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平成二十六年九月二十九日提出
質問第一号

原子力発電所の再稼働に求められる安全性等に関する質問主意書

提出者  阿部知子




原子力発電所の再稼働に求められる安全性等に関する質問主意書


 平成二十六年九月十日、田中俊一原子力規制委員会委員長は、九州電力川内原子力発電所一号機及び二号機の新規制基準適合性審査書及び発電用原子炉設置変更許可を決定した同委会議後の定例記者会見で「九州電力川内原子力発電所については、原子力規制委員会として、法律に基づいて、運転にあたり求めてきたレベルの安全性が確保されることを確認した」と表明した。
 一方、同決定を受けて、小渕優子経済産業大臣は鹿児島県知事に宛てた平成二十六年九月十二日付「九州電力株式会社川内原子力発電所の再稼働へ向けた政府の方針について」において、「原子力規制委員会によって、新規制基準に適合すると認められ、原子炉設置変更許可が行われました。これにより、再稼働に求められる安全性が確保されることが確認されました」と述べている。
 また、前掲小渕経産大臣文書においては、エネルギー基本計画(平成二十六年四月十一日閣議決定)に基づき、川内原発の再稼働を進めるとしているが、同文書でも引用されている通り、エネルギー基本計画においては「原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める」と記されている。
 他方で、田中規制委員長は「規制委は再稼働するかどうかについては判断しない」「規制基準の適合性審査であって、安全だとは言わない」「絶対安全、ゼロリスクではない」との趣旨の発言を繰り返している。
 以上、原発の「安全(性)」の定義及びそれを判断する責任の所在を巡っては、この間も混乱が生じてきたところであり、川内原発の再稼働に向けた手続きが進む現在に至っても明確になったとは言えない状況にある。
 よって、以下質問する。

