質問本文情報
令和元年十二月三日提出質問第一四四号
デジタル技術と公文書管理に関する質問主意書
提出者 中谷一馬
デジタル技術と公文書管理に関する質問主意書
南スーダンへの自衛隊派遣における防衛省による日報隠蔽問題、森友学園問題における財務省による公文書の隠蔽・改ざん、そして昨今の内閣府による内閣総理大臣主催「桜を見る会」の招待者名簿破棄問題など、国民は行政の公文書管理の在り方に対して、非常に疑念を抱いている。
行政文書の管理方法については、公文書等の管理に関する法律(公文書管理法)を軸に、公文書等の管理に関する法律施行令や行政文書の管理に関するガイドラインによって様々定められているが、実際は大部分が各省庁の文書管理者に運用や管理が委ねられており、特に保存期間は最長三十年間の設定まで可能となっているが、同種の行政文書であっても、文書管理者によって保存期間や廃棄に対する対応に差がみられることも多いと考える。
公文書は、公文書管理法第一条に規定されているとおり、「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」であると考えることから、公文書管理の在り方について、政府の見解を伺いたく、以下質問する。
一 公文書管理法で管理の対象となる公文書等は、「行政文書」、「法人文書」、「特定歴史公文書等」とされている。行政機関においてこの行政文書は、現用として利用された後、一定期間保存され、保存期間満了前のできるだけ早い時期に、永久保存されるか、廃棄されるか判断される。しかし、行政文書は、政策決定の根拠となる資料から、時の政権の意向が大きく反映された文書まで、いずれも非常に重要な文書であり、かつ国民からの信頼性を確保するという観点からすれば、廃棄はせず、いつでも情報公開できるようにしておくべきものであると考える。すなわち、保存期間を定めず、行政文書を廃棄するという考え方自体を改める必要があると考えるが、この考え方に対する政府の見解を伺う。
二 デジタル技術が進み、一般的に文書を容易に電子データ化することが可能となりかつ電子化コストが安価になった現代において、文書を電子データで保存することは当たり前のこととなっている。しかし、政府の公文書管理状況については、「平成二十九年度における公文書等の管理等の状況について」(平成三十一年二月内閣府大臣官房公文書管理課)によると、各行政機関が保有する全ての行政文書ファイルは千八百七十四万ファイルあるが、そのうち電子データで保存されているのは、わずか六・七パーセントにすぎず、九三・一パーセントが紙媒体で保存されている。電子データで保存することにより、文書の管理コストが飛躍的に下がり、必要な文書を検索する利便性も向上し、文書の改ざん防止性も高まることから、一刻も早く全ての行政文書を電子データとして保存することとし、かつ永久保存とするべきと考えるが、この考え方に対する政府の見解を伺う。
三 「行政文書の電子的管理についての基本的な方針」(平成三十一年三月二十五日内閣総理大臣決定)においては、将来的には文書管理業務の処理の自動化や行政文書の探索・利用を含め、確実かつ効率的に管理を行うことができる枠組みを構築することにより本格的な電子的管理を実現することとされ、政府全体としては、令和八年度を目途として本格的な電子的管理に移行することを目指すこととされた。しかし、平成二十九年度における電子化率がわずか六・七パーセントであることを鑑みれば、本当に令和八年度までに一〇〇パーセントを達成できるのか疑義を持たざるを得ない。政府として、行政文書の電子化率一〇〇パーセント達成に向けて、どのようなロードマップを描いているのか具体的にお示しいただきたい。また、政府として必ず令和八年度までに行政文書の電子化率一〇〇パーセントを達成するという意気込みがあるのか見解を伺いたい。
四 令和元年十二月二日の参議院本会議において、安倍内閣総理大臣は、内閣総理大臣主催の「桜を見る会」の招待者名簿のデータ管理については、サーバ上でデータを管理する「シンクライアント方式」を用いていることを答弁されているが、シンクライアント方式によるデータ管理であれば、仮にサーバ側の名簿データを削除したとしても、削除した日付と作業者のログがサーバ上に残るので、調査すればいつ誰が削除したのかすぐに判明する。以上の観点から政府としていつ、誰が名簿の削除を行ったかについての調査を行い、当該調査結果を公表していただきたいと考えるが如何か。政府の見解を伺う。
五 南スーダンへの自衛隊派遣における防衛省による日報隠蔽が行われた際の公文書データ及び森友学園問題における財務省による公文書隠蔽・改ざんが行われた際の行政文書データは、シンクライアント方式により管理されていたのかどうか、ご回答を頂きたい。
六 カジノ管理委員会の委員長に北村道夫氏が就任することとなった。
カジノ管理委員会の任務は「カジノ施設の設置及び運営に関する秩序の維持及び安全の確保を図る」こととされている。
平成二十九年、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊部隊の日報について、廃棄したとしていながら実は保管をしていた問題は、当時の稲田朋美防衛大臣の辞任にまでつながった大変重要な問題となった。
その時、防衛監察本部が行った「特別防衛監察」というものがあったが、これは「日報」を陸上自衛隊が隠蔽したのか、この隠蔽に大臣が関与していたのか、などを明らかにする大変重要な調査であり、国民の関心も高い事案だったが、結果としては非常に曖昧な、「防衛大臣に対し、陸自における日報の取扱いなどについて説明がなされたことがあったが、その際のやり取りの中で、陸自における日報データの存在について何らかの発言があった可能性は否定できないものの、陸自における日報データの存在を示す書面を用いた報告がなされた事実や、非公表の了承を求める報告がなされた事実はなかった。」という、疑惑が晴れることがない監察結果だった。
この時の防衛監察本部のトップを務めていたのが、北村氏である。
この事例から分かるとおり、公文書管理が適切に行われていなかったにもかかわらず、その全容を明らかにできなかった北村氏を、国内で初めてとなるカジノ施設の導入の要となる委員会において、委員長として選任することは疑問であり、委員長の人選を見直すべきと考えるが如何か。政府の見解を伺う。
右質問する。