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平成二十八年十一月二十二日提出
質問第一六〇号

南スーダンの現地情勢と自衛隊の駆けつけ警護の任務遂行に関する質問主意書

提出者  逢坂誠二




南スーダンの現地情勢と自衛隊の駆けつけ警護の任務遂行に関する質問主意書


 平成二十八年十一月二十一日、安全保障関連法に基づき、国連平和維持活動(「PKO」という。)の新しい任務である「駆けつけ警護」が付与された陸上自衛隊の第十一次隊の先発隊が南スーダンの首都ジュバに到着した。
 自衛隊の任務は、自衛隊法第三条第二項第二号で「国際連合を中心とした国際平和のための取組への寄与その他の国際協力の推進を通じて我が国を含む国際社会の平和及び安全の維持に資する活動」であることも規定されており、国際社会への貢献は重要な任務の一つである。
 しかしながら、南スーダンの現地情勢は混迷を深めていると言わざるを得ない。
 二〇一一年七月、南スーダンは、スーダンから分離、独立し、新生国家としての体裁づくりに着手したものの、与党スーダン人民解放運動内の派閥抗争(キール大統領派対マシャール前副大統領派)が激化した。二〇一三年十二月十五日には、首都ジュバで大統領警護隊同士の衝突が発生し、その後各地で衝突が続いた。当事者間の対話を通じた問題解決を目指し、政府間開発機構(IGAD)の仲介による和平協議が実施され、二〇一五年八月、IGAD及び関係諸国などによる調停の下で「南スーダンにおける衝突の解決に関する合意文書」(「合意文書」という。)が関係当事者によって署名された。合意文書署名を受けてキール大統領は無期限衝突停止宣言の大統領令を発出し、二〇一六年四月にマシャールが第一副大統領に就任し、国民統一暫定政府が設立され、合意の履行が進展した。
 他方、二〇一六年七月には、ジュバ市内でキール大統領派とマシャール第一副大統領派との間で対立が激化して激しい戦闘が続き、多くの死者を出した。これを契機としてジュバ、さらには南スーダンの治安情勢が一時急速に悪化した。これと同時に合意文書の一方の当事者であるマシャールは国外に脱出したため、停戦の合意は崩壊したと見るべきであり、わが国でいうPKO五原則の前提は失われている。
 このような観点から、以下質問する。

一 南スーダンの首都ジュバさらには南スーダンの治安情勢について政府の把握しているところを明らかにされたい。
二 二〇一六年七月、ジュバ市でキール大統領派とマシャール第一副大統領(当時)派との間で対立が激化し、激しい戦闘が続き、多くの死者を出した(「七月の戦闘」という。)。これを契機としてジュバ、さらには南スーダンの治安情勢が一時急速に悪化した。これと同時にマシャールは国外に脱出したと承知している。このような二〇一六年七月以後の南スーダンの治安の悪化、さらにはマシャールの国外脱出は事実であるのか。政府の見解を示されたい。
三 七月の戦闘の後、マシャールが国外脱出したため、合意文書の一方の当事者が国内に存在しなくなり、合意文書の有効性は失われたと思われる。この合意文書の有効性とともに、PKO五原則でいう「停戦の合意」も前提を欠くものになったと考えるが、政府の見解を示されたい。
四 安倍総理は、平成二十八年十月十一日の参議院予算委員会で七月の戦闘に関して、「戦闘行為ではなかった、しかし武器を使ってですね、武器を使って殺傷あるいは物を破壊する行為はあったと、このように申し上げているわけであります」「我々は、衝突、言わば勢力と勢力がぶつかったという表現を使っている」と述べつつも、「戦闘をどう定義付けるかということについては今までこの予算委員会等においても国会等においても定義がないものであります」とも述べている。安倍総理はいまだ定義が詳らかではないため、「戦闘」ではなく、便宜的に「衝突」と述べているだけであり、PKO五原則を遵守するのであれば、そもそも「戦闘」の定義を明確にすべきではないか。さらに当該議論に関連して「戦闘」の定義を明らかにされたい。
五 安倍総理は、「我々は、衝突、言わば勢力と勢力がぶつかった」と述べつつも、一方の勢力は大統領派で、もう一方の勢力は副大統領派である。これは内戦を意味し、国および国に準ずる組織の紛争ではないか。また当該事案は、「紛争当事者の間で停戦合意が成立していること」および「当該国連平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的立場を厳守すること」に反するのではないか。政府の見解を示されたい。
六 右の問に関連し、ジュバのみならず南スーダンではPKO五原則の前提は失われており、駆けつけ警護の任務遂行の前提も失われていると思われるが、政府の見解を示されたい。
七 現地に滞在する複数の邦人からジュバの深刻な現状が報告されている。例えば、十一月三日の毎日新聞は、日本国際ボランティアセンターの今井高樹・スーダン現地代表にインタビューし、七月の戦闘に関して、「わずか四日間でジュバ市内のおよそ四万人もの人たちが避難民になりました。家族を殺された人もいた。机上で議論するのではなく、もっと事実を見るべきだ」「和平協定にサインをした一方のリーダーのマシャール氏が国外に逃亡しているので、その時点で停戦合意はなくなったとみるのが常識的な見方です。「紛争当事者との合意」についても、テレインホテルを襲撃したのが政府軍だったように、もし自衛隊がNGOを保護するため駆け付ける場合には政府軍と対峙することも想定されます。自衛隊の任務を「当事者との合意」の上で実施するという枠組みそのものが今の状況では非現実的になっている」ことを明らかにしている。政府はこのような現地の情勢を把握しているのか、またこのような情勢は、PKO五原則でいう停戦の合意の崩壊を意味するのではないか。政府の見解を示されたい。
八 かつてイラク戦争に関する議論で、当時の小泉純一郎総理は、平成十七年一月二十七日の衆議院予算委員会で「どこが非戦闘地域ですか、どこが戦闘地域ですかという議論になったんです。私が、非戦闘地域、わかるわけない、当たり前でしょう。だれに聞かれたって、総理大臣に聞かれたって、防衛庁長官に聞かれたって、日本に、ここにいて、私がどこが非戦闘地域か、どこが戦闘地域か、イラクに行って調べたってわかりませんよ」との答弁をしているが、現在の南スーダンの情勢は当該答弁と同様で、日々刻々変化しており、実際のところ誰も把握しきれていないのではないか。政府も南スーダンのどこで停戦の合意が成立しており、どこでは崩壊しているのかは把握できていないのではないか。政府の見解を示されたい。
九 右の問いに関連し、南スーダンの情勢は誰も正確には把握できず、政府は、自衛隊の駆けつけ警護が行われる地域が停戦の合意がなされている地域であると考えているのではないか。情勢を政府として時々刻々把握しているのか。政府の見解を示されたい。

 右質問する。



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