質問本文情報
平成二十八年十一月二十八日提出質問第一六九号
ロシア太平洋艦隊の国後島および択捉島へのミサイル配備に関する質問主意書
提出者 逢坂誠二
ロシア太平洋艦隊の国後島および択捉島へのミサイル配備に関する質問主意書
平成二十八年十一月二十二日、ロシアのプラウダは、“The Russian Defense Ministry has deployed anti-missile systems Bal and Bastion on the Kuril islands of Iturup and Kunashir, TASS reports.”(タス通信が伝えるところでは、ロシア国防省は、クリル諸島の国後島と択捉島に対ミサイルシステムのバルとバスチオンを展開した)と報じた。これらのミサイルシステムについて、“These units are part of the 72nd Coast Missile Brigade of the Pacific Fleet.”(これらの部隊は、太平洋艦隊の第七十二沿岸ミサイル部隊の一つ」)であり、ロシア太平洋艦隊の部隊のものであると報じている。
安倍総理は十二月十五日にロシアのプーチン大統領と下関で会談するものと承知しているが、この国後島および択捉島へのミサイル配備はロシア側の何らかの外交上の示唆を与えるものと推測するとともに、これに対する日本政府の対応を確認するため、以下質問する。
二 外務省はホームページで、「北方四島はいまだかつて一度も外国の領土となったことがない我が国の領土です」と明示している。北方領土がわが国の領土であるということは、日本政府による国家作用が行われなければならないが、国後島や択捉島にロシア太平洋艦隊がミサイルシステムを配備することを放置すればこれに反する。ロシア太平洋艦隊による国後島および択捉島へのミサイル配備による、わが国の国内法上、国際法上の問題はないのか。あるとすればどのようなものか。政府の見解を示されたい。
三 プラウダによれば、“Coastal missile complex Bastion is equipped with supersonic missiles P-800 Onyx. The system is able to destroy surface ships of different classes and types. One system may have up to 36 missiles to be able to protect more than 600 km of coastline.”(このミサイル群は超音波のミサイルP−800オニキスを装備している。このシステムは異なるクラスとタイプの艦艇を撃破することができる。一つのシステムには、六百キロメートル以上の海岸線を防御することができる最大三十六個のミサイルを搭載できる)と示されているが、地対艦ミサイルシステムのバスチオンの射程は六百キロメートルであることは事実か。政府の把握しているところを具体的に示されたい。
四 右の問に関して、六百キロメートルの射程を持つならば、北海道全域を射程にし、ひいては津軽海峡以北の海域で展開しようとする海上自衛隊や米海軍の艦船を接近拒否できることを意味するが、かかる認識で良いのか。また政府はバスチオンの配備の目的をどのように想定しているのか。見解を示されたい。
五 プラウダによれば、“Armed with low-altitude subsonic anti-ship missiles X-35, the Bal missile system is able to destroy ground and surface targets of the enemy at a distance of about 130 km.”(低高度で亜音速で航行する対艦ミサイルX−35を装備したバル・ミサイルシステムは、およそ百三十キロメートル離れた地上や目標の標的を破壊することができる)と示されているが、地対艦ミサイルシステムのバルの射程は百三十キロメートルであることは事実か。政府の把握しているところを具体的に示されたい。
六 右の問に関して、バルが百三十キロメートルの射程を持つならば、北海道の網走から釧路を結ぶ直線の以東をほぼ射程にし、わが国の北方領土周辺の海域で展開しようとする海上自衛隊や米海軍の艦船を接近拒否できることを意味するが、かかる認識で良いのか。また政府はバルの配備の目的をどのように想定しているのか。見解を示されたい。
七 岸田外務大臣は、平成二十八年十一月二十五日の衆議院安全保障委員会で、北方領土の返還交渉に関連し、当該地域が「現在、ロシアから日米安保条約の適用除外について求められていることはない」と述べているが、そもそも日米安全保障条約第五条でいう「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め」ることの「日本国の施政の下にある領域」に日本とアメリカ合衆国以外の第三国の合意によって、例外的に日米安全保障条約第五条の適用を除外する地帯を設けることは、現行の日米安全保障条約に照らし合わせて可能なのか。さらには当該合意後、日米安全保障条約を改定する必要があるのではないか。政府の見解を示されたい。
八 日露交渉の結果、北方領土が返還され、わが国の施政権が回復されると、当該地域は自動的に日米安全保障条約の適用地域になるのか。政府の見解を示されたい。
九 バスチオンの射程が六百キロメートルとすれば、その射程は津軽海峡にも及ぶことになる。またバスチオンは高度二万メートルを亜音速で巡航した後、目標物の手前で降下し、地上の目標物も破壊できると承知している。このようなバスチオンの射程内に大間原子力発電所を建設し、そこで極めて有毒性の高いMOX燃料を使用することは、ロシアに有事の時の戦略目標を提供するものであり、わが国の国家戦略上も望ましくないのではないか。また大間原子力発電所の運営の判断は事業者が行うものという趣旨の回答を政府からしばしばいただいているが、このような新たな不安定要素が加わった場合、政府は積極的に関与すべきではないか。見解を示されたい。
十 国の安全保障政策は最悪の事態を想定して行うべきである。本来、国境線の画定で両国が合意に達していない地域から攻撃を受け得る領域に原子力発電所などの戦略目標になるものを置くべきではない。ロシア太平洋艦隊が大間原子力発電所を攻撃した場合、政府はその被害についてのシミュレーションを行ったことがあるのか。政府の見解を示されたい。
十一 北方領土に展開するロシア太平洋艦隊が大間原子力発電所を攻撃した場合、被害はどの程度であると想定するのか。想定される死傷者数、放射性物質の拡散の程度など、北海道の函館市を含む道南地域の被害、青森県の被害はどの程度だと想定するのか。政府の見解を示されたい。
右質問する。