質問本文情報
平成三十年二月十六日提出質問第八五号
コインチェックで生じた不正送金に伴う日本円返金の課税に関する質問主意書
コインチェックで生じた不正送金に伴う日本円返金の課税に関する質問主意書
平成三十年一月二十八日、コインチェックは、「不正に送金された仮想通貨NEMの保有者に対する補償方針について」を発表し、「仮想通貨NEMの不正送金に伴い、対象となる約二十六万人のNEMの保有者に対し」、「NEMの保有者全員に、日本円でコインチェックウォレットに返金」することを明らかにした。二月十三日以後、コインチェックによる日本円での返金がはじまった。
二月六日、麻生財務大臣は、コインチェックが日本円で返金する場合、返金額が顧客の取得価格を上回っていれば所得税の課税対象とする可能性を示唆した。閣議後の記者会見で「預かっている金を返しただけでは(対象に)ならないが、(利益を上げたかの)形による」と述べた。
コインチェックが顧客に返金する日本円にどう課税するかは検討の余地がある。昨今の仮想通貨の急激な高騰にともない、多くの顧客の保有するNEMの返金時の価格は、取得価格よりも上回っているものが多いと考えられる。取得価格よりも値上がりしていれば、差額は利益とみなされるため、課税対象になることは否定できない。そうなれば、不正送金の被害を受けた顧客が強制的に利益を確定させられることで、これらの被害を受けた顧客は納税を迫られる。
ただし、所得税法では、交通事故の損害賠償金などは非課税と定めている。国税庁ホームページでは、「交通事故などのために、被害者が次のような治療費、慰謝料、損害賠償金などを受け取ったときは、これらの損害賠償金等は非課税となります」として、「不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害について受ける損害賠償金など。 具体的には、事故による車両の破損について受ける損害賠償金などです」と例示されている。
旧ライブドアの粉飾決算事件では、株価急落で同社が株主らに支払った賠償金について、課税対象と主張する国税当局と株主側が訴訟で争ったものの、非課税とする判決が確定している。
平成二十五年十二月十三日の神戸地裁の判決によると、原告の兵庫県南あわじ市の夫婦は平成二十一年、和解が成立したライブドア側から賠償金約一億八千万円を受け取ったが、洲本税務署はこの賠償金を課税所得とみなし、平成二十二年六月、過少申告加算税を含め計約三千九百万円を追徴課税した。原告側は「賠償金は粉飾決算による株価下落分の補填であり、利得でない」などとして提訴し、判決は、原告側の主張をほぼ認め、約二千九百万円の課税取り消しを命じた。国税側は控訴を断念し、判決確定している。
このような事実を踏まえ、以下質問する。
二 麻生財務大臣は、コインチェックが日本円で返金する場合、返金額が顧客の取得価格を上回っていれば所得税の課税対象とする可能性を示唆し、「預かっている金を返しただけでは(対象に)ならないが、(利益を上げたかの)形による」と述べたが、政府としてはどのような課税方針でいるのか。当該事案に関して、その課税のあり方を検討しているのか。政府の見解如何。
三 所得税法では、交通事故の損害賠償金などは非課税と定めている。「不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害について受ける損害賠償金など」については、非課税としているが、コインチェックによる当該事案も、「不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害」であり、日本円による返金は、「損害賠償」であるとみなし、非課税にすべきではないか。政府の見解如何。
四 今後、仮想通貨の不正アクセスなどで顧客の保有する資産に損害が生じ、それを仮想通貨交換業者が損失補填する場合に、繰り返し被害が生じることを避けるために、当該仮想通貨ではなく、日本円などで返金されることを顧客が望んだ場合、その返金については、「不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害について受ける損害賠償金」に該当するとみなし、非課税にすべきではないか。政府の見解如何。
右質問する。