衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成二十七年七月十三日提出
質問第三二二号

国が行政不服審査請求を行うことの適格性等に関する質問主意書

提出者  仲里利信




国が行政不服審査請求を行うことの適格性等に関する質問主意書


 去る五月十三日の農林水産委員会において、本職が行った「行政不服審査請求を国が行うことの適格性等に関する質問等」に対し、農林水産大臣が答弁した内容の一部は明らかに不適切ないし違法と思われる部分が見受けられた。また、限られた質問時間であったため、あらかじめ予定していた質問全てを行うことができなかった。
 そこでお尋ねする。

一 「国は審査請求及び執行停止申立を行う資格を有するか」ということについて
 (一) 公益の代表者として公権力を行使する機関という立場からどうか
  @ 名護市辺野古沿岸の公有水面を埋め立てて、新たな米軍基地を建設することは、公益に適合しているか。
  A その場合の公益とはいかなるものか。
  B その公益を実施する国は公権力の行使者であって、地方自治法、法定受託事務である水産資源保護法、沖縄県漁業調整規則及び行政不服審査法等でいうところの一般私人や国民とは全く異なる立場ではないか。
  C 国と県は、両方とも公益の代表者ではないか。
  D 今回、審査請求や執行停止申立を行った国は、処分庁である県や審査庁である国と同様の立場の行政機関・公権力の行使機関として位置付けるべきではないか。
  E 今回、国が県の処分を不服として行った審査請求や執行停止申立は行政機関同士の紛争ということになるため、行政不服審査法の立法の趣旨や経緯に照らした場合、国は審査請求や執行停止申立を行う資格は有していないと解するべきではないか。
 (二) 「行政機関相互の関係ではどうか」ということについて
  国は、沖縄県漁業調整規則第三十九条第一項の規定が「国の機関と一般私人を問わず一様に適用される規制であり、許可を知事から得るに当たり、特権的立場あるいは優越的地位に基づきその固有の資格において処分の名あて人となるわけではなく、一般私人と同様の立場に立って処分の名あて人となった」ことから審査請求をする資格及び執行停止を申し立てる資格を有すると主張している。
  ところで、地方自治法では、法定受託事務について、知事が行った処分について国民の権利を守るために法律を所管する大臣に審査請求できるという特例を設けている。
  また、行政不服審査法でも一般私人・国民の権利利益の救済を図るというのが立法の趣旨及び経緯である。
  つまり、地方自治法及び行政不服審査法は、一般私人・国民と行政庁の間において、一般私人・国民を救済する制度であるし、国と都道府県の関係は、一般私人・国民と行政の関係ではなく、行政機関相互の関係と解するべきである。
  したがって、国が一般私人・国民と同様の立場で審査請求や執行停止申立を行うことは想定されていないし、ましてや、沖縄県漁業調整規則で定める岩礁破砕の許可手続きにおいて国の機関と一般私人が同様な許可手続きとなっていることを盾に、審査請求及び執行停止申立の資格を主張することは、法の想定外の隙間を突いた行為と言わざるを得ない。
  @ 今回の審査請求及び執行停止申立は、いわば原告と裁判官が同一の裁判で沖縄県が裁かれるようなものであり、地方自治法及び行政不服審査法の趣旨を大きく逸脱した強引なやり方ではないか。
  A 今回の国の審査請求及び執行停止申立は、誰が見ても公平性・公正性に欠けたものでないか。
  B 国が法の矛盾や不合理を突くやり方を行うことは不適切ではないか。
  C 形式的に見ても実質的に見ても、今回の国の主張は不当ではないか。
  D 上記@からCまでの質問を踏まえると、国は、審査請求や執行停止申立を行う資格は有していないのではないか。
二 「審査請求・執行停止申立の前に是正の指示か代執行を行うべきではないか」ということについて
