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平成三十年十二月五日提出
質問第一一五号

建設工事の足場の組立て等における手すり先行工法採用の法制度化に関する質問主意書

提出者  前原誠司




建設工事の足場の組立て等における手すり先行工法採用の法制度化に関する質問主意書


 足場は、建設工事において広く使用されており、工事に従事する者の安全を確保するため、労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)は、事業者に対して足場の組立、解体、変更の作業時及び使用時(以下「足場の組立て等」という。)における危険の防止措置を義務付けている。厚生労働省は、足場からの墜落・転落による労働災害を防止するため、「手すり先行工法に関するガイドライン」(平成十五年四月一日基発第〇四〇一〇一二号)及びその改定(平成二十一年四月二十四日基発第〇四二四〇〇一号の別紙)(以下「手すり先行工法等に関するガイドライン」という。)並びに「足場等からの墜落等に係る労働災害防止対策の徹底について」(平成二十一年四月二十四日基安発第〇四二四〇〇三号)以来、数次にわたり発出されている「足場からの墜落・転落災害防止総合対策推進要綱の改正について」(平成二十七年五月二十日基安発〇五二〇第一号)の別添「安衛則の確実な実施に併せて実施することが望ましい『より安全な措置』等について」において、手すり先行工法の積極的採用を建設関係の事業主団体等に求めている。しかし、今日に至るまでの間、建設労働災害に占める墜落・転落事故割合は四割を超え続け、抜本的な解決方向が見えない状況にある。このことから、平成二十八年の第百九十二回国会において衆・参両議院の全会一致で議員立法として「建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律」(平成二十八年法律第百十一号)(以下「建設職人基本法」という。)が制定された。
 手すり先行工法については、後記のとおり、数次にわたり国会での質疑があり、国の直轄工事(足場の組立て等において、手すり先行工法による二段手すりと幅木の設置を土木工事共通仕様書等で義務付けている。)では、同工法を採用した現場において、足場からの墜落による死亡事故はなかった旨の国会答弁があり、建設職人基本法の目指す建設工事従事者の安全健康の確保にとって有効な工法であることは明白である。
 このような状況に鑑み、建設工事の足場の組立て等における手すり先行工法採用を法制度化するべきと考え、以下のとおり質問する。

一 厚生労働省に設置された「建設業における墜落・転落防止対策の充実強化に関する実務者会合」(以下「実務者会合」という。)の第一回(平成三十年五月三十一日)における配付資料四によれば、手すり先行工法の採用率は、平成二十四年度から平成二十九年度にかけて、全体では三十・二%から四十四・七%に上昇しているが、そのうち、同期間中、民間では十七・五%から三十四・五%の上昇となっている。民間の採用率が全体よりも低い水準で推移している原因について、政府はどのように分析・評価しているのか、民間の採用率の向上に向けてどのような取組を行っているのか。
二 国会では、手すり先行工法の有効性について、八年前に既に「国土交通省が発注した工事において手すり先行工法等に関するガイドラインに基づいて足場を設置した工事では墜落死亡事故は発生していない」旨の国土交通省の答弁(第百七十六回国会衆議院予算委員会議録第二号、平成二十二年十月十二日)がある。さらに最近では、「平成十五年度の土木工事共通仕様書において、仮設工事の施工に当たって適用すべき諸基準の一つとして手すり先行工法等に関するガイドラインを位置付けているところ、平成二十七年度及び平成二十八年度において、手すり先行工法を採用した現場では、足場からの墜落による死亡事故はなかった」旨の国土交通省の答弁(第百九十三回国会参議院国土交通委員会会議録第九号、平成二十九年四月十八日)及び「実務者会合の委員は、手すり先行工法の有効性を認識しており、一定の有効性があるものと思う」旨の厚生労働大臣の答弁(第百九十七回国会参議院予算委員会会議録第二号、平成三十年十一月七日)がある。
 さらに、建設職人基本法に基づき平成二十九年六月に閣議決定された基本計画に「公共工事のみならず全ての建設工事について建設工事従事者の安全及び健康の確保を図ることが等しく重要であることに鑑み、墜落・転落災害の発生状況や関連する施策の実績等を踏まえつつ、墜落・転落災害防止対策の充実強化について調査・検討を行った上で速やかに実効性のある対策を講ずる。」と明示されている。厚生労働大臣答弁にある実務者会合においては、当該基本計画の趣旨を体し、「足場からの墜落防止措置に関する調査研究会」(平成十九年五月設置)、「足場からの墜落防止措置の効果検証・評価検討会」(平成二十二年八月設置)等の従来の検討会等での轍を踏むことのないよう、既に遅きに失したとはいえ、手すり先行工法採用の法制度化に向けて、その結論を出すべき時期に来ていると思料する。
 1 厚生労働省は、これまで数次にわたり、手すり先行工法をはじめとする足場の安全対策のための検討会等を開催し、また、関連通達をその都度発出したが、手すり先行工法採用を法制度化することがなかった。その間に多くの建設工事従事者が墜落・転落により被災してきた。法制度化できない理由(障壁)をどう認識しているか。
 2 建設工事の足場からの墜落・転落による事故を防止するためには、国、地方公共団体、民間等の発注者を問わず、全ての建設工事の足場の組立て等の現場において、工事を受注した事業者に対して、厚生労働大臣の意向を汲み、手すり先行工法採用を法制度化する方向で、実務者会合は結論の取りまとめを目指すべきではないか。仮に、それが困難であればその理由(障壁)を明らかにされたい。また、その理由(障壁)は、足場からの墜落・転落によって被災した者やその家族の立場を真に受け止めたものと言えるのか併せてお答えいただきたい。
 3 実務者会合開催要綱の趣旨(第一回配付資料一)に「労働安全衛生法令の改正も視野に必要な方策について検討すること」とあるが、この文言は、手すり先行工法の採用を視野に入れた表現なのか。
 4 従来の検討会等は、直接足場工事に従事していない主に経営者側団体の代表により構成されていた。今回、実務者会合と銘打っている以上、従来の検討会等との差異があるのか。なお、その差異は、真に被災した者とその家族の立場を反映させることと理解してよいのか。

 右質問する。



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