衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成二十六年十一月十三日提出
質問第七三号

薬物依存症者の治療や社会復帰のための支援の充実・強化に関する質問主意書

提出者  塩川鉄也




薬物依存症者の治療や社会復帰のための支援の充実・強化に関する質問主意書


 政府が、薬物乱用対策推進本部(本部長・内閣総理大臣)を設置し、「薬物乱用防止五か年戦略」策定(一九九八年五月)するようになって十六年がたちました。政府は、五年ごとに「戦略」を見直しながら対策強化、薬物乱用の根絶にとりくんできました。
 しかし、政府自らが指摘するように、「覚醒剤事犯の検挙人員」は「五年前と比べても横ばいで、高止まりの状況にあるほか、再犯者率は六一・一%、五年前から五・四ポイント増加し、過去十五年間で最高を更新した」(「第四次薬物乱用防止五か年戦略」・二〇一三年策定)としているように依然厳しい状況にあります。
 加えて、同文書で「合法ハーブ等と称して販売される薬物が蔓延し、これを使用した者が二次的な犯罪や健康被害を起こす事例が多発している」としめす通り、新たな深刻な事態が起こっています。当時、「合法ハーブ」と呼ばれた薬物の対策として、政府は、「包括指定」の実施(二〇一三年三月等)による指定物質の拡大、指定薬物の指定期間の短縮化、「麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)及び薬事法の一部を改正する法律」の成立(二〇一三年)、「緊急対策」(二〇一四年七月)の策定等、対策・支援の充実・強化をはかっています。しかし、こうした深刻な事態を根絶していくには、違法薬物の取り締まり強化にとどまらず、遅れている依存症という病気の側面を重視した治療・回復支援策の抜本的強化がかかせません。「刑法の一部を改正する法律」「薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律」が成立し、懲役・禁錮刑に「一部執行猶予」を取り入れ、処罰≠ゥら治療≠優先させた方向へ踏み出しています。薬物依存症者の治療や社会復帰のための支援の抜本的な充実・強化を求め、以下質問します。

