質問本文情報
平成二十八年五月十日提出質問第二六九号
平成二十八年度診療報酬改定にかかる薬剤服用歴管理指導料に関する質問主意書
提出者 鷲尾英一郎
平成二十八年度診療報酬改定にかかる薬剤服用歴管理指導料に関する質問主意書
平成二十八年度診療報酬改定では、お薬手帳を持参することなく調剤薬局で調剤を受けたものに対して、五十点を算定することを可能にする薬剤服用歴管理指導料が設置されたところである。これまでの診療報酬評価においては、受益者負担の原則にのっとり給付した医療サービスに応じた「出来高払い」で算定するものとされてきた。しかしながら、本改定で示された「手帳を持参していない患者、区分番号〇〇の一に掲げる調剤基本料一(四十一点)若しくは区分番号〇〇の四に掲げる調剤基本料四(三十一点)以外の調剤基本料を算定する保険薬局に処方せんを持参した患者に対して、次に掲げる指導等の全てを行った場合は、五十点を算定する。」とした評価項目は、手帳を持参し、他科診療の有無や併用薬剤の確認を受けるなどの薬剤服用歴管理指導を受けた者よりも、「お薬手帳」という他科受診を確認する術がなく、実質的には専門性に劣るサービスとなるかもしれない受益者に対して、通常より高額な点数を課すものである。これは、これまで原則としてきた受益者負担の原則を根底から覆すものであり、国民目線で斟酌するならば理解に窮する技術料と断じざるを得ない。
また、サービス提供者たる保険薬局にして、受益者たる国民が手帳を持参せず、処方薬剤にかかる説明を不要と主張した場合には、評価対象となるような医療サービスを提供していないにもかかわらず、通常よりも高額な報酬を得ることになり、むしろ「手帳なし・説明なし」の国民を歓迎するような風潮を生みかねない危険性も有する。もちろん職業的に高い倫理を有する薬剤師のことであるから、そのような事態を憂慮する必要はないと信じるところであるが、とはいえ、サービス無き所に評価を与えるような報酬体系は税金が投入され、公正な執行が望まれる公的医療制度の枠組みにあっては、厳に慎むべきと思う。
聞くところによれば、「お薬手帳の有用性を説明し、また、有用なお薬手帳がない状態で情報を収集する難しさ」を評価し、それ故に通常より高い点数になったという説明があるというが、保険調剤においては、お薬手帳の有無によらず、患者の服薬情報や他科受診の状況を確認聴取するのは、調剤を疑義なく完遂する上で必要な手順であり、「調剤基本料」で評価されているというのが、これまでの診療報酬の考え方と理解するところである。
先述したように、薬剤師は、調剤に疑義がある場合には、調剤をすることができないと「薬剤師法第二十四条」に明確に定めるところであり、保険調剤におけるこうした既往歴や服用歴の有無を調剤時に確認するのは、この疑義を解消するために必要な行為であろう。しかして、手帳の有無によらず、調剤において服用歴や他科受診の有無を確認するのは当然であり、基本料として評価すべきものと考える。こうした診療報酬上の受益者負担並びに出来高評価の原則に基づき以下に政府の見解を求めるものとする。
其の一 「手帳を持参していない患者、区分番号〇〇の一に掲げる調剤基本料一(四十一点)若しくは区分番号〇〇の四に掲げる調剤基本料四(三十一点)以外の調剤基本料を算定する保険薬局に処方せんを持参した患者に対して、次に掲げる指導等の全てを行った場合は、五十点を算定する。」につき、手帳を持参せぬ場合、手帳を持参した場合に比して、受益者負担の原則にたち、どのような便益が保険薬局によって国民に与えられると考えるのか政府の見解如何。
其の二 右の場合、手帳持参なしの折、保険薬局は、手帳持参ありに比して具体的にどのような付加的サービスを給付していると考えているのか政府の見解如何。
其の三 薬剤師が、薬剤師法で定める「処方せん中の疑義」を明らかにするのは義務であると考えるが、具体的に政府の考える処方せん中の疑義とはどのような場合なのか政府の見解如何。
其の四 処方せん中に疑義があり解消するのは、薬剤師法の定める義務であると考えるところであるが、それにも関わらず、本改定では、疑義を解消するために通常行うべき手順を遂行するに過ぎない患者の服薬情報収集をして、情報収集に手間がかかるとしている。繰り返しになるが、疑義なく調剤を行うために必要な服薬歴にかかる情報収集は、手帳の有無によらず実施されるものと考えられるが、政府の見解如何。
右質問する。