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平成二十四年七月二十三日提出
質問第三五〇号

私的さい帯血バンクの実態に関する再質問主意書

提出者  阿部知子




私的さい帯血バンクの実態に関する再質問主意書


 前回答弁書(内閣衆質百八十第三百三十一号。以下、答弁書という)により、私的さい帯血バンクの現時点における数、経営実態、保管しているさい帯血の数、実際に治療に使われたケースの件数などについて、厚生労働省は一切把握していないことが明らかになった。
 これを踏まえ、以下質問する。

一 私的さい帯血バンクの実態把握について
 (一) 平成二十一年十二月二十二日の閣議後の記者会見において、当時の長妻厚生労働大臣は記者の質問に対し、以下のように述べている。
  (記者)
  民間のさい帯血バンクについてですが、先日茨城の方で民間バンクが破綻し千五百人分のさい帯血が、行き場を失ってしまったという報道があったのですが、こうした民間バンクについて参入の規制がないので、誰でも参入出来てしまうということで、ハードルが非常に低いということがあるようですが、そうした規制の要不要について大臣のお考えをお聞かせください。
  (大臣)
  民間バンクについて、今まできちんとした統計がなされていないと考えておりますので、全国の民間バンクについてまずは具体的にどういう件数で、どういうお仕事をされていてということをさらに詳細に把握をして、その件を含めて対応を考えて行きたいと本日指示して行きたいと思います。(厚生労働省HPより、引用終わり)
  長妻大臣の指示は、明確に「民間バンクの件数」と「業務内容」について詳細に調査把握せよと理解できる。この指示により厚生労働省は、翌二十二年一月二十五日付で健康局疾病対策課臓器移植対策室長発出事務連絡により、全国六百五十の産科施設を対象に調査票(別添)をファクスで送信し、同年二月十日までに回答を求めている。
  しかしこの調査票は、「潟Xテムセル研究所、潟Vービーシー、潟Aイウィル又は潟Aイル、つくばブレーンズ鰍フ四社以外のプライベートバンク」を知っているか否かについて、「はい・いいえ」の二者択一で問い、はいと回答した場合は名称を記入せよ、というだけのものである。
  たったこれだけの調査項目で、大臣指示にある民間バンクの現状について「詳細に把握」することは可能だったのか。この調査により把握されたことをすべて示されたい。
 (二) 大臣指示に対し、前出の調査結果はどのようにまとめられ報告されたのか、報告書を公表されたい。またその結果に基づき、現在までどのような対策が取られたのか、時系列で詳細に示されたい。
 (三) 答弁書「一から四までについて」では、「厚生労働省が平成二十二年一月時点において把握していた国内のプライベートバンクの数は御指摘のつくばブレーンズ株式会社を含め四社である」と記されているが、前出の調査票の回答期限は平成二十二年二月十日である。なぜ平成二十二年一月時点で把握が可能だったのか。その根拠を示されたい。
 (四) 当時すでに、私的さい帯血バンクの業界団体として「民間さい帯血バンク連絡協議会」が平成二十一年一月に組織されており、つくばブレーンズを含む四社が加盟していたが、同会への調査は行われたのか。していないとすればなぜか。
二 私的さい帯血バンクに対する規制の必要性について
 (一) 答弁書「五について」は、「現時点においてプライベートバンクに対する規制が必要であるとは考えていないが、関係学会等に対して、さい帯血移植を行う際には、安全かつ有効に実施するよう重ねて要請していきたい」と述べている。しかし、これは所管省庁としての責任を棚上げして、関係学会や採取医療機関へ転嫁するものである。
  すでに日本造血幹細胞移植学会は会長名で発出した平成十四年八月十九日付声明文で、私的さい帯血バンクに関して「技術の適格性に疑問があり、実効性が未確定の用途を含んだ誇大宣伝を行っていることに強い懸念を表明する」とし、「厚生労働省は速やかに事実関係を調査し、国民の健康を守るためにしかるべき対応をとるべき」と述べている。(平成二十一年二月六日付文書により、学会の見解は当面この声明と変わらない旨確認されている)
  また、日本産婦人科医会母子保健部は平成二十二年二月に会員にあてた文書で「さい帯血プライベートバンクの場合、不祥事や企業の破たんが発生した場合に、産婦人科医に道義的責任を求められることが危惧される」とし、「採取に産婦人科医が主体的に関わることから、日本産婦人科医会は会員と妊産婦を守る立場より、さい帯血バンクに高い水準を求める」と述べ、以下の三点について国に要望したとされている。
  @認可・設立基準の制定
  A品質保証期間と情報開示
  B経理状況と価格設定の透明化
  これら、日本造血幹細胞移植学会の声明文および、日本産婦人科医会の見解と要望について、それぞれにどのように対応したのか、明らかにされたい。
 (二) つくばブレーンズの経営破たんに伴い、同社のずさんな管理が原因で自己のさい帯血が特定できなくなるなど、所有権者に現実に被害が発生していることについて、責任の所在はどこにあると認識しているのか。また、被害実態の詳細な調査はなされたのか。具体的に示されたい。
 (三) 十年〜二十年にわたる長期の保管事業を民間の私的バンクが担うには、経営破たんなどの危機管理体制が不可欠である。所管省庁として再発防止に向けた取り組みはなされたのか。具体的に示されたい。
三 人体細胞・組織・臓器の流通に関する国際的な動向を踏まえて
 (一) 近年、遺体から採取された皮膚や骨、腱などの組織を、歯科のインプラントや美容形成などの原材料として使用する需要が国際的に高まっているが、無断採取や出所不明の遺体からの採取も横行しており、感染症の危険性が指摘されているという(二〇一二.七.十九朝日新聞)。
  こうした国際的な動向を背景として、WHOが、移植や医薬品製造に利用する人体組織に世界共通のコード番号を付ける制度を検討している。共通コードをすでに使用している血液事業を参考に、五年後のスタートを目指すという(二〇一二.七.二十朝日新聞)。
  WHOの方針は、骨髄や末梢血、さい帯血などの造血幹細胞を含め、人体組織に由来する医療材料については、採取から保管・提供・利用に至るまでのトータルな流通管理によって安全性を担保すべきことがすでに世界の共通認識であることを示している。
  営利目的の私的さい帯血バンクの破たんによる被害調査もせず、いまだに規制の対象外として放置していることは論外であり、これらの潮流に相反しないか。
 (二) 公的さい帯血バンクネットワークにおいて、現在共通コードを使用しているところはあるか。また、その必要性についてはどのように認識しているのか。
 (三) さい帯血から作成されたiPS細胞は品質が良いため、公的さい帯血バンクから医療機関に公開しないさい帯血を提供し、研究用にストックしておこうという計画が進んでいると聞く(二〇一二.七.十八厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞移植委員会)。
  医療技術の発展に資する研究への提供を否定するものではないが、厳格なルールの下になされることが前提条件である。採取時の本人への説明とは異なる目的で使用することについて、最低でも提供者への再度のインフォームド・コンセントが必要ではないか。
 (四) 提供者の遺伝情報までが材料や資源、ひいては商品となる時代にあって、業界や研究者の「良心」に委ねているだけでは人体組織の無断採取や無断利用はなくならない。医療技術の進歩は必要だが、一方で合理的な規制やルールで提供者を守り、安全性を担保することが、国際化した医療市場において最も重要であり、人間の尊厳を守ることに繋がるのではないか。見解を問う。

 右質問する。



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