一 田中規制委員長が一貫して述べている「規制基準の適合性審査であって、安全だとは言わない」との表現と九月十日会見での「運転にあたり求めてきたレベルの安全性」との表現とは同じ「安全(性)」という語を用いているが、その意味するところは異なると思われる。それぞれの表現における「安全(性)」の定義と相互の関係を示されたい。
二 長野県と岐阜県にまたがる御嶽山の突然の噴火は、常時監視対象の活火山で火山性地震が観測されていながら予兆が少ないと判断されたため噴火警戒レベルが「1(平常)」から引き上げられなかった中で起こった。今回の事態は噴火の予知の難しさを改めて示すとともに、避難及び救援活動の困難さも突きつけた。この御嶽山の噴火により川内原発の火山リスク評価に対する疑義がさらに高まっている。火山学者らから有力な科学的批判がなされてもなお川内原発に係る火山リスクについても「運転にあたり求めてきたレベルの安全性が確保される」と判断した科学的根拠を示すとともに、残余のリスクは何であると考えており、その残余のリスクに係りいかなる比較衡量あるいは割り切りをなして川内原発の安全性の確保を確認したのか、科学的に説明されたい。
三 右に引用した「運転にあたり求めてきたレベルの安全性」(九月十日田中規制委員長会見)、「再稼働に求められる安全性」(九月十二日付小渕経産大臣文書)及び「規制基準に適合すると認められた場合」(エネルギー基本計画)は同じものであるのか、異なるのであれば三者間の違いは何でありどのような関係にあるのか、明確に示されたい。
四 原子力規制委員会設置法において、規制委の任務は「原子力利用における安全の確保」とされており、かつそれは「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全」に資するためのものとされている(同法第一条及び第三条)。他方で、前掲田中規制委員長発言の「運転にあたり求めてきたレベルの安全性」は、規制基準適合性審査の範囲に限定された判断であると考えられ、規制委設置法に言う「原子力利用における安全」より狭く、地域防災計画(原子力災害対策編)の審査又は検証等を含まない趣旨と思われるが、政府の認識は如何か。又、規制委がこのように「運転にあたり求めてきたレベルの安全性」の確保に自らの役割を限定することは規制委設置法違反の疑いがあるが、あわせて政府の認識を示されたい。
五 原発の再稼働に求められる安全性の確保には実効性が担保された地域防災計画(原子力災害対策編)の策定等が当然に含まれるべきと考えるが、政府の認識は如何か。又、その場合に、前掲小渕経産大臣文書における「再稼働に求められる安全性が確保されることが確認された」という文言には同文書の論理構成上、地域防災計画が対象として含まれないこととなるが、政府としては規制委による規制基準適合性審査をもって「再稼働に求められる安全性」が確保されるとの認識であるのか、明確に答えられたい。
六 原子力防災会議は平成二十六年九月十二日の会議において川内地域の避難計画を含む地域防災計画を「確認」したとしているが、これは同会議又は議長である内閣総理大臣が川内地域の地域防災計画の実効性を責任をもって担保し、以って川内原発の再稼働に係る安全性が確保されることを確認したということであるのか、政府の立場を明確に示されたい。
七 原子力規制委員会設置法案の国会審議においては、衆法提出者及び細野豪志国務大臣(当時)ら政府側がともに規制委が再稼働の判断をすると答弁をしていた(平成二十四年六月十九日参議院環境委員会など)。ところが、右に引用した通り、田中規制委員長は「再稼働の判断はしない」と繰り返し明言している。規制委が再稼働の判断をしないことは、立法者の意思及び当時表明された政府の立場に照らし、又規制委設置法の条文上も規制委設置法違反となるのではないか。政府の認識を示されたい。
八 エネルギー基本計画では、「その(原子力規制委員会の)判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める」とされている。ここで「尊重し」とあることから、政府が再稼働を判断し進める主体となると解釈する余地がある。一方、前掲小渕経産大臣文書においては、原子力規制委員会が原子炉設置変更許可を行ったこと「により……再稼働に求められる安全性が確保されることが確認された」とし、「したがって、政府として、エネルギー基本計画に基づき、川内原子力発電所の再稼働を進めることとする」とされており、再稼働を判断し進める主体がより曖昧にされているような印象がある。他方で、原子炉等規制法に則り再稼働の判断は一義的に事業者が行うとする法律上の建前も政府側より示されている(平成二十六年九月十一日「原発ゼロの会」ヒアリングにおける資源エネルギー庁担当者発言など)。政府としては、再稼働について判断をし進める責任はどこにあり、又再稼働における政府の役割は何であると認識しているのか、原発再稼働に対する方針を明記したエネルギー基本計画を閣議決定したことから生ずる政府の責任がいかなるものであると認識しているのかを含め、明確に答えられたい。
九 前掲小渕経産大臣文書においては、エネルギー基本計画を踏襲し、「万が一事故が起きた場合には、政府は、関係法令に基づき、責任をもって対処いたします」とされているが、「責任をもって対処」とは政府としていかなることを約束及び保証するものであるのか具体的に示されたい。又、当該記述を含め、再稼働をした原発で事故が起きた場合における政府の結果責任についてはいかなる立場であるのか明らかにされたい。
十 原発立地地方公共団体等と原子力事業者との間で締結されるいわゆる「安全協定」等の協定には法的な根拠がなく、又原発再稼働等の手続きにおける地方公共団体又は住民等の権限及び権利についてはどの法律にも規定がない。規制委設置法案の国会審議においても、この点についての問題意識は衆法提出者、政府ともに抱いていたと認められ(平成二十四年六月五日衆議院環境委員会など)、かつ同法案に対する衆議院環境委員会の決議及び参議院環境委員会の附帯決議において、地方公共団体及び住民等の役割や法体系等に係る検討をし、必要な措置を講ずることを政府に求めている(衆議院環境委員会決議の九、参議院環境委員会附帯決議の二十六等)。また、川内原発周辺自治体などからも、原発再稼働への同意に係る「地元」の範囲に関して法的枠組みの整備を政府に求める声が上がっている。政府はこれらについていかなる検討を行っており、又川内原発の再稼働手続きにおいて反映するつもりであるのか、明確に示されたい。

 右質問する。



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