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令和二年六月四日提出
質問第二二九号

国立ハンセン病資料館の嘱託職員雇止めに関する再質問主意書

提出者  阿部知子




国立ハンセン病資料館の嘱託職員雇止めに関する再質問主意書


 「国立ハンセン病資料館の嘱託職員雇止めに関する質問主意書」(以後、前回質問主意書)は、国立ハンセン病資料館の現館長によるパワーハラスメントとセクシャルハラスメント問題を解決するために労働組合を作った当初メンバー三人のうち二人の嘱託員(以後、二人)が、国立ハンセン病資料館の運営を、厚生労働省から新たに受託した事業者から採用されず、事実上の雇止めにあった問題の解決につながる一手段として政府見解を質したものである。
 ところが、政府答弁からは厚生労働省が委託者として問題解決に取り組もうとする姿勢が読み取れなかった。そこで、当事者らがやむなく「公益財団法人笹川保健財団」(以後、笹川保健財団)に提出した公開質問状や、展開中の署名活動なども参考にして、さらに具体的に尋ねる。

一 前回質問主意書の問六では、「国立ハンセン病資料館において学芸員に対するセクシャルハラスメントやパワーハラスメントがあり、その解決を求めたこと」が、国家公務員一般労働組合国立ハンセン病資料館分会の設立の背景にあるとの事実を政府は承知しているかどうかを尋ねたが、政府は承知していない旨を答弁した。
 1 現在、設立の背景を含めた説明と共に、当該の労働組合が「日本財団から要請されて受託者となった笹川保健財団による二人の不採用は、両財団による労働組合つぶしのための不当労働行為に他なりません」として、二人の不採用を「撤回してください」と笹川保健財団と日本財団に求める署名活動を行っていることを政府は承知しているか。
 2 政府の委託事業に関して、委託者である厚生労働省による解決姿勢が見られず、このような署名活動が展開していることについての見解を明らかにされたい。
二 国立ハンセン病資料館の現館長によるパワーハラスメントに関する指摘は、二〇一九年四月二日十時半から会議室で行われた館長の新年度訓示を、厚生労働省健康局難病対策課の複数の課長補佐および係長らも出席していたから、その一端を認識しているのではないかとの指摘がある。
 たとえば、訓示の中で館長は職員について、「気にくわなければものを言わないだけだ。気に入ればちゃんと話すだけ。気に入れてほしければね、そのようにちゃんとつとめろ。当たり前だろ。館長のお気に召さないようなことするなんて、そんなのおかしいよ。まずはお気に召すようなことしろよ」などの発言が記録されている。
 また、特定の職員について「私が本省に辞めさせろって言ったのは、さっき言った一人だけ。私をね、「お飾り」って言う。(略)私は即刻、本部に飛んだ。いや、日本財団。そして指示をした。あの男は辞めさせろ。辞めさせろって、財団をじゃないよ。資料館から出せ。(略)だから処罰しろって、ちゃんと言った。どう処罰したか、私知らない。でもここから消えてなくなったから、処罰されたんだろう」などの発言が記録されている。
 一方、厚生労働省が五月十五日に公表した「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書」三頁によれば、パワーハラスメントが次のように定義されている。
 「労働施策総合推進法及び同法に基づく指針により、職場におけるパワーハラスメントとは、職場において行われる以下の三つの要素をすべて満たす言動とされている。
  @ 優越的な関係を背景とした言動であって
  A 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
  B 就業環境が害されるもの」
 その労働施策総合推進法第三十条の二第一項は、「事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」と定めている。
 新年度訓示で行われた館長の発言について、政府、とりわけ厚生労働省は改めて確認し、措置を講じるよう善処すべきではないか。
三 前回質問主意書の問二は、ハンセン病療養所の入所者の全国組織である「全療協」が発行した二〇一三年七月一日付けの「全療協ニュース」で、次年度予算に向けた要求に対し、厚生労働省疾病対策課が、「学芸員の継続雇用については」「運営する団体と契約の際に、専門性等の問題があり、継続して雇用することが望ましいとの条件を付けている」とされていたことについて政府の事実認識を尋ねたものだ。
 これに対して政府は、「お尋ねの「事実」が御指摘の「二〇一三年七月一日付けの「全療協ニュース」」の二面に記載がある「資料館の専門性と継続性という点から、公募や契約の際の事項に学芸員はハンセン病等に関する知識や経験を有するものであるという条件をつけること」を指すのであれば、厚生労働省においては、平成二十六年度の国立ハンセン病資料館の運営業務に係る企画競争の実施に当たり、募集要領において、企画競争の参加資格の一つとして、「学芸員及び司書については、業務の専門性・特殊性からハンセン病等に関する知識や経験を有する者であること」を定めていたところである」と答弁した。つまり、全療協と厚生労働省は同じ認識であったことがわかる。
