質問本文情報
平成三十一年四月十一日提出質問第一三六号
刑法の性犯罪規定の見直し等に関する質問主意書
刑法の性犯罪規定の見直し等に関する質問主意書
性犯罪の厳罰化等を内容として第百九十三回国会において成立した、刑法の一部を改正する法律(平成二十九年法律第七十二号。以下「同法」という。)は、平成二十九年七月十三日の施行から間もなく二年となる。同法附則第九条は「政府は、この法律の施行後三年を目途として、性犯罪における被害の実情、この法律による改正後の規定の施行の状況等を勘案し、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」との検討条項を規定している。法務省では、同規定に基づき、平成三十年四月二十日に、「性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループ」を設置し、性犯罪に関する総合的な施策検討に資するための性犯罪の実態に関する各種調査・研究を着実に実施することとし、目途とされる同法施行後三年より早期の段階から、性犯罪に関する施策検討に向けた各種調査や、研究を実施しているものと承知している。今後も、性犯罪規定の真の見直し議論に資する調査や研究が実施されることを強く期待するものである。
ところで、法制審議会が昭和四十九年に法務大臣に答申した、改正刑法草案(以下「草案」という。)においても、刑法の性犯罪規定の見直しに関する検討がなされており、当時、草案を反映した法律案が国会に提出されることはなかったものの、その検討については、今後の性犯罪規定の見直しの議論に資する部分も多くあるものと考えている。これらの点を踏まえ、刑法の性犯罪規定の見直し等に関する政府の見解について、以下質問する。
二 草案の第二百九十六条では、暴行又は脅迫による強姦(第一項)及び抗拒不能の状態にある女子に対する準強姦(第二項)を同一の条文に「強姦」として規定することとしていた。これは、それぞれの犯罪行為の性質からみると、暴行又は脅迫を用いる場合と抗拒不能状態を利用しあるいはその状態に陥れる場合とは共通する面が多いためであるとしているが、過去にこのような検討をしているのであれば、同法施行後三年を目途とした検討の機会に、強制性交等罪と準強制性交等罪を同一の条文に規定することも検討すべきではないか、政府の見解を伺う。
三 草案の第三百一条は被保護者の姦淫罪について、第一項では「身分、雇用、業務その他の関係に基づき、自己が保護し又は監督する十八歳未満の女子に対し、偽計又は威力を用いて、これを姦淫した者」を処罰することとしていた。改正刑法草案説明書によれば、同項における「身分、雇用、業務その他の関係に基づき自己が保護し又は監督する」とは、ある程度継続的な社会的関係に基づいて十八歳未満の女子を保護・監督し、その意思決定に影響を及ぼし得ると通常考えられるような立場に立っていることをいい、福祉施設の管理者や寄宿舎の監督者が自己の業務上年少者を保護・監督する場合、あるいは、徒弟、住込み等の形態で年少者を雇用する場合など、十八歳未満の女子に対して全人格的な生活上の保護・監督関係の生ずる場合がこれに当たると説明されている。このような場合は、刑法第百七十九条第二項の監護者性交等罪における「現に監護する」にも当たるのか、その解釈について政府の見解を伺う。
四 草案の第三百一条第二項は、精神障害の状態にある女子を保護し又は監督する者がその地位を利用して行う姦淫を処罰する規定となっていた。当時、当該規定を新設しようとした理由は何か。また、当該規定の新設は草案を反映した法律案が国会に提出されなかったため実現しなかったものであるが、同法律案が国会に提出されるに至らなかった理由は何か、政府の見解を伺う。
五 精神障害の状態にある者を保護し又は監督する者がその地位を利用して行う姦淫を処罰する規定の新設については、前回の性犯罪規定の見直しの際において検討されなかったのか、政府の見解を伺う。
六 草案において精神障害の状態にある女子を保護し又は監督する者がその地位を利用して行う姦淫を処罰する規定の新設を検討したのであれば、今回の同法施行後三年を目途とした検討の機会に、改めて検討すべきではないか、政府の見解を伺う。
右質問する。