新生児本人の使用を目的としての、個人向け臍帯血保管は原則として勧められない」としている(二〇〇八、二、一)。イギリス王立産婦人科学会ではガイドラインの中で「あらかじめわかっていない本人または家族の疾病の治療を目的としてプライベートバンクで臍帯血を保存することの有益性には未だ確信が持てない」とし、「各々の病院はプライベートバンク利用目的でさい帯血を採取することについて方針を明らかにすべきである」(二〇〇六、一、八)としている。
  これらの世界の動向をどう認識しているか。
七 私的さい帯血バンクの保管料は二十万円から三十万円とされ、治療費を含めると選択できる患者は一部に限られる。これは、国民すべてが等しく医療の恩恵を受けられるようにとする「国民皆保険制度」の理念に反するばかりでなく、営利に利用されることにより公的バンクの存在意義そのものを脅かしかねないことについて、見解を問う。

 右質問する。



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