 「知事の違法な処分」を理由とするならば、水産資源保護法及び沖縄県漁業調整規則に基づく岩礁破砕許可の事務の違法性を問うことに他ならない。
 (一) 水産資源保護法第三十五条の二の規定で「岩礁破砕許可の事務」は法定受託事務とされていることから、法定受託事務の処理が違反しているか否かを問うならば、まず地方自治法第二百四十五条の七の規定に基づく是正の指示か、その後の手続きである同法第同条の八の規定に基づく代執行の手続きを取るべきではないか。
 (二) なぜ地方自治法に基づく是正の指示か代執行の手続きを行わなかったのか。
 (三) 意図的に第三者機関や司法の裁決を避けたのではないか。
 (四) 今回、なぜ地方自治法第二百五十五条の二の規定に基づき審査請求を、行政不服審査法第三十四条第三項及び第四項の規定に基づき執行停止申し立てをそれぞれ行ったのか。
 (五) 意図的に第三者機関による裁決を避けて、同じ国と国で話し合える裁決を望んだのではないか。
三 「国が審査請求を行うことがなぜないか」ということについて
 (一) 国が行政不服審査請求を行った事例は他にあるか。
 (二) 本職は事例がない若しくは極めて少ないと承知しているが、なぜない若しくは少ないのか、その理由を明らかにせよ。
四 「執行停止と日米関係を損なう重大な損害の関係はどうか」ということについて
 仮に政府が行政不服審査法に基づき審査請求できるとしても、執行停止の要件は「重大な損害を避けるため緊急の必要がある時」に限定されている。
 (一) この要件にあてはまる時に執行停止の決定ができるわけだが、「日米関係を損なう」ことがなぜ「重大な損害」と言えるのか。
 (二) 執行停止の決定を出さないと、なぜ「ただちに日米関係が損なわれる」のか。
 (三) この場合の「重大な損害」の性質、程度及び規模はどのようなものか。
 (四) 何をもって個別的、具体的な影響とみなしたか。
 (五) 農林水産大臣は、沖縄県知事の指示の執行停止を命じるに当たって、審査請求人である沖縄防衛局長が申し立てた防衛省所管の「普天間飛行場の危険性の除去」と外務省所管の「日米間の外交防衛への重大な損害」をそのまま鵜呑みにして、理由として認め決定したが、その際、職権証拠調べとして、どのような調査を行い、その結果、どのような証拠を確認・立証したのか。
五 「今回の執行停止の決定は違法ではないか」ということについて
 (一) 「行政裁量の統制の原則からすればどうか」ということについて
  行政裁量を統制するために、近年は司法審査の手法として、判断過程の統制が行われるようになっている。そして、判断過程の中でも、考慮事項に着目した審査が行われるようになっている。
  その判例として、昭和四十八年七月十三日東京高裁の「日光太郎杉事件」と平成十八年二月七日最高裁の「学校施設使用許可と考慮事項の審査」において、『「本来考慮に容れるべきではない事項を考慮に容れた・・・・・」ために、行政庁の判断が左右されたものと認められる場合には、裁量判断の方法ないしその過程に誤りがあるものとして違法となると判示した』こと等がある。
  @ 判例からすれば、正しく今回農林水産大臣が防衛省及び外務省の所管事項を理由として沖縄県知事の指示の執行停止を命じたことは、行政裁量の統制から逸脱したものではないか。
  A したがって、今回の農林水産大臣の執行停止の決定は違法ではないか。
 (二) 「分担管理原則からすればどうか」ということについて
  本職は、地方自治法や行政不服審査法、公有水面埋立法等が国と一般私人、国民を明確に区分していることからして、国が行政不服審査請求を行うことは本来できないものと解している。
  仮に、国が行政不服審査請求を行うことができるとした場合であっても、分担管理原則の例外は公害等調整委員会や行政改革会議に認められているだけであり、内閣法第三条に基づき、「各大臣は、主任の大臣として、行政事務を分担管理する」ことになっていることからすれば、農林水産大臣が本職の質問に対して今回行った「執行停止決定の理由は、審査庁の所掌に限定されるものではない」との答弁は、違法ではないか。
