質問本文情報
平成二十八年四月二十日提出質問第二四九号
大学等における英語授業の外部化に関する再質問主意書
提出者 阿部知子
大学等における英語授業の外部化に関する再質問主意書
大学等における英語授業の外部化について、平成二十八年一月二十日付質問主意書に対する答弁書を踏まえ、以下質問する。
小中高校での英語教育を推進する上において、外国語指導助手(以下「ALT」という。)の雇用が労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年七月五日法律第八十八号))に違反する偽装請負があってはならないことから、文部科学省は、「外国語指導助手の請負契約による活用について(通知)」(二十一初国教第六十五号平成二十一年八月二十八日付 文部科学省初等中等教育局国際教育課長中井一浩より各都道府県・指定都市教育委員会主管部長宛通知)を発出したが、平成二十一年度及び平成二十二年度の「外国語指導助手(ALT)の雇用・契約形態に関する調査」によれば、平成二十二年度の調査結果でも業務委託契約によるALT雇用を行っている市町村が五百九十四に上っており、また、平成二十五年度「英語教育実施状況調査」の結果でも請負契約によるALTは二千七百八十一人で全体の二十二%である。しかしながら、これらの請負契約は平成二十一年通知に述べられているように労働者派遣法違反の疑いがある。そこで、以下質問する。
(一) 平成二十一年通知によれば、これらのALTに係る請負契約(業務委託契約)は労働者派遣法違反である偽装請負の疑いがあるが、文部科学省は平成二十一年通知を発出後、これらの地方自治体が締結している請負契約によるALTの雇用実態が派遣法違反ではないことを確認する調査を行ったことはあるか。ないとすれば、平成二十一年通知を発出しながら、適法確認のための調査を行わない理由は何か。適法確認の調査を行わないことは、文部科学省がALTに係る労働者派遣法違反の偽装請負を黙認することを、地方自治体に対して示したこととなるのではないか。
(二) 本年二月二十五日に開催された衆議院予算委員会第四分科会において、これらの地方自治体が請負業者と締結している契約内容について、当該教育委員会へ聞き取り調査をすべきとする阿部知子分科員の質疑に対し、馳大臣より「聞き取りたいと思います」との答弁があったが、この聞き取り調査の概要及び進捗状況を示されたい。
二 平成二十六年通知の発出と英語教育の質について
(一) 請負契約によるALTは、担任教師とのティームティーチングの性質上、平成二十六年通知の「業務内容の確認及び外国語会話の実演」の範囲を超えて偽装請負となりやすいが、請負契約によるALTの行為が「労働者派遣法違反ではない」ことを確認するために、文部科学省はいかなる措置を講じているか。
(二) コストの低い請負契約でALTを活用している地方公共団体は財政力が弱いところが多く、安かろう悪かろうで教育の質を低下させかねない。平成二十六年通知によりさらに教育格差を固定することにつながる恐れがあるが、財政力が弱い自治体にこそ、JETプログラムによるALTが雇用できるように財政措置をするべきではないか。
三 大学における英語授業の外部化における学校教育法上の位置づけについて
大学では、英語授業のシラバスの作成、成績評価及び単位認定を大学との雇用契約を締結している教授等の「担当専任教員」が行い、授業は請負契約又は労働者派遣契約によって派遣された「講師」が行っている場合があるが、学校教育法上、学生に単位を授与するには、シラバスの作成、成績評価及び単位認定のみならず、実際に授業を行う教育に当たる者に対して、学校が人事権、懲戒・分限権、指揮・監督権を有することが必要であるとされている。そこで質問する。
(一) 請負契約または労働者派遣契約において、業務を受託した側の「講師」は、学校教育法第九十二条第二項の「その他の職員」に該当するか。
(二) 請負契約または労働者派遣契約において、業務を受託した側の「講師」が、単独で実際の授業を行っている場合、学校教育法上「授業」を行っている者は、業務を受託した側の「講師」か、それとも、シラバス上に記載されている大学の教授・准教授の「担当専任教員」か。
(三) 請負契約によって、業務を受託した側の「講師」が、単独で実際の授業を行っている場合、ALTに関する平成二十六年通知では請負契約で可能とする限度を「業務内容の確認と外国語会話の実演」としていることから、大学でも人事権、懲戒・分限権、指揮・監督権を学校が有して学長の権限と責任の下において請負契約で可能とする範囲は「業務内容の確認と外国語会話の実演」であり、単独では授業を行うことができないと考えられるが、仮に、学校教育法上、大学では、請負契約によって事業を受託した側の「講師」が単独で授業を行うことが認められるのであれば、その理由を明確に示されたい。認められるという場合、請負契約では、発注者は請負契約によって派遣された者に対して、発注した者は指揮命令をすることができないこととの関係について、明確に示されたい。
(四) 労働者派遣契約によって業務を受託した側の「講師」が、単独で実際の授業を行っている場合、当該講師に対して担当教員は指揮監督することができるが、「担当専任教員」は実際に授業を行わなくても、シラバスの作成、成績評価及び単位認定を「担当専任教員」が行っていれば単位を授与できるとすれば、当該「担当専任教員」は、同時刻に多数の授業科目を担当することができ、また、同時刻に他大学でも授業科目を担当することができることになるが、これは、学校教育法上、許容されていることか伺いたい。
四 大学における英語授業の外部化における偽装請負の疑いについて
大学の教育現場においても、学校法人との間での雇用契約の締結をしていない講師が英語の授業を担当している場合に労働者派遣法に違反する偽装請負があってはならない。大学における英語授業の外部化については、「今後、文部科学省の主催する全国の大学を対象とした会議等を通じて、各大学における外国語科目等の教育活動の実態等を把握し、必要と認められる場合は、各大学における外国語科目等の教育活動の適正な実施を求める通知を発出することなどについて検討してまいりたい」との答弁があったが、個別の大学が文部科学省に英語授業の外部化について相談に行っても、文部科学省は、労働者派遣法についての有権解釈を行う権限がないとして、請負契約による英語の外部委託化に対して是正のための助言を明確に行わないため、相談した学校法人が「チュートリアル・イングリッシュに関しては、文部科学省の指導により契約を結んでいるので偽装請負(派遣法違反)ではない」(X大学Y学部)と発言し、紛争を招いたケースもある。そこで質問する。
(一) 文部科学省は、既に具体的な事例があり、相談にも赴いている大学があるのであるから、個別の事例について、学校教育法上、単位を授与するための条件を明確にして、厚生労働省に照会し、政府として明確な指導を行うべきであると考えるが、どうか。
(二) 大学の英語授業の外部化により、労働者派遣法違反の偽装請負とならないようにするため、英語授業の外部委託化についての契約形態、シラバス作成、授業の実際、成績評価の方法及び単位認定などに関する実態調査を行うべきであると考えるが、どうか。
(三) 文部科学省及び厚生労働省が、大学の英語授業の外部化に関して、学校教育法上の単位認定が適切に行われているか、また、契約形態上偽装請負の疑いがあるため労働者派遣法違反の偽装請負が行われていないかについて、小中高校のALTの場合と比較して、これまで放置し、法令の適切な執行の確保を躊躇してきた理由について、伺いたい。
右質問する。