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平成二十四年十一月十六日提出質問第五〇号
妊娠適齢期についての教育及び若い時期に女性が働きながら産み・育てることができる社会基盤の欠如に関する質問主意書
妊娠適齢期についての教育及び若い時期に女性が働きながら産み・育てることができる社会基盤の欠如に関する質問主意書
最近のライフスタイルの変化に伴い、晩婚化・晩産化が進んでいる。厚生労働省の人口動態統計によると、平成二十三年の女性の平均初婚年齢は二十九・〇歳、また平均初産年齢は三十・一歳となり、二十年前に比較し、約三歳高齢化している。
しかし、自然タイミングによる妊孕性(妊娠する能力)は二十歳代後半より低下することが明らかになっている(Human Reproduction17:1399-1403,2002)。また周産期死亡率も母体年齢が二十五歳から二十九歳で最も低く、母体の年齢とともに死亡率は高くなる(厚生労働省「平成二十三年人口動態統計」)。さらにダウン症の発生率も母体の年齢とともに上昇し、母体が二十六歳では千百七十六人に一人であるのが、三十四歳では五百人に一人、四十歳では百六人に一人となる(Obstetrics and Gynecology 58:282-285,1981)。
このように、妊娠しやすく、妊娠後の経過も安全な妊娠適齢期は二十歳代中ごろといえるが、現代社会のライフスタイルの変化は、この適齢時期を逸脱した妊娠を増加させ、さらに高齢化に向かっている。
これは、我が国において、人の「卵子の成り立ちや老化」や「妊娠適齢期」の教育が、生物、理科、保健体育などの学校教育できちんと取り上げられておらず、これらの生理学的な事実の教育(妊活=妊娠の知識を活かす授業)がなされていないことに起因する。女性の社会進出が進み、共働き家庭が標準家庭となってきているにもかかわらず、若い時期に女性が働きながら産み、育てることができる社会基盤が整っていないこと、さらに男女に対し「共働き時代の家族形成を考える教育」がなされていないことも大きな要因である。
また、様々な両立支援策が講じられているにもかかわらず、この二十年間、第一子出生一年後で、仕事を継続できている女性は二十数%という数字は変わっていない。現状として「子どもか仕事か」の二者択一が迫られている。「中流男性の没落」が進み、「中流家庭」を男性一人の働きとパート主婦という構造では支えられない時代になりつつあるにもかかわらず、まだまだ「働きながら産み育てること」が困難な状況にあると言える。この「社会的不妊」から産むことを先延ばしし、加齢によって身体的不妊につながるという構図がある。このような状況から、女性が働き、産み、育てられるライフプラン及び女性の「稼得意識」を育てる教育が必要と考えるが、「男性も家事・育児を担うべきと学んだ」女性は若い世代で増えている一方、「女性も生活費を稼ぐべきと学んだ」女性はいまだ少ない(女性のワーク・ライフ・バランスに関する調査/お茶の水女子大学)。
従って次の事項について質問する。
二 中学、高校等の学校における保健体育の教科書は、少子化問題が叫ばれるようになった今日においても、「性病予防」と「避妊」が主体で、「卵子の成り立ちや老化」や「妊娠適齢期」などについて書かれていないのはなぜか、その理由を明らかにされたい。
三 中学、高校等の学校における保健体育の授業については、長年にわたって各自治体や教育委員会の方針に任せられ、国の指導が全くなされていない。そのことが、今日の妊娠知識の低下と、晩産化、ひいては少子化の一因となっていると考える。今後、生物学的な妊娠知識を向上させるため、中学、高校等の学校の「保健体育」、「生物」等の教育を改善していく考えがあるのか。
四 女性の社会進出、経済的な理由から共働き家庭が標準家庭となってきた現状から、早期に産みたくても産めない女性が増えてきている。これを「社会的不妊」と考えている。このことについて、政府としての対応は緊急を要すると考えるが、具体的にどのような対応を想定しているのか明らかにされたい。
五 米国では、「男性が家事・育児を担うべきだ」ということと、「女性が生活費を分担して担う」ことを学ぶ教育が表裏一体に行われている。我が国においても、この二つを中学、高校等の学校の「保健体育」、「現代社会」等の授業内容に必須項目として盛り込む必要があると考えるが、政府の方針を伺いたい。
六 男性には「家事・育児への主体的参加」を促す共働き時代の家族形成を考える教育も必須である。これらを中学、高校等の学校の「現代社会」等の授業で教えることはできないか、考えを伺いたい。
右質問する。