 (三) 「行政事務の分担管理原則と行政法の大原則の「法律による行政」原則からすればどうか」ということについて
  農林水産省は、今回の沖縄県の指示を執行停止とする決定の理由として、「指示により工事が大幅に遅れることとなるため、普天間飛行場周辺住民に対する危険性や騒音の継続による損害、日米両国間の信頼関係への悪影響による外交・防衛上の損害等といった回復困難で重大な損害が生じ、当該損害を避ける緊急性がある」ことを挙げている。
  これに対し、識者は、「行政不服審査の審査に際して農林水産大臣が考慮できることは、所管する法が定める目的と権限の範囲内に限られる。法と何の関係もない他の法律が定める目的を考慮したり、他の法律により他の行政機関に与えられている権限を考慮して審査したりすることは、行政事務の「分担管理原則」と、行政法の大原則である「法律による行政」原則に反し、許されるものではなく、したがって、今回の農林水産大臣の執行停止決定は、その理由からして、農林水産大臣が審査庁として考慮できる範囲を明らかに超えた「瑕疵」があり無効である」と指摘している。
  つまり、沖縄県知事が処分を行う根拠となった水産資源保護法では、その目的として「水産資源の保護培養、漁業の発展に寄与する」ことがあり、これが正しく農林水産大臣の所管事務であるが、これと今回農林水産大臣が主張の理由として挙げた「普天間飛行場の危険性の除去」や「日米間の外交・防衛への重大な損害を避ける」ことは何の関係もないし、これらを考慮する権限は水産資源保護法及び農林水産大臣には与えられていないことになる。
  @ 今回の農林水産大臣の執行停止決定は、行政事務の「分担管理原則」と、行政法の大原則である「法律による行政」原則から瑕疵があり、無効ではないか。
  A 沖縄県知事の行った工事停止の指示は有効に生き続けており、継続されている工事は指示違反が発生しているのではないか。
六 「沖縄県知事の指示は法律上の処分に当たるか」ということについて
 去る三月二十三日、沖縄県知事は、沖縄県漁業調整規則に基づき許可した岩礁破砕の条件に基づき、沖縄防衛局長に対し「名護市辺野古沖での作業の中止」を指示した。
 これに対し、沖縄防衛局長は、知事の指示が違法な処分であるとして、農林水産大臣に対し、地方自治法第二百五十五条の二の規定に基づいて審査請求を、行政不服審査法第三十四条第三項及び第四項の規定に基づいて執行停止の申し立てをそれぞれ行った。
 (一) 今回の知事の指示は、「法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、・・・・権利に直接影響を及ぼす法効果を有するもの」に該当するとはいえないことから、法律上の処分として取り扱うべきものではないと思われるがどうか。
 (二) 農林水産大臣が知事の指示の執行停止を命じた決定書では、知事の指示を「海底面の現状を変更する行為の全てを停止することを命じ」、「義務付けるものというべきであり」、「任意で工事の停止を求めるということはできない」と述べ、簡単に処分性を肯定しているが、あまりにも説明不足で便宜的ではないか。
 (三) 上記(一)及び(二)の質問を踏まえると、今回の知事の指示を法律上の「処分に当たる」ということはできないと思われるがどうか。
七 「岩礁破砕の解釈を県に委ねてきたのではないか」ということについて
 (一) 国は、「岩礁の破砕」の解釈として、山口県水産部長からの照会に対する水産庁沿岸課長の回答において「海域における地殻の隆起形態を変化させる行為」を挙げている。
  しかしながら、これまで水産庁は、「都道府県漁業調整規則例(平成十二年六月十五日付け一二水管第一四二六号水産庁長官通知)にある「漁場内の岩礁破砕等の許可」第四十九条中「岩礁を破砕し」等の文言」は、概念的に説明されたに過ぎないとしている。
