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平成二十四年七月九日提出
質問第三三三号

利根川の実績流量に関する質問主意書

提出者  中島政希




利根川の実績流量に関する質問主意書


 利根川水系河川整備基本方針が定める八斗島地点の基本高水流量毎秒二二〇〇〇m3に科学的な疑問が投げかけられている。平成二十三年一月に国土交通省は日本学術会議に基本高水流量の検証を依頼し、同年九月に日本学術会議が国土交通省に妥当との回答を行ったが、基本的な疑問は残されたままである。たとえば、基本高水流量は昭和二十二年九月洪水の再現計算から求められたものであるが、同洪水の実績流量は公表値でも毎秒一七〇〇〇m3とされており、その乖離の理由を日本学術会議は解明できないままで終わっている。問題は再現計算に使う洪水流出計算モデルがどこまで科学性を有しているかである。洪水流出計算モデルの係数は過去の洪水の実績流量を再現できるように設定されるものである。
 ところが、国土交通省が洪水流出計算モデルの構築に用いるべき過去の洪水の実績流量は複数あり、何れが正しいのか不明である。これでは、現実に適合した洪水流出計算モデルを構築することができないと考えざるを得ない。
 右について、以下質問する。

一 「流量年表」による利根川・八斗島地点の最大流量について
 利根川の八斗島地点の最大実績流量は毎年の「流量年表」(国土交通省河川局、日本河川協会発行)に記されている。洪水流出モデルの構築に用いた過去の洪水について、その最大流量を「流量年表」から拾うと、次のとおりである。なお、昭和五十七年八月二日洪水は国土交通省の水文水質データベースによる値である。
 昭和三十三年九月十八日洪水 八七三〇m3/秒
 昭和三十四年八月十四日洪水 八二八〇m3/秒
 昭和五十六年八月二十三日洪水 七六九〇m3/秒
 昭和五十七年八月二日洪水 七九九〇m3/秒
 昭和五十七年九月十三日洪水 八一九〇m3/秒
 平成十年九月十六日洪水 九二二〇m3/秒
 平成十一年八月十四日洪水 五二〇〇m3/秒
 平成十三年九月十日洪水 六七八〇m3/秒
 平成十四年七月十一日洪水 五九七〇m3/秒
 平成十九年九月七日洪水 七七六〇m3/秒
 1 この値が相違ないか、明らかにされたい。
 2 1について、もし相違があれば、正しい値を示されたい。
二 国土交通省が日本学術会議に提出した資料の流量について
 一方、国土交通省が日本学術会議に提出した資料によれば、上記の各洪水の利根川・八斗島地点の最大実績流量(H−Q図)は次のとおりである。
 昭和三十三年九月十八日洪水 九五〇四m3/秒
 昭和三十四年八月十四日洪水 八七〇一m3/秒
 昭和五十六年八月二十三日洪水 七一六四m3/秒
 昭和五十七年八月二日洪水 八二二〇m3/秒
 昭和五十七年九月十三日洪水 八〇〇五m3/秒
 平成十年九月十六日洪水 九七一〇m3/秒
 平成十一年八月十四日洪水 五五〇七m3/秒
 平成十三年九月十日洪水 六五五七m3/秒
 平成十四年七月十一日洪水 五九八〇m3/秒
 平成十九年九月七日洪水 八一二六m3/秒
 1 この値が相違ないか、明らかにされたい。
 2 1について、もし相違があれば、正しい値を示されたい。
三 「流量年表」と日本学術会議への提出資料の流量の違いについて
 1 流量値の違いの理由について
  上記の「流量年表」と日本学術会議への提出資料の各洪水の最大流量を比べると、それぞれ数字が異なっており、大きな差が見られるものもある。たとえば、昭和三十三年九月十八日洪水は前者では八七三〇m3/秒であるが、後者では九五〇四m3/秒であり、約八〇〇m3/秒の差がある。また、平成十年九月十六日洪水は前者では九二二〇m3/秒であるが、後者では九七一〇m3/秒で、約五〇〇m3/秒の差がある。
  @ 「流量年表」と日本学術会議への提出資料の各洪水の最大流量に、このような大きな差があるのは何故か、その理由を説明されたい。
