質問本文情報
平成三十年三月十四日提出質問第一四六号
国税庁長官への懲戒処分に関する質問主意書
国税庁長官への懲戒処分に関する質問主意書
平成三十年二月十三日、衆議院予算委員会で麻生財務大臣は「国税庁長官としては適任だと判断したもので、事実、国税庁長官としての職務を適切に行っている」と述べるなど、繰り返し佐川前国税庁長官については「適材適所」であるとの評価を行ってきた。
三月九日、麻生財務大臣は、同日辞任した佐川宣寿国税庁長官について、国有財産行政に関する信頼を損ねたとして、減給二十%、三カ月の懲戒処分(「本処分」という。)にすると発表した。麻生財務大臣は「捜査や調査の結果次第では、さらに重い懲戒処分に相当する可能性も否定できない」とも発言した。
三月十二日、学校法人「森友学園」との国有地取引に関する決裁文書の書き換え問題をめぐり、麻生財務大臣は記者からの取材に応じ、十四件の文書に書き換えがあったことを発表した。
これに関して、麻生大臣は記者の取材に答え、「佐川の答弁と決裁文書の間に齟齬があった、誤解を招くということで佐川の答弁に合わせて書き換えられたのが事実だ」、「変だから処罰されたんだ。それによって佐川が減給の上で辞めるということになった」と述べた。書き換えの責任者について問われた麻生大臣は、「書き換えの一番トップはその時の担当者で、そんなに偉いところではないと思う。最終的な決裁として、佐川が理財局長だったから、その意味で理財局長となろうと思う」とも述べた。
財務省が三月十二日に行った「決裁文書についての調査の結果」の公表以後、麻生大臣は、国税庁長官を既に退任し、国家公務員ではなくなった佐川宣寿氏について、敬称を付けず、呼び捨てしている。また「変だから処罰された」と述べるなど、懲戒処分の理由も明確ではない。
国税庁長官の懲戒処分に関して疑義があるので、以下質問する。
二 人事院事務総長発の「処分説明書の様式および記載事項等について」(昭和三十五年四月一日職職−三五四)では、「国家公務員法第八十九条に定める説明書」には、「「根拠法令」の欄には、処分の根拠となる法令の条、項及び号を記入すること」と示されているが、本処分においては、どのような法令に基づいているのか。具体的に示されたい。
三 麻生大臣は「佐川の答弁と決裁文書の間に齟齬があった、誤解を招くということで佐川の答弁に合わせて書き換えられたのが事実」で、「変だから処罰された」と述べているが、かかる事実はどのような根拠法令に反するのか。政府の見解如何。
四 麻生大臣は「書き換えの一番トップはその時の担当者で、そんなに偉いところではない」、「最終的な決裁として、佐川が理財局長だった」と発言しているが、現時点では、当時の理財局長であった佐川宣寿氏は文書の決裁の最終責任者であったため本処分を受けたのであり、具体的な「書き換え」の指示、作業に関与していないという理解でよいか。政府の見解如何。
五 三月十二日に行った「決裁文書についての調査の結果」の公表以後、麻生大臣は佐川宣寿氏について言及する場合、敬称を付けず「佐川」と呼び捨てしているが、どのような理由からなのか。政府の見解如何。
六 従来、麻生大臣は、「国税庁長官としては適任だと判断したもので、事実、国税庁長官としての職務を適切に行って」いた旨の見解を繰り返し示していたが「捜査や調査の結果」が未だ十分ではないことを鑑みれば、既に国家公務員の身分を持たない佐川宣寿氏を呼び捨てにする行為は、佐川宣寿氏を貶め、責任が全てそこにあるかの印象を国民に与えるのではないか。政府の見解如何。
七 三月十四日、菅官房長官は定例記者会見で、記者からの「これまでの佐川さんの答弁は虚偽だったのか、それとも誤りだったのか」との質問に対し、「佐川長官の国会答弁については、それが虚偽であったとは財務省も説明していないと承知しています」と述べた。官房長官や財務省が、佐川長官の国会答弁が虚偽であったとは説明していないと認識しているにも関わらず、退職を申し出た国税庁長官に本処分を行うことの妥当性をどのように考えているのか。「虚偽」の国会答弁を行っていないのであれば、本処分や国税庁長官の辞任は妥当なものであったのか。また、その場合、本処分にかかわる「国家公務員法第八十九条に定める説明書」に「根拠法令」を記載する妥当性は失われるのではないか。政府の見解如何。
八 七に関連して、官房長官のいう「佐川長官の国会答弁については、それが虚偽であったとは財務省も説明していない」ことと、麻生大臣のいう「佐川の答弁と決裁文書の間に齟齬があった、誤解を招くということで佐川の答弁に合わせて書き換えられたのが事実」で、「変だから処罰された」との発言の整合性はないのではないか。政府の見解如何。
九 三月十三日、経済同友会の小林喜光代表幹事は記者会見で、財務省の決裁文書の改ざんをめぐる麻生財務大臣の監督責任について「辞めるかどうかは政治家の考え方、美学の問題だが、民間企業なら自分が知ろうが知るまいが、普通は辞める」と述べた上で、「立法府を無視することは国民を無視するのと同じだ。民主主義の重大な問題で、行政の長としての監督責任は明確にある」と指摘している。麻生大臣は一連の責任を取り、辞任すべきではないか。安倍総理の見解如何。
右質問する。