質問本文情報
平成三十年二月二十一日提出質問第九三号
旧優生保護法下における強制不妊手術に関する質問主意書
旧優生保護法下における強制不妊手術に関する質問主意書
旧優生保護法第一条では、「この法律は、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護することを目的とする」ことが示され、同法第三条第一項では、「医師は、左の各号の一に該当する者に対して、本人の同意並びに配偶者(届出をしないが事実上婚姻関係と同様な事情にある者を含む。以下同じ。)があるときはその同意を得て、優生手術を行うことができる。但し、未成年者、精神病者又は精神薄弱者については、この限りでない」とし、「本人若しくは配偶者が遺伝性精神病質、遺伝性身体疾患若しくは遺伝性奇形を有し、又は配偶者が精神病若しくは精神薄弱を有しているもの」などに優生手術を行うことができることが定められていた。
平成三十年二月十九日、北海道は、旧優生保護法下で障害などを理由に不妊手術を施されたとみられ、個人名記載の資料が残る男女は計千百二十九人で、最年少は十一歳の女児だったことを公表した(「本事案」という。)。北海道は、手術の適否を審査する北海道優生保護審査会の申請書などを調査し、これまで判明したのは計八百四十一人分としていたが、新たに資料が見つかり、千九百六十二年度から千九百七十三年度に計千百二十九人分が確認されたと発表した。男性二百三十三人、女性八百九十六人の氏名や手術の申請理由となる疾病などが記載された文書が見つかったと報じられている。
二月二十日、公明党の山口代表は記者会見で、「本人の意に反して、手術が行われた実態があるとすれば、人権上問題がある」と述べた。その上で、「一部の地域で実態が明らかになりつつあり、対象に未成年も含まれていたということなので、与党としてはもちろんだが、幅広い理解を得て、救済の在り方を見いだす必要がある」とし、超党派での救済のための立法措置を検討すべきだとの考えを示した。
このような事実を踏まえ、政府の方針を確認したいので、以下質問する。
二 本事案について、該当する者の現時点での生存について、政府は把握しているのか。
三 厚生省公衆衛生局精神衛生課が昭和三十二年四月二十七日に作成した、同課課長名での各都道府県衛生主管部(局)長あての文書(「厚生省文書」という。)では、「例年優生手術の実施件数は逐年増加の途を辿っているとはいえ予算上の件数を下回っている」と示され、「実施件数を比較してみますと別紙資料のとおり極めて不均衡である」と指摘され、「手術対象者が存在しないということではなく、関係者に対する啓蒙活動と貴殿の御努力により相当程度成績を向上せしめ得られるものと存ずる」、「本年度における優生手術の実施につきまして特段の御配意を賜わりその実をあげられるよう御願い申し上げる」と記載されていると報じられているが、この内容は事実であるのか。政府の見解如何。
四 厚生省文書は、優生保護の予算消化のために、「関係者に対する啓蒙活動と貴殿の御努力により相当程度成績を向上せしめ得られるもの」と叱咤激励する内容であると読み取れるが、過去の文書とはいえ、当時の国の政策が誤っていたことを認め、本事案に該当する者および遺族に政府は謝罪すべきではないか。政府の見解如何。
五 本事案は、国家賠償法第一条でいう「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる」に該当することは否定されないという理解でよいか。政府の見解如何。
六 五に関連して、本事案では、最も古いものは五十年以上前の事案であると推定される。このような場合、国家賠償法第四条でいう「国又は公共団体の損害賠償の責任については、前三条の規定によるの外、民法の規定による」として、損害賠償請求権は消滅時効に該当するのではないか。政府の見解如何。
七 本事案について、実態を把握するための作業チームなどを政府内に設置すべきではないか。政府の見解如何。
八 本事案は、過去数十年前に遡るものが多く、当時の文書、証言なども十分保存されておらず、国家賠償法に基づく損害賠償訴訟によるのでは、本事案の多くの該当者の救済を図ることは困難である。ハンセン病問題などの前例があるように、特別立法による解決を模索すべきではないか。政府の見解如何。
右質問する。