  A 「流量年表」と日本学術会議への提出資料の各洪水の最大流量では、どちらの値が正しいか、明らかにされたい。
 2 流量値の是正方法について
  「流量年表」と日本学術会議への提出資料の各洪水の最大流量は、本来は同じ値でなければならない。大きな差があるということはどちらかの公表値が誤っていることを意味しており、どちらかを是正しなければならないと考える。どのような是正措置をとるのか、説明されたい。
四 実績流量の違いが基本高水流量の計算結果に及ぼす影響について
 上述のように、「流量年表」と日本学術会議への提出資料とでは、昭和三十三年九月十八日洪水は約八〇〇m3/秒、平成十年九月十六日洪水では約五〇〇m3/秒の差がある。基本高水流量を求める洪水流出計算モデルの構築においてこの差が意味するところは重大である。
 この洪水流出モデルは最大一〇〇〇〇m3/秒以下の洪水の実績流量に合わせるようにつくり、そのモデルに二〇〇年に一回規模の雨量を入れて引き伸ばし計算を行って、二〇〇〇〇m3/秒程度の最大流量を求めるものである。したがって、モデルの構築に使う実績流量が五〇〇〜八〇〇m3/秒も違えば、引き伸ばし後の最大流量の計算値にはその二倍、一〇〇〇〜一六〇〇m3/秒程度の差が生じる可能性がある。
 このことを踏まえれば、日本学術会議への提出資料より小さい「流量年表」の実績流量を使って洪水流出モデルをつくっていれば、日本学術会議に国土交通省が報告した基本高水流量の計算値は大幅に下方修正されていたと考えられる。このことに関して政府の見解を説明されたい。
五 ダム戻し流量について
 一と二で示した利根川・八斗島地点の最大流量は八斗島地点を通過した流量である。国土交通省はこの通過流量以外に、上流ダム群の洪水調節で削減された流量を通過流量に加算した値、いわゆるダム戻し流量も示している。関東地方整備局の資料によれば、上記各洪水の利根川・八斗島地点のダム戻し最大流量は次のとおりである。その一部は利根川水系河川整備基本方針の「基本高水等の資料」にも概数が記されている。
 昭和三十三年九月十八日洪水 九二五一m3/秒
 昭和三十四年八月十四日洪水 八三三〇m3/秒
 昭和五十六年八月二十三日洪水 八二七七m3/秒
 昭和五十七年八月二日洪水 九一〇二m3/秒
 昭和五十七年九月十三日洪水 八四〇〇m3/秒
 平成十年九月十六日洪水 九九五八m3/秒
 平成十一年八月十四日洪水 六一七四m3/秒
 平成十三年九月十日洪水 六七八五m3/秒
 平成十四年七月十一日洪水 五九八二m3/秒
 1 ダム戻し流量について、この値が相違ないか、明らかにされたい。
 2 1について、もし相違があれば、正しい値を示されたい。
 3 平成十九年九月七日洪水の利根川・八斗島地点のダム戻し最大流量を示されたい。
六 関東地方整備局の意見募集資料の数字とダム戻し流量との差異について
 関東地方整備局は平成二十四年五月二十五日に「利根川・江戸川において今後二〇〜三〇年間で目指す安全の水準に対する意見募集の実施について」を発表した。その参考資料の四ページに次のように記されている。
 「平成十年九月洪水では、台風五号が関東地方に上陸し、前線の影響もあり大雨になりました。八斗島地点の年超過確率で示すと約二十分の一の洪水(一〇五九〇m3/s※)となりました。
 ※八斗島の実績流量(H−Q図)に上流ダム群による基準地点八斗島の効果量を流出計算モデルにより推定して加えた値。」
 これは五で述べたダム戻し流量を意味している。平成十年九月洪水の八斗島地点のダム戻し流量の公表値は九九五八m3/秒であるにもかかわらず、平成二十四年五月二十五日の発表資料では一〇五九〇m3/秒で、約六〇〇m3/秒も増えている。
 平成二十四年五月二十五日の発表資料において、平成十年九月洪水の八斗島地点のダム戻し流量が何故約六〇〇m3/秒も増えたのか、その理由を説明されたい。

 右質問する。



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