質問本文情報
平成二十七年七月七日提出質問第三一一号
存立危機事態についての諸問題に関する質問主意書
提出者 逢坂誠二
存立危機事態についての諸問題に関する質問主意書
第百八十九回通常国会に安倍内閣が提出し審議が進められている「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律案」及び「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律案」(以下、「本法案」という)は、これまでの通説的な憲法解釈に基づけば違憲であるとともに、いくつかの手続きも疑念を持たざるを得ない。
例えば、中谷防衛大臣は、平成二十七年七月一日の我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会(以下、「本特別委」という)で存立危機事態の認定に至った時、「政府は」「事態の経緯、事態が存立危機事態であることの認定及び当該認定の前提となった事実を説明いたします」。「どのような理由で政府が存立危機事態であると認定したかについて記載をする」「その判断を裏づける具体的な事実」を「記載する」と述べているが、他方、「対処基本方針を作成する際、事態の認定の前提となった事実等に特定秘密が含まれる場合も考えられ」るとも述べている。しかしながら、これらの答弁は従来の政府の積み重ねてきた答弁から考えれば、整合性を持たないのではないか。
このような視点から、以下質問する。
二 安倍首相は平成二十五年十一月二十六日の衆議院国家安全保障に関する特別委員会で、特定秘密保護法の成立に伴い、特定秘密に指定される公算の高い特別管理秘密文書等が四十万件以上あるというのは「ちょっと多過ぎる」と述べつつも、その「四十二万件に上るものの実情を申し上げますと、四十二万件のうち約九割は、実は、我が国の情報収集衛星に関するいわば写真」で、「解像度そのものがこれは秘密になりますから、いわば、写っているものがもう秘密ではなくなったとしても、解像度をどれぐらい我々が持っているかということがまさに極秘であります」と認めている。この答弁を踏まえれば、情報収集衛星で撮影した有事の「事態の認定の前提となった事実等」を示す写真は特定秘密に指定され、国会においても開示されないものと思われる。国際的な水準でいえば、現在の安全保障上の意思決定は敵部隊の配置などの画像情報に基づくものが主流であり、このため、本法案でいうところの対処基本方針を国会で承認を求めるにあたり、国会議員は判断に必要な情報を知ることができない公算が高い。対処基本方針の国会承認を求めるにあたり、政府はどのような情報開示を国会議員に行い、説明を行おうとしているのか、具体的に示されたい。
三 画像情報等が特定秘密に指定される恐れがあるとして、対処基本方針の国会承認を求めるにあたって国会議員に開示されないとすれば、日本国の実力部隊である自衛隊の行動を国会が監視するというシビリアンコントロールの前提を損ない、立憲主義に反するのではないか。政府の見解を示されたい。
四 国家が実力部隊を用いた場合、事後の意思決定過程の検証は欠かせない。実力部隊の行使は国家の平和と独立の維持に欠かせないものの、反面、大きな破壊力を持つため国民のみならず、まきこまれる人々の生命、財産が損なわれることは否定できない。例えば、アメリカのブッシュ政権下で行ったイラク戦争は悪しき前例であるが、メディアなどの検証により、当時の首脳の意思決定のずさんさが明らかにされ、その後のオバマ政権の政策決定に大きな影響を与えた。本法案に基づいて海外で自衛隊が行動する場合、これまでのわが国の安全保障法制を一変させるもので、事後に意思決定過程が検証できるように万全な措置を講ずることが不可欠である。言い換えれば、十分な事後の意思決定過程の検証ができないようでは、自衛隊を海外に出すべきではない。特定秘密に含まれる画像情報等を含めて、五年もしくは十年というような期間経過後に政府は事後の検証に資する情報公開を行うべきではないか。政府の見解を示されたい。
五 対処基本方針の国会承認を求める場合、国会議員に十分な情報を開示すべきであり、秘密会などを活用して、秘密指定された画像情報なども開示すべきである。このような場合、特定の委員会ではなく、全議員が出席する本会議を秘密会として議論すべきであると思われるが、現行憲法下での本会議が秘密会とされた例はない。政府は対処基本方針の国会承認を求める場としてどのような仕組みを想定しているのか。また、十分な情報が開示されないとすれば、国会軽視と言わざるを得ず、秘密会なども活用すべきと思われるが、政府の見解を示されたい。
右質問する。