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平成二十七年三月二十五日提出
質問第一六五号

沖縄県の指示に対する沖縄防衛局の見解と農林水産省への申し立てに関する質問主意書

提出者  仲里利信




沖縄県の指示に対する沖縄防衛局の見解と農林水産省への申し立てに関する質問主意書


 去る三月二十三日、沖縄県知事は、沖縄防衛局に対し、名護市辺野古沖での作業の中止を指示した。同局は、この指示を不服とし、同二十四日、沖縄県に対し、指示が違法で無効なため作業を中断する理由はないと回答するとともに、農林水産大臣に対し、審査請求と執行停止の申し立てを行った。
 同局の回答と申し立ては、明らかに沖縄県漁業調整規則及び水産資源保護法を歪曲するものであり、また沖縄県民の民意を損なうものに他ならない。
 そこでお尋ねする。

一 沖縄防衛局は「岩礁破砕についての理解を誤っている」とし、「岩礁」とは「海底における地殻の隆起形態」であって、「この隆起形態を変化させる行為が破砕」であり、「アンカーの設置は地殻そのものを変化させる行為ではない」としている。この解釈に従えば、沖縄の島々を環状に取り囲んでいるサンゴ礁や、その内側の浅い礁池や礁湖の海底を形成している造礁サンゴとその化石は地殻ではなく、したがって破砕されても岩礁破砕の対象とならないことになる。しかしながら、サンゴ礁により形成される海域では多様な環境が作られ、多くの生物が生息するなど、沖縄の水産動植物の生育及び再生産の場として重要な役割を果たしている。敷衍すると、造礁サンゴとそこに共生する褐虫藻が一次生産者として食物連鎖の基底をなしているからこそ、沖縄の水産業を支える生産の場が形成されていることになる。このため、沖縄県漁業調整規則及び岩礁破砕等の許可に関する取扱方針では、サンゴ礁を始め、砂浜、藻場等海浜・海底等の構成要素すべてを岩礁破砕の対象として位置付け、その保全に努めているわけである。よって、沖縄防衛局の見解の第一は、同規則及び取扱方針の目的と趣旨、その規定に照らせば、極めて不当であり、事実誤認となるのではないか。
二 沖縄防衛局は、「アンカー設置等について許可を不要としていた」と指摘している。そもそも沖縄県漁業調整規則及び岩礁破砕等の許可に関する取扱方針では、「アンカー」とは「船舶の投錨」を指している。また他の事例でもこれとほぼ同様の規模の「錨」で取り扱っている。同局と沖縄県の事前調整及びその後の申請に対する見解が食い違っているとしても、同規則及び取扱方針の目的と趣旨、その規定に照らせば、沖縄防衛局の見解の第二そのものが極めて不当であり、拡大解釈になるのではないか。
三 沖縄防衛局は、「他の事業との公平性に欠ける」と指摘している。しかしながら、沖縄県は、上記二で指摘したとおり、沖縄県漁業調整規則及び岩礁破砕等の許可に関する取扱方針の目的と趣旨、その規定に基づき「アンカー」の解釈は「船舶の投錨」の範疇で行っており、また公平・公正の立場で許認可に臨んでいることから、同局の指摘は不当ではないか。しかも同局は、「アンカー」の形状や大きさ、重量、投下する場所と避けるべきサンゴ礁の被度との関係、与える影響等を一切明らかにしなかったことを考え併せると、やはり「公平性に欠ける」との指摘は不当ではないか。
四 沖縄防衛局は、「著しい権限乱用である」と指摘している。しかしながら、今回のアンカー設置に伴い、沖縄にとって極めて重要で、かつ、貴重なサンゴ礁が破壊されている蓋然性が極めて高い現況を考えると、早急にすべての海域を調査する必要性があることから、行った最小限の措置であると考えるべきである。しかも僅か三日間の調査とその後の指示期間の間、工事を停止するよう求めたに過ぎないことを考え併せると、同局の指摘は不当ではないか。
五 沖縄防衛局は、「行政手続法等に違反している」と指摘している。しかしながら、今回の指示停止に至るまでの間、沖縄県は資料や説明の要求、さらには要望等書面による提出を始め、さまざまな方法と機会を通じてその都度行ってきた。
 いわば書面審理主義に則っていることから、同局に対する弁明の機会はきちんと与えてきたものと考えている。なお、敷衍すれば、先の知事選及び衆議院議員選で明確に示された沖縄県民の民意を無視して、あえて政府の方針を強行しようとしてきたことからすれば、その指摘は不当とすべきものではないか。また、「教示がない」との指摘があるが、そもそも「教示」とは行政不服申し立てに不慣れな一般国民を救済するための制度であり、法理・法令に精通した政府機関が対象となるのか大いに疑義があるところである。なお、沖縄県は事前調整や申請の際に、沖縄県漁業調整規則及び岩礁破砕等の許可に関する取扱方針の目的と趣旨、その規定を十分同局に説明してきたことを考え併せると、その指摘は当たらないとすべきではないか。
六 最後に、沖縄防衛局は、「岩礁破砕についての解釈を誤った」又は「事実を誤認した」と指摘している。しかしながら、県は辺野古沖の臨時制限水域外で事実確認ができないため、調査を申し入れているのである。そのことを考えると、あたかも知事が事実誤認をしているが如く指摘することは不適切である。要は県の調査を同局が受け入れ、事実関係を明らかにすれば瞬時に解決することである。そのようなことすら行わず、一方では、臨時制限水域内に民間の工事船や海上保安庁の監視船を多数出入りさせていることを考え併せると、同局は沖縄県の申し入れを受け入れ、調査が円滑に行われるよう責任ある対応を行うべきではないか。

 右質問する。



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