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令和元年八月一日提出
質問第二号

ホルムズ海峡など公海又は他国領海における船舶攻撃に対する我が国の対応に関する質問主意書

提出者  後藤祐一




ホルムズ海峡など公海又は他国領海における船舶攻撃に対する我が国の対応に関する質問主意書


 本年六月十三日にホルムズ海峡において我が国の海運会社である国華産業が運航するパナマ船籍のタンカー「コクカ・カレイジャス」が被弾した事案が発生した。また、七月二十五日、ポンペオ米国務長官は、「ホルムズ海峡の航路が維持され、原油や他の製品の交易が継続できることに利益を見出している国々は、みな有志連合に加わる必要がある」、「英国、フランス、ドイツ、ノルウェー、日本、韓国、オーストラリアに(参加を)要請した」と発言をしている。
 今後の我が国の対応及びその法令上の根拠を明らかにすることなどが必要であることから、次の事項について質問する。なお、二以降の質問はいずれも個別事例についてではなく一般論としての法令解釈を問うているので、個別事例についてはお答えできないといった答弁は避けられたい。

一 自衛隊派遣の可能性について
 1 七月十六日の記者会見において岩屋防衛大臣は、「現段階で、自衛隊を派遣することは考えておりません」と答弁していたが、七月二十六日の記者会見において有志連合の参加に対する現状のスタンスについて聞かれた菅官房長官は「今後の対応については予断を持って発言することは控えたいと思います」と自衛隊派遣の可能性を否定していない。六月十三日の被弾事案以降、我が国に関係する船舶に対する危険が高まった事実はあるのか。また、現時点で自衛隊を派遣することを考えているのか。
 2 六月二十一日の記者会見において岩屋防衛大臣は「事案の背景、攻撃主体などについてはっきりとお答えする段階ではございません。それだけの確たる情報をまだ持っておりません」、「情報を収集・分析して、こういうことだと確定的なことが言えるようになれば、お知らせすることができると思います」と答弁している。本事案の背景、攻撃主体などについて回答されたい。
二 存立危機事態について
 平成二十六年七月十四日の衆議院予算委員会において安倍総理は、「同(ホルムズ)海峡を経由した石油供給が回復しなければ、世界的な石油の供給不足が生じて、我が国の国民生活に死活的な影響が生じ、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されることとなる事態は生じ得る」と、ホルムズ海峡における存立危機事態の可能性を認めている。石油供給途絶を理由とする存立危機事態の認定は、一般論として、国又は国に準ずる組織による武力行使により、我が国への石油供給が回復せず、我が国の国民生活に死活的な影響が生じる状況に至っていない限り、なされることはないと考えてよいか。
三 重要影響事態について
 1 重要影響事態法第一条において「重要影響事態」は「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」と定義されているが、一般論として、我が国船舶の安全を他国軍隊が守ることが見込まれる又は守ることを要請することができる場合は、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれ」はないと考えてよいか。
 2 一般に、重要影響事態に際して、重要影響事態法別表第一中の役務の提供、例えば「補給」を行うために必要な哨戒活動は別表第一に含まれうると考えてよいか。逆に、別表第一のいずれの役務の提供のためでもない哨戒活動は、重要影響事態法に基づく後方支援活動や捜索救助活動として行うことはできないと考えてよいか。
四 国際平和支援法に基づく国際平和共同対処事態について
 1 国際平和支援法第一条の「国際平和共同対処事態」に際しては、同法第二条に基づき「船舶検査活動」を行うことができるが、「重要影響事態等に際して実施する船舶検査活動に関する法律」第二条によれば、「船舶検査活動」は、「貿易その他の経済活動に係る規制措置であって我が国が参加するものの厳格な実施を確保する目的」でなければ行えないことを確認されたい。
 2 イランに関し、「貿易その他の経済活動に係る規制措置であって我が国が参加するもの」は現在存在するか。
五 PKO法に基づく国際連携平和安全活動について
 「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」に基づく「国際連携平和安全活動」は、公海上の船舶攻撃に対する活動に関し適用されることはないと考えてよいか。
六 海上警備行動について
 1 平成二十一年三月十三日の衆議院安全保障委員会において、コ地政府参考人は、自衛隊法第八十二条に基づく海上警備行動の対象について、「保護の対象となる船舶につきまして、日本籍船、それから外国籍船でありましても日本人が乗船する外国籍船、それから、我が国の船舶運航事業者が運航する外国籍船、または、我が国の積み荷を輸送している外国籍船でありまして、かつ我が国国民の安定的な経済活動にとって重要な船舶、こういうものを保護の対象とするというふうに考えることとしたものでございます。」と答弁している。海上警備行動の保護の対象となる船舶について現時点でも同じ解釈か。
 2 同じく平成二十一年三月十三日(海賊対処法制定より前)の衆議院安全保障委員会において、コ地政府参考人は「海上警備行動による保護の対象とならないような外国籍船が現に海賊に襲撃されている場面に遭遇したというような場合に、例えばヘリコプターをそこに飛ばして状況を確認したりとか、それから他国の艦艇に状況を通報する、そうしたような事実上の行為はすることが可能であろう。」と答弁している。海賊対処法制定以前の段階で、この「事実上の行為」の法令上の根拠は何か、条文を明示して答えられたい。
七 海賊対処法と国際法上の普遍的管轄権について
 1 海賊対処法第二条の「海賊行為」は「私的目的」で行う行為に限定されているが、国又は国に準ずる組織による船舶に対する攻撃及びいかなる組織か不明である組織による船舶に対する攻撃について、海賊対処法に基づく対処は可能か。
 2 平成二十一年三月十三日の衆議院安全保障委員会で大庭政府参考人は「国連海洋法条約では、すべての国が最大限に可能な範囲で公海等における海賊行為の抑止に協力するということにされておりますとともに、関係者や関係船舶の国籍を問わず、いずれの国も管轄権を行使することが認められております」と答弁しており、この「国連海洋法条約の趣旨にかんがみまして」、「我が国が海賊行為へ適切かつ効果的に対処するために必要な事項についての法的根拠を定める」とし、国連海洋法条約に基づく普遍的管轄権の存在が海賊対処法の国際法上の根拠となっていることを答弁している。公海や他国領海における船舶攻撃への対処に関し、海上警備行動による保護の対象とならない外国籍船に対し、海賊行為の抑止、自衛権の行使以外の目的で、自衛隊による武力行使ないし武器使用が認められる国際法上の根拠は存在するか。
八 防衛省設置法第四条第十八号の「調査及び研究」
 1 P3C等哨戒機による公海における哨戒活動は、防衛省設置法第四条第十八号の「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと」に基づいて行われている場合が多いと考えてよいか。もし違う条文が根拠であるなら具体的に示されたい。
 2 海上警備行動という「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究」として、海上警備行動による保護の対象外となる船舶に関し、哨戒活動を行うことは法的に可能か。
 3 ソマリア沖、アデン湾における海賊対処として行う哨戒活動に比べ、ホルムズ海峡における哨戒活動は、地対空ミサイルによる迎撃などの危険がより大きいものと考えるがどうか。

 右質問する。



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