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平成二十八年三月一日提出
質問第一五八号

沖縄で実施されていた米軍実弾砲撃演習の県外移転に伴い明らかとなった二重基準や騒音の放置等の諸問題に関する質問主意書

提出者  仲里利信




沖縄で実施されていた米軍実弾砲撃演習の県外移転に伴い明らかとなった二重基準や騒音の放置等の諸問題に関する質問主意書


 米軍は、沖縄県内のキャンプ・シュワブやハンセンにおいて、実弾砲撃演習や射撃訓練、廃弾処理を日常的に実施していた。しかし、住民地域への跳弾が相次ぎ、また健康被害をもたらす騒音も頻発して、周辺住民や県民の安心・安全な生活が脅かされるという深刻な事態が生じていた。
 このため、政府は、米軍の県道一〇四号越え実弾砲撃演習を一九九七年に県外に移転したが、実弾射撃訓練や廃弾処理はそのまま県内で実施されることとなったため、跳弾や騒音問題は依然として残り、周辺住民と県民の不安は払拭されていない状況が続いている。
 また、政府は、米軍実弾砲射撃演習・訓練に伴う騒音調査と防音工事について沖縄県内では一切適用してこなかったのにも関わらず、同演習の県外移転を機に、移転先の五演習場及び移転先以外の五演習場、合計十の演習場においては、騒音調査を実施した上で補助率百%の防音工事を実施している。
 本来、米軍実弾砲射撃演習・訓練に伴う跳弾や騒音の抜本的な防止と解決は、政府の責務に他ならず、過重な基地負担を強いられている沖縄県民の負担を軽減する措置として、政府が率先して取り組むべき喫緊の問題である。
 然るに、名護市が問い合わせるまでの間、ひたすらに騒音調査と防音工事の補助事業が存在する事実をひた隠しにし、また名護市からの合計七回に及ぶ要請に対しても、木で鼻を括った対応に終始したことは到底容認できるものではない。これでは、政府が事あるごとに「沖縄県民の思いに寄り添う」とか「県民の声を丁寧に聞く」という説明がいかに口先だけで行動が伴わないものであるか疑われても仕方のないことである。また、このような二重基準の適用が堂々とまかり通ってきた根底には、沖縄県民への構造的差別が根強く存在していることの証左に他ならない。
 そこでお尋ねする。

