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平成二十四年九月五日提出
質問第四〇九号

原子力規制委員会委員長及び委員の欠格要件に関する質問主意書

提出者  服部良一




原子力規制委員会委員長及び委員の欠格要件に関する質問主意書


 原子力規制委員会委員長及び委員の人事案については、本年七月二十六日に内閣が国会に提示し、八月二十四日に同意を得たい旨の要求書を送付したところであるが、当初より、複数の候補者が法律及び政府指針に定める欠格要件に該当するとの指摘があり、政府の欠格要件の解釈そのものにも疑義が示されている。本件については、本院議院運営委員会理事会等で提起してきたところであるが、未だ政府より合理的な説明を得ていない。よって、以下質問する。

一 原子力規制委員会設置法(以下、「設置法」という。)は、「原子力に係る製錬、加工、貯蔵、再処理若しくは廃棄の事業を行う者、原子炉を設置する者、外国原子力船を本邦の水域に立ち入らせる者若しくは核原料物質若しくは核燃料物質の使用を行う者又はこれらの者が法人であるときはその役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)若しくはこれらの者の使用人その他の従業者」(第七条第七項第三号)及び第七条第七項第三号「に掲げる者の団体の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)又は使用人その他の従業者」(同第四号)は委員長又は委員となることができないと定めている。政府はこの設置法上の欠格要件に係り、「更田豊志(ふけたとよし)氏が所属している独立行政法人日本原子力研究開発機構(JAEA)が該当しますが、同氏は委員に就任するに当たり、JAEAを辞職することとしておられるので、同法に違反することはありません」(内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室「「原子力規制委員会委員長及び委員の同意人事に関する申入れ」について」平成二十四年八月二十四日。以下、「八月二十四日付文書」という。)としている。設置法第七条第七項第三号又は第四号に現に該当する者であっても、就任に当たって当該職を辞するのであれば違反にはならないとの論は設置法の立法趣旨に照らして疑義があるが、このような政府の解釈はいかなる理由により妥当とされるのか。
 2 政府は、同じく委員候補である中村佳代子氏が所属している日本アイソトープ協会は設置法上の欠格要件に係る事業者ではないとしているが(八月二十四日付文書)、同協会は「原子力に係る廃棄の事業を行う者」に該当するとの指摘もある。政府が同協会が設置法上の欠格要件に係る事業者でないとする根拠を示されたい。
 3 委員長候補である田中俊一氏が所属する高度情報科学技術研究機構(以下、「高度機構」という。)は事業収入の約七割を日本原子力研究開発機構(以下、「原子力機構」という。)から得ており(平成二十三年度実績)、原子力機構は高度機構を「関係法人」であるとしている。この事実に鑑みれば、高度機構は設置法上の欠格要件に係る事業者であるとみなすべきであると思われるが、政府の見解はいかがか、その根拠と併せて示されたい。
二 政府は本年七月三日「原子力規制委員会委員長及び委員の要件について」(以下、「政府指針」という。)を公表し、「法律上の欠格要件に加えて欠格要件とする事項」として「就任前直近3年間に、原子力事業者等及びその団体の役員、従業者等であった者」を欠格要件とするとした。本文書において「原子力事業者等」の定義に係る記述は皆無である。この政府指針は、国会審議において、設置法の欠格要件が現に該当職にある者のみを対象としていることに対して、過去にその職にあった者も対象としなければ、「原子力に係る利用と規制の分離」、「原子力ムラとの決別」といった設置法の立法趣旨が果たされないとの共通理解が得られたことを受けて公表されたものである。この政府指針の内容に係り、例えば、本年六月十九日の参議院環境委員会では、水野賢一委員の「法案の七条にもいろいろと書いてあることというのは、つまり原子力関係者たちは駄目よみたいなことは確かに書いてあるんですけど、これを見ると、法文だけ見ると現在のことのように見えるんですけど、これは現在だけじゃなくて過去もそれに準ずるという、法文上は現在だけのことを書いているように見えるけれども、過去も準ずるという理解でよろしいんでしょうか」との質問に対し、近藤昭一衆議院議員は「準ずるということでございます」と答弁している。そこで、政府指針は立法意思に則して定められ、かつ解釈されるべきところ、まず、政府指針で欠格要件の対象期間を「就任前直近3年間」と限定したことにいかなる根拠があるのか、政府の認識を示されたい。
