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令和元年十二月三日提出
質問第一二八号

原子力損害賠償法に関する質問主意書

提出者  山崎 誠




原子力損害賠償法に関する質問主意書


 東京電力ホールディングス株式会社(以下、「東電」という)の福島原子力発電所事故による損害賠償と損害損失は、現時点で二十二兆円と見積もられている。これらの負債にかかわらず、原子力損害の賠償に関する法律(以下、「原賠法」という)第七条(損害賠償措置の内容)と第十六条(資金の援助)に基づき成立した原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(以下、「支援機構法」という)の原子力損害賠償交付金(以下、「交付金」という)等による対応により東電は事業継続している。
 支援機構法第四十一条(資金の申込)第一項の一には「当該原子力事業者に対し、要賠償額から賠償措置額を控除した額を限度として、損害賠償の履行に充てるための資金を交付すること(以下「資金交付」という。)」と書かれている。
 そして、二〇一六年十二月二十日に閣議決定された「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」(以下、「閣議決定」という)では、二十三頁の注十二で「現時点において、・・・交付国債の発行により対応すべき費用としては、被災者・被災企業への賠償費用は約七.九兆円程度、除染特措法に基づく除染の費用は約四.〇兆円程度(・・・補償金約〇.二兆円による充当分を除いた額)、中間貯蔵施設の費用は約一.六兆円程度と見込まれる。これらを踏まえ、・・・交付国債の発行限度額(現行九兆円)を十三.五兆円に引き上げる。」とされている。
 同じく閣議決定の二十四頁では「交付国債の償還費用の元本分は、原子力事業者の負担金を主な原資として、支援機構の利益の国庫納付により回収される。」と書かれている。さらに二十六頁では、「被災者・被災企業への賠償については、電力自由化が進展する環境下における受益者間の公平性や競争中立性の確保を図りつつ、国民全体で福島を支える観点から、福島第一原発の事故前には確保されていなかった分の賠償の備えについてのみ、広く需要家全体の負担とし、そのために必要な託送料金の見直し等の制度整備を行う。」となっている。
 これらの法令等の適用、解釈、運用などの確認のため以下質問する。

一 交付金は、要賠償額から賠償措置額を控除した額を限度として交付すると規定されている。支援機構法上で規定される要賠償額とは、現時点では損害賠償費用七.九兆円、除染の費用四.〇兆円、中間貯蔵の費用一.六兆円の計十三.五兆円ということか。費用が違うとすればいくらになるか明らかにされたい。
二 閣議決定では、被災者・被災企業への賠償費用、除染費用、中間貯蔵施設の費用を十三.五兆円の交付国債で対応するとしている。原賠法上、除染費用、中間貯蔵施設の費用は、損害賠償費用といえるのか。損害賠償費用であるとすれば、原賠法上の法的根拠は何によるのか示されたい。また、除染費用、中間貯蔵施設の費用は、損害賠償費用ではなく損害損失費用であり、損害保険でカバーするべき費用ではないのか。政府の見解を示されたい。
三 原子力損害賠償補償契約に関する法律(以下、「補償契約」という)に基づき東電に支払われた補償金は、福島第一原子力発電所分千二百億円、福島第二原子力発電所(以下、「福島第二原発」という)分六百八十九億円が支払われているが、福島第二原発から原賠法の賠償対象となる放射性物質の放出はあったのか。放射性物質の放出がないとすれば、福島第二原発への補償金六百八十九億円は、何に対して、何を根拠として支払われたのか。何故、福島第二原発の支払い補償金は千二百億円ではなく六百八十九億円なのか。
四 支援機構法第四十一条にのっとれば、要賠償額から賠償措置額千八百八十九億円を控除した十三.五兆円は、原賠法第六条の損害賠償措置の不足額との認識で良いか。
五 損害賠償措置に必要な要賠償額を、仮に十三.五兆円とするならば、賠償措置額千二百億円は、少なくとも十三.五兆円にしなければ、原賠法第六条(損害賠償措置を講ずべき義務)のいう損害賠償措置は担保されないのではないか。担保されるとするのであれば、その理由を示されたい。
六 賠償措置額千二百億円を見直さない理由を示されたい。
七 政府の補償契約の補償金額を十三.五兆円に見直すことにより、損害賠償措置は担保されると言えるのではないか。その見直しができないのであれば、損害賠償措置が担保されているとは言えず、原子力損害賠償法に基づき、原発を運転することはできないのではないか。政府の見解を示されたい。
八 現時点での東電の事故炉等処理費用は八兆円と見積もられている。原子力施設、設備などの損失をカバーする原子力財産保険があるが、今回、東電は原子力財産保険に加入していたのか。加入していなかったとすれば、その理由は何か。明らかにされたい。また、加入していたならば、今回、原子力財産保険から東電に保険金はいくら支払われたのか。加えて、現在、東電は原子力財産保険に加入しているのか。加入していないとすれば、その理由は何か。政府として承知していることを明らかにされたい。
九 原子力事業者で二〇一一年以前に原子力財産保険に加入していた事業者はどこか。また、二〇一一年以降に加入した事業者はあるか。政府として承知していることを明らかにされたい。
十 二〇一一年の福島原発事故後に、原子力財産保険の保険料及び保険金は見直されたのか。政府として承知していることを明らかにされたい。
十一 原子力事業者が八兆円の負債を抱えて法的整理した場合、誰が事故処理等をするのか。原子力損害損失に対してはどのような措置をとることとなっているのか。原賠法とは別に原子力財産保険等の損害損失保険の制度化が必要なのではないか。政府の見解を示されたい。
十二 東電の事故炉等処理費用八兆円は、送配電事業の超過利潤を廃炉等積立金として積み立てられており、電力消費者が負担させられているが、これは本来、原子力財産保険で対処されるものではないか。政府の見解を示されたい。
十三 閣議決定において「交付国債の償還費用の元本分は、原子力事業者の負担金を主な原資」にするとしている。これは「東電への交付金の返済は負担金で行う」との理解で良いか。また、「交付国債の償還費用の元本分」とは、交付金十三.五兆円との理解で良いか。
十四 東電には交付金の返済義務はあるのか。東電に交付金の返済義務があるとすれば、東電は交付金を特別利益として計上することは出来ないのではないか。反対に、東電に交付金の返済義務がないとすれば、閣議決定の「交付国債の償還費用の元本分は、原子力事業者の負担金を主な原資」とすることはできないのではないか。政府の見解を示されたい。
十五 支援機構の交付国債の償還費用を負担金で回収するということは、実質的に東電の損害賠償交付金十三.五兆円の返済を東電以外の原子力事業者も負担することになる。なぜ、東電と利害関係のない他原子力事業者が東電の負債である損害賠償費用を分担負担しなければならないのか。また、東電の負債である損害賠償費用を東電以外の原子力事業者が負担することは、原賠法第四条(責任の集中)に抵触するのではないか。政府の見解を示されたい。
十六 現時点での交付国債十三.五兆円の負担金による回収は何年間になる見通しか。その間、原子力事業者が法的整理、統合などがされた場合、負担金の分担負担はどうなるのか。政府の見解を明らかにされたい。

 右質問する。

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