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令和元年五月二十二日提出
質問第一八一号

ハクビシンの特定外来生物指定に関する質問主意書

提出者  早稲田夕季




ハクビシンの特定外来生物指定に関する質問主意書


 二〇一二年九月に閣議決定された「生物多様性国家戦略二〇一二〜二〇二〇」においては、愛知目標を踏まえ、外来生物法に基づく特定外来生物のみならず、我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種のリストを作成することを国別目標の一つとされ、環境省と農林水産省は、二〇一二年度から有識者からなる会議を設置して検討した結果、二〇一五年三月に「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(生態系被害防止外来種リスト)」を発表し、首都圏を含め全国的に分布を拡大しているハクビシンを生態系被害防止外来種のうちの総合対策外来種のうちの重点対策外来種として掲載した。しかしまだ特定外来生物には指定していない。そこで以下、質問する。

一 アライグマによる全国の神社仏閣への被害は、つとに知られているところである一方で、京都市内で二〇一八年に研究捕獲されたハクビシン八十七頭のうち四十六%は社寺で捕獲されている。ハクビシンによる神社仏閣への被害について、政府はどのような見解をお持ちか。あきらかにされたい。
二 一九五二年の日本哺乳類動物学会の例会以来、ハクビシンが在来種か外来種か議論があったが、重点対策外来種としての掲載は、この長年の論争に終止符を打ち、ハクビシンは在来種ではなく、国外由来の外来種であると国として決定したと理解してよいか。「国内で化石が存在しないこと、狩猟文化のあった縄文時代の遺跡からハクビシンの骨は出土していないこと、分布の不連続性に加えて、遺伝子分析から日本のハクビシンの一部は台湾を起源とすることが明らかになった」との環境省の見解は承知しているので、そのような答弁でお茶を濁すことなく、ハクビシンは国外由来の外来種であるかどうかだけ、端的にお答えいただきたい。また農林水産省の野生鳥獣被害防止マニュアル二〇〇八年三月版では「外来種か在来種であるかについては諸説があり、未だ断定されていない。」とされていたが、十年ぶりに改定された二〇一八年三月版では「もともとは日本にいなかった動物と考えられる」との表記に変更されていることも承知しているので、そのような答弁でお茶を濁すことなく、ハクビシンは国外由来の外来種であるかどうかだけ、端的にお答えいただきたい。
三 総合対策外来種は、生態系等への被害のおそれがあるため、国、地方公共団体、国民など各主体がそれぞれの役割において、防除(野外での取り除き、分布拡大の防止等)など総合的に対策が必要な外来種であり、重点対策外来種は甚大な生態系等への被害が予想される外来種であるが、ハクビシンの防除についての実施体制は都道府県、市町村によりバラバラであり、近隣の自治体担当者同士の防除の必要性についての認識もバラバラである。例えば東京都や神奈川県は自治体に対し、アライグマと区別せずに防除への補助を行っているが、隣県の埼玉県や千葉県ではアライグマのみに防除の補助を出す一方で、ハクビシンについては鳥獣保護法上の有害鳥獣捕獲として市町村に委ねられている。その結果、埼玉県や千葉県下ではアライグマと区別せずに防除している自治体もあれば、隣接していながらアライグマのみしか防除していない自治体もある。このような現状では、ハクビシンの分布の拡大が防止できず、甚大な生態系等への被害を防ぐことができていないのではないかと考えるが、政府の見解をあきらかにされたい。
四 ハクビシンは首都圏を含め全国的に分布を拡大しているとの認識を政府はお持ちか。お持ちでないなら分布の実態を調査し把握するべきではないか。また九州での最初の生息確認はいつか。四国に江戸時代から生息していたとの考えに立つ環境省は、九州での生息確認が最近でしかないことを、どのように解釈しているのか。
五 ハクビシンの防除を民間事業者に委託している自治体の中には、その最終処分(殺処分)まで確認してから委託費を支払っている自治体と、捕獲までしか確認していない自治体がある。後者の場合、殺処分せずに他所で放獣する民間事業者がいることを政府は承知しているか。さらには、自治体によっては自治体自身が放獣を指示しているところもあることを承知しているか。承知していないならば、環境省と農水省は協力して、ハクビシン防除についての全国の自治体の対応について実態を調査し把握すべきではないか。
六 特定外来生物であるアライグマは住民からの目撃通報だけで防除を行う一方、ハクビシンについては具体的な生態系等への被害を証明しないと防除を行っていなかったり、そもそもハクビシンの防除自体を行っていない自治体がある。そのような自治体では、見た目が似ているアライグマかハクビシンか確認できない段階ではその防除を行わない。その結果、特定外来生物のアライグマの防除も実効性が上がらないことになっているのではないか。この事実を承知していないならば、アライグマの効果的な防除の観点からも、その防除の実態について、調査し把握するべきではないか。
七 ハクビシンを重点対策外来種とする以前の、二〇一四年三月に策定された特定外来生物被害防止基本方針によれば、「原則として、概ね明治元年以降に我が国に導入されたと考えるのが妥当な生物を特定外来生物の選定の対象とする」理由として「我が国において生物の種の同定の前提となる生物分類学が発展し、かつ、海外との物流が増加したのが明治時代以降である」とされているが、そうであればハクビシンが明治以前から我が国にいたという科学的根拠も薄弱であることになるのではないか。特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律の理念、趣旨に照らして、明治以降の導入種のみに限定をすることがなぜ妥当と考えるのか。それこそ非科学的な態度ではないか。政府の見解をあきらかにされたい。
八 政府は、ハクビシンを特定外来生物に指定するためには、概ね明治元年以降に我が国に導入されたこと、つまり江戸時代に生息していなかったことを科学的に証明することが必要不可欠と考えているのか。それとも「原則として」であって、ハクビシンの生息分布が今以上に広がり、生態系等への被害が今以上に甚大となり、全国の自治体等から特定外来生物への指定要望があがった場合は、現行の特定外来生物被害防止基本方針でもハクビシンを特定外来生物に指定することはありえるのか。それとも特定外来生物被害防止基本方針の改定が不可欠と考えるか。

 右質問する。



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