 2 政府指針の「原子力事業者等」については、前述の通り定義に係る記述がなく、「法律上の欠格要件に加えて欠格要件とする事項」として示されていることからも、設置法第七条第七項第三号を指示していると解釈する他ないが、仮に別様の解釈の余地があるとするならばそれはいかなる根拠に基づくのか。政策論ではなく、純粋に論理的解釈の問題として答えられたい。
 3 設置法第七条第七項第三号には「原子力事業者(等)」という記述はないが、本法が直接関係する原子炉等規制法では、第五十八条第一項において「製錬事業者、加工事業者、原子炉設置者、外国原子力船運航者、使用済燃料貯蔵事業者、再処理事業者、廃棄事業者及び使用者(旧製錬事業者等、旧加工事業者等、旧原子炉設置者等、旧使用済燃料貯蔵事業者等、旧再処理事業者等、旧廃棄事業者等及び旧使用者等を含む。以下「原子力事業者等」という。)」として「原子力事業者等」が定義されている。政府指針において「原子力事業者等」の別の定義なり注釈なりが示されていない以上、既存のかつ基本的な法律である原子炉等規制法と矛盾し又はこれより限定して「原子力事業者等」を解釈することは当然に排除されるが、仮にそうでないとするならばそれはいかなる根拠に基づくのか。前項同様、純粋に論理的解釈の問題として答えられたい。なお、設置法第七条第七項第三号が原子炉等規制法に基づくものであることは明白であり、このことからも前項で示した通り、政府指針の「原子力事業者等」が設置法第七条第七項第三号を指示しているとの解釈が支持されると考えるが、異論があるのであれば、併せて答えられたい。
 4 政府は、政府指針の「原子力事業者等」に係る私の照会に対して、政府指針の欠格要件は「委員長及び委員が電力事業者から距離を置くことを確保するため」であり、「電力会社や原子力設備のメーカーなどの営利企業を想定して」いると回答した(二〇一二年七月二十七日付回答文書)。八月二十四日付文書でも「電力会社から距離を置くことを確保する」趣旨から、「電力会社を主として想定し、これに加えて、原子炉等を有していない電力会社の影響が強い電力会社の子会社、原子炉設備メーカー等も含めています」としている。政府はこのような「想定」あるいは「趣旨」に照らして、原子力機構等の独立行政法人、日本アイソトープ協会等の公益社団法人、又は大学は政府指針にいう「原子力事業者等」には該当しないとしている。しかしながら、前述の通り、政府指針では「原子力事業者等」の定義が示されていないだけでなく、ここで引用したような「想定」又は「趣旨」には一切言及されていない。同様に、政府指針を公表した細野担当大臣の記者会見でも言及は皆無であった。そうであるならば、このような「想定」又は「趣旨」は無効であり、仮に有効であるとするならば、政府指針を遡及的に修正するものであるとの誹りは免れない。仮に政府が、政府指針でも細野大臣の記者会見でも言及のなかった「想定」又は「趣旨」が有効であると主張するのであれば、その正当性を明示されたい。
 5 同様に、国会審議においても、前述の通り、政府指針で定めるべき欠格要件は設置法に「準ずる」とされていたのであり、「電力事業者(電力会社)」への言及がなかったことをはじめ、前項のような「想定」又は「趣旨」に限定することを求める質疑及び答弁は皆無であった。よって、政府が現在示している政府指針の解釈は立法意思に反することは明らかであるが、政府の解釈はいかなる根拠により正当化されるのか示されたい。
三 政府は八月二十四日付文書で「仮に政府の候補者要件における「原子力事業者等」を原子炉等規制法と同様に考えますと、JAEAのみならず、東京大学、京都大学をはじめとする原子炉を有する原子力の研究組織が全て含まれることとなり、原子力の実践的・専門的知見を有する研究者を原子力規制委員会の委員長・委員とする道が閉ざされることとなってしまいます」とし、細野大臣の国会答弁や記者会見等でも同様の主張が繰り返されている。しかしながら、この回答に論理的正当性がないことは前問までで明らかである。仮に政府がこれらの研究組織を欠格要件の対象としないことが望ましいと考えていたのであれば、その旨を明示し公開の議論に付すべきであったのではないか。もとより、政府指針は立法意思に係るものであるのだから、改めて国会の意思を問うべきであった。逆に、設置法の欠格要件では対象となっていない電力会社子会社及び原子力設備メーカーを政府指針で欠格要件に追加することについては、立法意思に照らして許容されると考えられるが、政府指針に記述がなかった以上、政府指針の欠格要件に該当するとの解釈が不当であるとの異議が申し立てられた場合に対抗できない可能性がある。仮に政府が、政府指針の「原子力事業者等」の解釈を設置法第七条第七項第三号又は原子炉等規制法と同一とすることに問題があると考えるのであれば、政府指針は撤回し、国会での議論を経て、改めて指針を定めるべきでないか。その際には、設置法を改正し、法律上欠格要件を追加することが望ましいのではないか。以上につき、政府の見解を求める。

 右質問する。



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