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平成三十年四月十七日提出
質問第二三一号

イラクにおける自衛隊の日報における「戦闘」の法的意味に関する質問主意書

提出者  逢坂誠二




イラクにおける自衛隊の日報における「戦闘」の法的意味に関する質問主意書


 平成三十年四月十四日、「存在しない」とされてきたイラクにおける自衛隊の「日報」が見つかったと報じられた。イラクにおける自衛隊の活動を記した「日報」は、これまでに合わせて四百三十五日分、一万四千頁以上が発見されている。防衛省は同月十六日にこれらの「日報」を公開したが、確認したところ、これらの「日報」の中に「戦闘」(「本件戦闘」という。)という言葉が複数箇所に記載されている。
 平成二十九年七月二十四日、安倍総理は衆議院予算委員会で、「私は、基本的に、日報がもしあれば直ちに出すべきだという考え方をずっと申し上げてきたわけであります。戦闘という言葉について国会でも議論になりましたが、定義を決めている戦闘行為とは違う意味で、一般的、いわば国語辞典的な意味での戦闘という言葉を使う、これはあり得る」と答弁している。
 我が国も締結国の一つであるジュネーヴ諸条約追加議定書の第一追加議定書の第四十三条1では、「紛争当事者の軍隊は、部下の行動について当該紛争当事者に対して責任を負う司令部の下にある組織され及び武装したすべての兵力、集団及び部隊から成る。このような軍隊は、内部規律に関する制度、特に武力紛争の際に適用される国際法の諸規則を遵守させる内部規律に関する制度に従う」と規定され、同条2で、「軍隊の構成員は、戦闘員であり、すなわち、敵対行為に直接参加する権利を有する」と示され、かかる「軍隊」の構成員による敵対行為が「戦闘」であると解される。
 内閣法制局による「憲法関係答弁例集(第九条・憲法解釈関係)」(平成二十八年九月)では、「戦闘行為」とは「(国際的な武力紛争の一環として行われる)人を殺傷し、物を破壊する行為」であり、「国又は国に準ずる組織の間において生ずる武力を用いた争い」であるとされる(同書、十四頁)。
 このように国際法上の「戦闘」と憲法解釈上の「戦闘」には差異があり、イラクにおける自衛隊の日報における「戦闘」の法的意味について確認したいので、以下質問する。

一 安倍総理のいう「国語辞典的な意味での戦闘」とはどのようなものか。政府の見解如何。
二 本件戦闘は、「国語辞典的な意味での戦闘」であるものの、「定義を決めている戦闘行為」ではないという理解でよいか。
三 本件戦闘が「定義を決めている戦闘」とは違う理由は、「国又は国に準ずる組織の間において生ずる武力を用いた争い」ではないから、という理解でよいか。
四 当時のイラクは、いわゆるPKO五原則でいう、紛争当事者間で停戦合意が成立していること、当該地域の属する国を含む紛争当事者がPKOおよび日本の参加に同意していることの要件が満たされている状態であったものの、「国又は国に準ずる組織」ではない武装勢力による散発的な発砲などが発生していたと承知している。このために、「定義を決めている戦闘」とは違うという状態であると判断したとの理解でよいか。
五 本件戦闘が「定義を決めている戦闘」とは違うのは、「部下の行動について当該紛争当事者に対して責任を負う司令部の下にある組織され及び武装したすべての兵力、集団及び部隊」によるという要件を満たさず、「内部規律に関する制度」を持たない勢力によるものであるとの理解でよいか。
六 政府の憲法解釈上、「国又は国に準ずる組織」とは、すべからく、ジュネーヴ諸条約追加議定書の第一追加議定書でいう「部下の行動について当該紛争当事者に対して責任を負う司令部の下にある組織され及び武装したすべての兵力、集団及び部隊」であり、「内部規律に関する制度」を持つ、という理解でよいか。政府の見解如何。
七 六に関連して、政府の憲法解釈上、「国又は国に準ずる組織」と、ジュネーヴ諸条約追加議定書の第一追加議定書でいう「部下の行動について当該紛争当事者に対して責任を負う司令部の下にある組織され及び武装したすべての兵力、集団及び部隊」で「内部規律に関する制度」を持つものとの間に齟齬があるとすれば、それはどのような点か。政府の見解如何。
八 「国又は国に準ずる組織」ではないものでも、「部下の行動について当該紛争当事者に対して責任を負う司令部の下にある組織され及び武装したすべての兵力、集団及び部隊」を持ち得るし、「内部規律に関する制度」を持っていることは排除されない。本件戦闘が「定義を決めている戦闘」とは違うという状態であるのは、むしろ、ジュネーヴ諸条約追加議定書の第一追加議定書でいう「戦闘」ではないからではないか。すなわち、「部下の行動について当該紛争当事者に対して責任を負う司令部の下にある」戦闘ではないからではないか。政府の見解如何。

 右質問する。



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