一 政府は、薬物依存症が、WHO(世界保健機関)にも定義づけされた精神障害であり、「罰を与えてもよくならない」「専門治療が必要」との認識をしめしている。また、二〇〇九年十一月の参院での質問主意書への答弁書でも「これまでの薬物対策については、…依存症に対する治療的な視点が乏しく、依存症患者が治療・支援を受けにくい状況が生み出されてきた」との認識をしめし、「依存症患者に対する治療・支援体制の充実に努めてまいりたい」とも回答している。政府として、刑罰≠ゥら治療≠ノ踏み出しつつあるもとで、治療環境の抜本的な拡充が急がれていると考えるが、治療環境の現状についての認識と今後の対策拡充について、どのように考えているのか。
二 厚生労働省二〇一五年度予算概算要求に「薬物などの依存症対策の推進」として一・四億円を盛り込み、全国の精神保健福祉センターで「認知行動療法」を用いた治療・回復プログラムを実施するとしているが、その事業の実施状況とその事業による効果をどのように考えているか。また、それにとどまらない依存症という病気の側面を重視した新たな治療・回復支援策の拡充が求められると考えるが、どうか。
三 危険ドラッグは、規制の有無を問わず、使用することが危ない&ィ質であり、効能、効果などを謳うものについては、無承認の医薬品として取り締まることや、インターネット上の住所等の不正表示等による表示義務違反での取り締まり等、可能な様々な角度から規制を強化していくことを求める。国会でも十月十日野党七党が危険ドラッグ禁止のための「薬事法の一部を改正する法律案」を提出し、国会でも規制強化が議論となっている。今後、どのような規制強化を考えているのか。
四 危険ドラッグの使用経験者は推定四十万人とも言われる。こうした事態をうけた薬物依存症からの回復に向け支援策の拡充やどのような新たな対応策を検討しているのか。
 各精神保健福祉センターの相談も多くなっているが、相談だけでは解決しないのではないか。リハビリができる治療共同体を各都道府県に早急に設立すべきと考えるが、どうか。
五 全国の知見を集積して依存症の治療・回復プログラムや支援ガイドラインを作るとしている「依存症治療拠点機関設置運営事業」への期待が高まっていると聞く。二〇一五年度の事業規模とそのための予算確保についてどのように考えているのか。しかし、この「拠点事業」は、全国数カ所とも聞く。これでは通える依存症者に限りがある。身近な地域で治療を行う医療機関や専門家を増やすことを求めるが、どうか。
六 「依存症回復施設職員研修事業」は、参加希望も多いと聞く。実施場所を増やすなど、拡充とそのための予算の確保が求められていると考えるが、どのような認識か。
七 薬物依存症者の過量服薬の弊害が問題となっている。二〇一三年「薬事法及び薬剤師法」改正時の衆議院厚生労働委員会の附帯決議でも「これまでの薬害被害を深く反省し、国民の健康被害の発生及び拡大を未然に防止する観点から、医薬品による副作用又はその疑いがある症例については、研究開発から市販後の各段階における情報の収集に万遺漏なきを期すとともに、情報の整理、分析及び評価を迅速に行い、医薬品の安全性及び適正な使用が十分に確保されるよう取り組むこと」とされた。二〇一四年度では、診療報酬の減算や精神診療所医師向け研修を実施しているが、今後一層の処方薬の多量服薬・多剤投与抑制に取り組むことが必要と考える。どのような認識か。
八 薬物依存症者を治療に繋げる家族のための「CRAFT」技法を地域で学べるよう国の家族支援策を求めるが、どのように対応しようとしているのか。
九 障害者支援に関して、今年四月から「障害程度区分」が知的障害者・精神障害者の特性に応じた「障害支援区分」に改められた。三年を目途に区分認定含め支給決定のあり方を検討するとしているが、「障害支援区分」が依存症の状態に十分にあった区分になっているのか否か十分な実態把握をするとともに、必要な見直しをすることを求めるがどうか。
十 依存症者の治療継続を保障するには、生活支援がかかせない。現状では、薬物依存に関する自助グループであるダルクの入所者の多くが生活保護を受けている。生活保護費で入寮費が賄えず、生活保護費の削減は深刻な問題となっている。生活保護費の削減をしないことを求めるが、どうか。
十一 依存症者は、もとの居住地、刑務所や自立準備ホーム、回復支援施設や医療機関など、関係市町村が複数に及び、生活保護と障害支援区分を受けるための決定機関(市町村)を決めるところから困難な状況となっている。@刑務所から自立準備ホームに入所した者、A自立準備ホームの六カ月が終了し、社会参加できず引き続き回復支援施設や医療機関に入る者、それぞれの者の生活保護、障害支援区分を決定する支給決定機関(市町村)はどこか。@、Aの者が、生活保護、障害支援区分を受ける際、それぞれのケースについて政府の見解を聞く。
十二 依存症者はダルク等の共同生活の中で支え合いながら回復している。一人一部屋という生活保護基準が現状に合わない。政府も特化した支援の必要性を認識するとともに、これまでも「依存症者に対する医療及びその回復支援に関する検討会」報告(二〇一三年三月)を踏まえ今後更に考えていきたいとの認識を表明されている。依存症回復施設が公的に不足しており、財政的に厳しい中で民間施設は何とか維持している。財政支援等どのような検討をしているのか。
十三 自立準備ホーム制度の支援期間が六カ月間となっている。薬物依存症回復施設の実績では、施設で受けるプログラムの長さによって回復度に差が出ている。自立準備ホーム制度の期間を最長一年に延ばせないか。また「刑法」等の改正による執行猶予の拡大に伴い受け皿となる施設の入所期間も最低一年は必要と考えるがどうか。
十四 自立準備ホーム制度では、医療を受ける指導がおこなわれているが、費用に医療費が含まれていない。入所者が医療費支払に相当する所持金を持っている例は極めて少なく、生活保護の医療扶助もなかなか市町村で了解されない。これでは、治療・回復支援がつながっていかないと考える。いかに考えるか。また、改正「刑法」施行後の受け皿となる施設での対応はどうなるのか。
十五 高齢や精神障害と薬物依存症との重複障害を持っている出所者の対応について、生活環境の調整にとりくんでいるが、受刑者の何割が受けているのか、また調整に基づいて出所後の処遇実態について状況を伺う。
十六 刑事施設で窃盗罪であっても薬物依存が認められる場合、離脱指導受講等がおこなわれているが、その実施状況はどうか。
十七 薬物依存症の受刑者が刑務所の中で新たに処方薬依存を抱えて出所してくる例は少なくない。受刑中の適正な処方薬投与がもとめられるが、どのように考えるか。薬物依存について知識を持つ医者の配置と、出所後、身元引受人に刑務所内で処方された薬品名の開示を求めたいがどうか。
十八 保護観察官の増員がかかせないと考えるが、二〇一五年度増員の見込みは何人か。

 右質問する。



経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.