質問本文情報
平成三十年三月六日提出質問第一二四号
加害者によるDV等被害者の子の戸籍謄本の写しの交付請求に関する質問主意書
加害者によるDV等被害者の子の戸籍謄本の写しの交付請求に関する質問主意書
配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者(「DV等被害者」という)については、市区町村に対して住民基本台帳事務におけるDV等支援措置を申し出て、「DV等支援対象者」となることで、加害者からの「住民基本台帳の一部の写しの閲覧」、「住民票(除票を含む)の写し等の交付」、「戸籍の附票(除票を含む)の写しの交付」の請求・申出があっても、これを制限あるいは拒否する措置が講じられる。
ただし、現住所が記載されない戸籍謄本はDV等支援措置の対象外とされている。戸籍法第十条では、「戸籍に記載されている者又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書の交付の請求をすることができる」とされており、直系の血のつながりがある者は理由なくその戸籍謄本を請求できるため、DV等被害者の元夫などの加害者であっても、子の戸籍謄本を取得できる。母と子が同一戸籍にある場合、現在のDV等被害者の婚姻状況についての情報などを知ることができる。
現行制度を利用することで、DV等被害者の元夫などの加害者であっても子の戸籍謄本を取得できるため、DV等被害者が新たなパートナーと出会い、結婚しようとしても、入籍を躊躇する事例が見られ、DV等被害者からは、「怖くて結婚できない」という指摘がなされている。戸籍謄本の全部事項証明書には、その者の本籍地や両親の名前、加害者との間に生まれた子どもなどが記載される。現在のパートナーとの間に子どもができ、その子を戸籍に入れていたとすれば、その出生日や出生地が記載される。パートナーと入籍すれば、さらに「配偶者の氏名」や婚姻届を受理した自治体名などが記載される。
住所は記載されていないので身の危険はないとの指摘もあるが、配偶者の名前やその間に生まれた子の情報が分かれば、現代のネット社会においては、インターネット上で検索すると、顔写真や職歴、出身地、現住所が類推される情報を得られる場合が多い。会員制交流サイト(SNS)、フェイスブックなどの急速な普及の結果、戸籍に記載された情報からDV等被害者やその子の居場所を特定できる懸念が生じている。
このような事実を踏まえ、以下質問する。
二 一に関連して、実際には、「子どもの戸籍から元妻の居場所を探りたい」旨、子の戸籍謄本の請求時に当該市町村の窓口で明言しない限り、「市町村長は、前項の請求が不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができる」に相当しないのではないか。
三 現在のネット社会においては、その者の名前等をインターネットで検索すると、顔写真や職歴、出身地、現住所が類推される情報を簡単に得られる場合が多い。インターネットや会員制交流サイト(SNS)、フェイスブックなどの急速な普及で、戸籍に記載された情報からDV等被害者の居場所が特定される懸念があると思われるが、これに対して政府は、DV等被害者やその子の人権を擁護するため、加害者からの子の戸籍謄本の請求に関して、対応策を検討したことはあるか。政府の見解如何。
四 法務省は、当面の間、DV等被害者の支援措置の対象になり、加害者が子の戸籍謄本を請求した場合、相続など正当な理由がない限り、当該市町村の窓口で拒むように通達を出すべきではないか。政府の見解如何。
五 現在、DV等被害者については、市区町村に対して住民基本台帳事務におけるDV等支援措置を申し出て、DV等支援対象者となることで、加害者からの「住民基本台帳の一部の写しの閲覧」、「住民票(除票を含む)の写し等の交付」、「戸籍の附票(除票を含む)の写しの交付」の請求・申出があっても、これを制限あるいは拒否する措置が講じられるが、これに「戸籍謄本の写しの交付」も追加すべきであろう。戸籍法第十条そのものの改正、もしくは、戸籍法第十条第二項でいう「不当な目的」を明示するため、戸籍法第十条に新たに条文を追加し、DV等被害者の支援措置の対象になっている場合、加害者が子の戸籍謄本を請求することを制限あるいは拒否する規定を設けるべきではないか。政府の見解如何。
右質問する。