一 世界保健機関は、交通騒音等による高頻度の睡眠妨害が睡眠障害という疾患に成り得ることや、騒音は大気汚染や水質汚濁の有害物質と同様に、公害病の原因と成り得る環境要因であることなどを指摘しているが政府の認識はどうか。
二 騒音が人命にまで影響することを認識した上で騒音を出し続けることは、水俣病公害事件で、原因を知りながら排水を流し続けることと同じであると言われているが政府の認識はどうか。
三 環境省は、騒音に係る環境基準の設定に当たり、地域住民からの差し止め請求等が行われたことを踏まえ、住民反応との相関が高く、国際的にも広く採用されている基準値に改正したり、世界保健機関が定める「騒音のもたらす健康被害のガイドライン」に概ね準じたレベルに定めたりするなど、騒音被害住民の立場に立って騒音基準を定めていると承知している。一方、防衛省は、防音補助工事の実施を「砲撃等火薬類の使用」の頻繁な実施により生ずる音響の影響度をLcden値八十一以上である区域を基準として独自に行うものとしている。これは環境省や世界保健機関のガイドラインのいずれに相当するのか、また相当する(適合する)とした理由と根拠は何か、さらに防衛省があえて判例やそれに基づいて環境省がわざわざ改正した基準値、世界保健機関のガイドラインに基づかずに、独自の算定値を防音補助工事の実施基準値として用いる理由と根拠は何か。
四 防衛省が騒音調査を行うため各演習場に設置した測定器の測定単位は、環境省や世界保健機関が用いている測定器と同じ測定単位か。
五 防衛省が防音補助工事を実施するに当たっては、騒音調査結果に基づいて住宅防音区域を定めていると承知している。そうであるならば、この区域設定に当たって線引き(コンター設定)を行うために設置した測定器の測定可能距離(能力)や設置距離(間隔)、必要機器数を演習場毎に明らかにされたい。本職が調査した限りでは、一カ所しか測定器が設置されていない演習場があれば、二〜三カ所、多いところでは五カ所という具合にばらばらであり基準がないように見受けられた。一体どのような根拠と基準、考えに基づいて測定機器の設置数を定め、線引き(コンター設定)を行ったのか明らかにされたい。
六 防衛省が平成二十二年三月二十五日付け事務次官通達で各防衛局長宛に送った通達の別紙によれば、防音補助工事の実施に当たっては、「砲撃等火薬類の使用」の頻繁な実施により生ずる音響の影響度を、当該音響の強度並びに発生の回数及び時刻等を考慮した算定式で求めるとしている。そうであるならば、政府は、米軍実弾砲撃演習の県外移転に伴う防音補助工事を実施するため、騒音調査を移転先の五演習場及び移転先以外の五演習場、合計十の演習場においてそれぞれ実施したことになる。そうであるならば、防音補助工事が実施された十の演習場毎に、同事務次官通達の別紙の二の各号で定めるところの調査結果とその測定数値、さらに別紙の一で算定する値をそれぞれ明らかにされたい。
七 質問六に関連して、防音補助工事が実施された演習場毎に、全世帯の数、そのうち防音補助工事が実施された世帯数、対象区域外とした世帯数を明らかにされたい。
八 名護市は、稲嶺進市政になった二〇一〇年から、政府に対して騒音の原因が実弾砲射撃音か廃弾処理のいずれか明らかにするよう求めてきた。これに対し政府は「米軍の運用上答えられない」とのすげない返事を行ったとのことであるが事実か、またなぜ騒音の原因を確認することが米軍の運用と関わりがあるのか、具体的に明らかにされたい。
九 沖縄防衛局は、これまで沖縄県内の米軍専用施設周辺での騒音調査を実施してこなかった。このため、名護市はキャンプ・シュワブ周辺で爆発音調査を実施した。その調査結果によれば、毎月八十デシベル以上の騒音を計測し、二〇一五年二月十七日は豊原地区で実に百六回も計測したとのことであるが政府はそのような測定値を承知しているか。
十 名護市の実施した測定値によれば、米軍の射撃演習・訓練や廃弾処理に伴い発生する騒音は、世界保健機関が定める「騒音のもたらす健康被害のガイドライン」や環境省が概ね準じたレベルを大幅に越え由々しい値となっている。そうであるならば、米軍の射撃演習・訓練や廃弾処理に伴い発生する騒音は地域住民の健康を損なう騒音に他ならず、直ちに差し止めるべきものではないか、またそれを知りながら放置し騒音を出し続けることは、地域住民の健康を損なう故意の危険な行為として直ちに取り締まるべきものと思われるが政府の認識はどうか。
十一 名護市は、政府がキャンプ・シュワブ周辺で騒音調査を行わなかった理由について政府に照会したところ、政府は「移転先の演習場と比べ使用している装備や訓練の状況等から、同等の騒音状況が生じていると想定されなかったことから、騒音調査を行わなかった」と回答した。そうであるならば、「使用している装備」や「訓練の状況」の具体的な内容、「等」の意味と範囲、名護市の調査で八十デシベルの調査結果が出ているのにも関わらず、「同等の騒音状況が生じていない」とした理由、「想定」の意味を、比較した演習場毎にそれぞれ明らかにされたい。
十二 在沖米海兵隊の砲撃部隊が県外に遠征して実弾砲射撃演習・訓練を行う場合、各演習場では市民団体等への説明会が開催されているとの報道がある。一方沖縄県内ではこれまでそのような説明会は一切開催されていないと承知している。事実の確認と政府の認識の説明を求める。
十三 政府は、沖縄で実施されていた米軍実弾砲撃演習の県外移転に伴い、十の演習場周辺住宅に対して防音補助工事を実施するため、新たに演習場周辺住宅防音事業補助金交付要綱を制定したと承知している。そうであるならば、同補助金交付要綱の規定において、@「自衛隊等」の「等」にはいかなるものが含まれているのか、A沖縄県内の米軍が県外に遠征して、指定する区域(十の演習場)で砲射撃演習を行う場合は対象となるのか、B「砲撃を主とする射撃、爆撃その他火薬類の使用」の範疇として、現在沖縄県内の米軍専用施設において米軍が日常的に実施している「射撃演習・訓練」及び「廃弾処理」は含まれるのか、Cなぜ沖縄県内の米軍専用施設である演習場や訓練場は指定する区域になり得ないのか、それぞれ明らかにされたい。
十四 自衛隊が沖縄県内の自衛隊基地や他の施設等で廃弾処理を実施する場合、所在の市町村に事前に通報若しくは説明を行っているか明らかにされたい。

 右質問する。



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