衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成三十年十二月五日提出
質問第一二〇号

東京大学医学部附属病院における不適合患者の死亡事件といわゆる医療事故調の対処に関する質問主意書

提出者  尾辻かな子




東京大学医学部附属病院における不適合患者の死亡事件といわゆる医療事故調の対処に関する質問主意書


 東京大学医学部附属病院(以下、東大病院)で心臓のカテーテル治療を受けた四十一歳の男性が、治療から十六日後の二〇一八年十月七日に亡くなった。
 この死亡事件は、特定非営利活動法人(ジャーナリズムNGO)ワセダクロニクルが、同年十一月二十六日に「【速報】東大病院で心臓治療の患者が術後十六日で死亡、院内からもミス指摘の声/医療事故調に届け出ず、「病死・自然死」で処理」との速報を流し、発覚している。ワセダクロニクルは同年十一月三十日にも「カルテが語る真実−検証 東大病院 封印した死(1)」という見出しで続報を出しており、その後、月刊誌『選択』が同年十二月一日に「東大病院で『手術死亡事故』隠蔽事件」とのタイトルで報じている。
 医療法では、医療が原因とみられる予期しなかった死亡は、厚生労働大臣が指定した第三者機関である医療事故調査・支援センター(以下、医療事故調)に届け出なくてはならないと定められている。しかし、報道によると、東大病院は男性の死を単なる「病死」として処理し、医療事故調への届け出を行っていない。
 当該男性が受けた治療は、同年四月に保険適用されたばかりの「マイトラクリップ」という最新治療であり、脚の血管から入れたカテーテルを心臓内に進めて、機能が低下した僧帽弁の形を修復するものである。胸を切り開いて行う手術よりも「低侵襲」が利点として挙げられているが、心臓全体が弱っていると一部の弁だけを治しても効果を得られず、弁の修復で心臓内の血流が妨げられて、かえって状態が悪化する危険も指摘されている。そのため当該治療は、心エコー検査で心臓の機能(左心室の機能)が基準値以上でなければ原則的に行えないと承知している。
 ところが、報道によれば、拡張型心筋症という難病を患っていた当該男性の心臓は、この基準値をクリアできないほど弱っており、東大病院が行った心エコー装置の計測値は、基準値をはるかに下回っていたとされている。しかしこの治療を担当した医師は、この計測値を採用せず、「見た目の数値」を用いて保険を通したと報じられている。東大病院の倫理委員会もこの解釈を認め、治療は行われたものの、治療は失敗した。
 報道された記事によれば、男性の心臓はすでに変形がひどく、カテーテルを僧帽弁に到達させることすらできなかったとされている。さらにこの治療中に、カテーテル操作を誤って肺に穴を開け、気胸が生じたにも関わらず術後も長く見逃し、男性を死に至らしめた可能性についても報じられているところである。
 これらの報道を踏まえ、以下質問する。

問一 報道によれば、東大病院は男性の治療を進めるにあたり、機器で計測した正確な数値ではなく、見た目で判断した心エコー数値を採用してもよいかどうか「医事課」に問い合わせ、保険適用上は問題ないことを確認したとカルテに記載している。
  1 右記「医事課」は「厚生労働省医事課」をさしているということで間違いないか。当該案件について東大病院から「医事課」に「見た目で判断した心エコー数値」の採用について問い合わせがあったのは事実か。それに対し「医事課」が「保険適用上は問題ない」と回答したのは事実か。
  2 機器の計測数値があるにもかかわらず、「見た目の数値」を採用することは、保険適用上適切か。適切であるとするならその根拠を明らかにされたい。適切でないとするなら、どのような問題があると考えるか。
問二 マイトラクリップの保険適用基準をすべてあげられたい。
問三 左室駆出率が三十%未満の患者の治療を、健康保険を使って行うことは可能か。
問四 マイトラクリップの治療は全例登録が義務付けられているが、どこに何件登録されているか。本件について報告・登録は行われているか。
問五 マイトラクリップの保険適用後、保険を使わずに左室駆出率三十%未満の治療を行ったケースはあるか。政府が把握している事例をすべてあげられたい。
問六 本件以外に、マイトラクリップの保険適用後、保険を使って左室駆出率三十%未満の治療を行ったケースはあるか。政府が把握している事例をすべてあげられたい。
問七 本件以外に、マイトラクリップの保険適用後、「見た目で判断した心エコー数値」を採用して治療の保険適用が認められたケースはあるか。政府が把握している事例をすべてあげられたい。
問八 東大病院はこの死亡事案について、院内で対応を協議したが、医療事故調に届け出ることはなかったと報じられている。塩崎厚生労働大臣は衆議院厚生労働委員会(平成二十九年六月九日)で「医療事故調査制度は、医療事故の再発防止に向けての自主的な調査を行うことを委ねられた医療界の取り組みと、医療安全を願う国民と医療機関との間の信頼関係がなければ成り立たない、こういう制度です。」と述べ、医療事故調の制度の信頼関係に言及している。もし報道が事実とするならば、医療行政に対する国民の信頼性と医療従事者の努力を根幹から損ねる事態だと考えるが、政府の見解如何。

 右質問する。



経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.