  そして、それを裏打ちする行為として、水産庁担当部局から沖縄県に対し、これまで「当該条項(岩礁を破砕し)の具体的運用については、地元の実情に即して、具体的な事例を示すことなどが予定されている」との説明を繰り返し行ってきたという経緯があると思われるがどうか。
 (二) 我が国は、東西南北に広大な範囲で構成されており、多彩な生物や自然、地相等から成り立っていることから、その自然環境を一律に規定することは極めて困難である。
  そのため、農林水産省は、これまで法定受託事務である水産資源保護法及び各都道府県の漁業調整規則に対する国の関与のあり方と方法については、地方自治法に基づき、その目的を達成するため必要な最小限度のものとするとともに、都道府県の自主性及び自立性に配慮してきたと思われるがどうか。
 (三) 国は、法及び規則で定める規定やその運用は、地域の自然環境や実態を熟知している都道府県に委ね、農林水産省はあくまでも例示的・概念的な説明・指導・通知を行ってきたと思われるがどうか。
 (四) 今回、問題となっている「無許可でのサンゴ礁の破壊ないしその蓋然性が高い」ということは、沖縄県漁業調整規則及び岩礁破砕等の許可に関する取り扱い方針で規定する「岩礁破砕の対象」であることは明らかではないか。
 (五) 四月一日の外務委員会や、安全保障委員会における複数の委員からの質問に対し、国が「そもそも岩礁破砕に当たらない行為である」との答弁を行ったことは、沖縄県がサンゴ礁を岩礁破砕の対象としていることを許可申請前にも、そして申請手続きの一連の手続きにおいても十分承知の上で申請におよび、許可を得、そして条件に基づいて「粛々」と工事を進めてきたこととの関係で考えれば、自己矛盾でないか。
八 「裁決がなぜ長引いているのか」ということについて
 沖縄防衛局が提出した執行停止申立書及び審査請求書は、重複する部分はあるものの、本文で二種類、十四ページ、資料で二十四種類、四百三ページに及ぶ膨大な資料である。
 一方、沖縄県が提出した「執行停止に関する意見書」も、理由書で十八ページ、資料で百三十九ページに及んでおり、これもまた膨大な資料である。
 沖縄防衛局及び沖縄県双方から提出されたこの膨大な書類を、国は、僅か六日足らずで精査・調査・立証し執行停止の方針を決定したわけである。尋常ではない事務処理能力であると高く評価する。
 しかしながら、その後の事務処理を見ると、沖縄県からの弁明書が四月二十二日に提出されているが、今日まで既に二カ月余も経過しようとしているのにもかかわらず、一向に国は、裁決に及ぶ気配を示していない。むしろ、沖縄防衛局に、沖縄県が提出した弁明書に対する反論書の提出を求めたり、沖縄県に再弁明書の提出を求めるなどしており、引き伸ばしを講じているのではないかと疑われても仕方がない状況である。
 沖縄県知事が弁明書を提出する際に「一か月以内の裁決を求めた」要望など聞く耳を待たない有様である。
 このまま裁決が引き伸ばされるならば、沖縄県が今後講じるであろう裁判の提起や県民の思いを達成するための様々な方策に影響が生じかねないし、日時の経過とともに事情裁決が成される可能性が高まり、埋め立て工事が進むことが懸念される。
 (一) なぜ裁決がこれほど長引いているのか。
 (二) 国の尋常ではない事務処理能力からすればおかしいのではないか。
 (三) 知事の指示の執行停止を命じるときに、沖縄防衛局の要望を受けて極めて短時間で処理したことを考えると、あまりにも不公平、片手落ちではないか。
 (四) それとも国は事情裁決が出されることを狙っているのか。
  なお、今回、質問は、各項目毎に番号や細分化した番号を割り振って行ったが、答弁は一括して行うのではなく、個別の質問ごとに、具体的な答弁を頂くことをお願いする。

 右質問する。



経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.