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令和元年六月五日提出質問第二〇八号
原子力規制委員会が職業上の放射線防護のための国際基準の和訳を非公開としていることに関する質問主意書
提出者 阿部知子
原子力規制委員会が職業上の放射線防護のための国際基準の和訳を非公開としていることに関する質問主意書
被ばくから労働者を保護するための安全基準の和訳を、原子力規制庁が国民の税金を投じて既に委託翻訳したにもかかわらず、IAEA(国際原子力機関)の許諾が必要であることを理由に資料請求に応じようとせず、非公開としている。この対応は税金の使い方としてあまりにも不適切、不可解であり、自主、民主、公開を謳った原子力基本法の精神にも反しているため、以下、順を追って質問する。
国会図書館によれば、原子力規制庁が「平成二十九年度放射線対策委託費(国際放射線防護調査)事業」においてGSG−7(DS453)の和訳を入手しているが、原子力規制庁によると公開にはIAEAの許諾が必要であるため、現在のところ非公開とされており、入手できなかったという。
原子力規制庁に確認すると、「御指摘の資料につきましては、翻訳物の刊行についてIAEAからの許諾を受けていないため、提出は差し控えさせていただきたいと存じます」との回答があった。
1 国会図書館からの回答について五月二十四日に確認するまで、原子力規制庁が仮訳の有無について、自ら回答してこなかったのは何故か。
2 GSG−7(DS453)の翻訳の刊行物を求めているわけではなく、仮訳を求めているのに、勝手な解釈で提出を差し控えたのは何故か。
二 原子力規制委員会は「平成二十九年度放射線対策委託費(国際放射線防護調査)事業」を公益財団法人原子力安全研究協会(以下、協会)に委託し、協会より二〇一八年三月に「平成二十九年度原子力規制庁委託成果報告書 国際放射線防護調査」を受け取り、原子力規制委員会のウェブサイトで公開している。
この報告書の第三章「IAEA安全基準文書等の翻訳」には、「本調査では、IAEA安全基準文書等のうち政府および原子力規制庁の施策にとって重要性又は緊急性の高いものについて、規制庁と協議のうえ選定し、以下の翻訳を行った」と説明が書かれており、GSG−7(DS453 Occupational Radiation Protection)はそのリストの一番上にある。
1 規制庁がDS453は政府および原子力規制庁の施策にとって重要性または緊急性の高いものだと判断したのは何故か。
2 それを原子力規制委員会と原子力規制庁と抱え込んで非公開としているのは何故か。
三 東京電力福島第一原発事故以降に成立させた議員立法「原子力規制委員会設置法」の立案、審議過程では、IAEAの安全基準等が和訳され、幅広く共有された上で議論がなされた。少なからずIAEAの考え方が反映されて原子力規制委員会が設置されたと理解している。
今日においては、原発事故収束作業に従事する労働者の健康管理問題が懸念され、国会等で議論されている重要な段階である。原子力規制委員会の設置時とは異なり、翻訳済みの安全基準が公開できないと述べる根拠はあるのか。IAEAと日本との間にはそのような制約はないものと理解している。公開の制約が、日本政府の考え方であるなら、明文化された根拠を示されたい。IAEAの考え方により仮訳ですら非公開とする合理的な根拠があるなら示されたい。
四 「平成二十九年度放射線対策委託費(国際放射線防護調査)事業」の全体の予算はいくらか。その第三章「IAEA安全基準文書等の翻訳」を含めた予算はいくらで、これまでに、DS453 Occupational Radiation Protectionの翻訳は、職業上の放射線防護施策、すなわち、被ばくから労働者を保護するために、どのように活用されてきたのか。あるいはまったくまだ活用されていないのか。
五 国会図書館が見つけた二〇一八年二月一日発行の「FB News」に掲載されたレポート「IAEA新放射線安全指針DS453(Occupational Radiation Protection)に関する国際ワークショップの大洗開催について」によれば、民間企業である(株)千代田テクノルが、二〇一七年十月二日から六日まで五日間、日本政府の代理として「職業上の放射線防護:Occupational Radiation Protection」に関する国際ワークショップを茨城県大洗町でIAEAと共同開催したことになっている。
1 (株)千代田テクノルが日本政府の代理として「職業上の放射線防護」をテーマに国際ワークショップを開催したのは、事実か。
2 (株)千代田テクノルが日本政府の代理として「職業上の放射線防護」をテーマに国際ワークショップを開催したのは、なんのためか。
3 このレポートには、ワークショップでDS453の内容が講義されたことが記され、「おわりに」で「DS453はGSF Part7としてIAEAから刊行されると同時に和訳が開始され、日本語版として発行される予定である」としている。これは(株)千代田テクノルと原子力規制庁との共通認識ではないのか。
4 このレポートから一年が経過し、DS453は翻訳済みである。翻訳の許諾が取れていないという理由で非公開とするのは詭弁ではないか。
右質問する。