 1 二〇一六年七月一日付けの全療協ニュースでも、全療協が厚生労働省に行った次年度予算要求の際の難病対策課長の回答として、「国立ハンセン病資料館はじめ各園の歴史館、交流会館の学芸員の地位の安定化についてはハンセン病資料館の専門性、あるいは展示内容等の継続性が非常に重要だと思うので募集とか契約の際に専門性や継続性を最低条件という形にしている。この考え方は非常に大切でありこの方法を変えるつもりはない」旨を回答したことが記録されている。
  この難病対策課長の回答は、「募集とか契約の際に専門性や継続性を最低条件という形にしている。この考え方は非常に大切でありこの方法を変えるつもりはない」旨を、二〇一三年よりもさらに強く継続性を重視して条件づけたと考えられる。
  政府も同じ事実認識か。
 2 委託者である厚生労働省が、「企画競争の参加資格の一つとして、「学芸員及び司書については、業務の専門性・特殊性からハンセン病等に関する知識や経験を有する者であること」を定めていた」にもかかわらず、受託者である笹川保健財団が、二人の職務経験(十八年と約三年半)を考慮せずに採用しなかったのはなぜか、委託者として確認をすべきではないのか。
 3 厚生労働省が企画競争の参加資格の一つとして定めたことに反して、受託者である笹川保健財団が二人の知識や経験を考慮せずに不採用としたことは、客観的に見れば、館長のハラスメント問題解決のための労働組合潰しではなかったとの疑念が湧く。受託者に対し、不採用の理由について、合理的かつ客観的な説明を求めることに、どのような不都合が事業委託者である厚生労働省にはあるのか。政府の見解を明らかにされたい。
 4 二人が採用されなかったことには、客観的な理由が必要であると政府は考えないのか。
 5 笹川保健財団は二〇二〇年三月に国立ハンセン病資料館の学芸員の採用試験を実施したが、二人を不採用としたため、当事者を含めた労働組合が、不採用の理由を明らかにして欲しい旨を、同年四月二十八日付けの公開質問状で問い、笹川保健財団は同年五月十五日付けで「回答する意思はございません」と回答した。政府は、厚生労働省の委託事業に関して、このような公開質問状と回答が取り交わされたことを承知しているか。
 6 結果として四月からの資料館体制に欠員が生じ、笹川保健財団は新たな学芸員募集を五月末締め切りで行った。二人はその募集に応じて採用試験申込を行ったが、六月二日までに、採用する意向はない旨が通知されている。政府はこの事実を承知しているか。
四 前回質問主意書の問三で、労働契約法第十八条で定められている「同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす」がどのように運用されるべきかと尋ねたことに対し、政府は「司法において判断されるものであり、政府がお答えする立場にはない」と答弁した。
 国立ハンセン病資料館の運営業務の委託者であり、かつ労働契約法の所管省として範を示すべき厚生労働省として、あまりにも無責任である。
 また、「厚生労働省において、国立ハンセン病資料館の運営業務の委託に当たり、委託先に対して労働契約法第十八条の趣旨について説明したことはない」と答弁しているが、労働法令は、常に改善されているのであり、雇用者のすべてが、すべての法令についてタイムリーに十分に理解していると考えるべきではない。少なくとも国が事業を委託する事業者には、労働契約法第十八条を含め、労働法令への理解を徹底するための説明を行う必要があるのではないか。
五 「学芸員及び司書については、業務の専門性・特殊性からハンセン病等に関する知識や経験を有する者であること」と求めながら、国立ハンセン病資料館の学芸員を、有期労働契約という不安定な形態で雇用し続けることは、不合理ではないか。
六 前回質問主意書の問四で、労働契約法第十九条では、有期労働契約に関し、「使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす」と定めていることに鑑み、「業務受託者が、前年度まで雇用されていた嘱託職員にどのような配慮をすれば、同法第十九条が適切に運用されている状態であると考えているか」と尋ねたことに対して、政府は「司法において判断されるものであり、政府がお答えする立場にはない」と答弁した。
 また、国立ハンセン病資料館の運営業務の委託に当たり、委託先に対して労働契約法第十九条の趣旨について説明したことはないと答弁した。
 さらに、政府は「厚生労働省においては、令和元年度の委託先である日本財団に雇用されていた学芸員が令和二年度の委託先である笹川保健財団による職員の募集に応ずる意向があるかどうかに関して、日本財団が笹川保健財団に対して伝えたかどうかについては、承知していない」と述べた。
 これでは、厚生労働省は事業委託者として責任逃れに終始しているだけではなく、労働契約法第十九条違反が起きたとの指摘に対して、労働契約法の所管省としての判断を示すことからも逃げていると言わざるを得ない。
 1 労働契約法第十九条の観点から、笹川保健財団が二人の「申込みを拒絶」した理由を確認すべきではないか。
 2 厚生労働省の他の委託事業でも労働契約法第十九条が遵守されているかどうかを調査すべきではないか。
 3 今後、厚生労働省の委託事業において、委託の際に、労働法令の遵守の徹底をどう図り、周知していくか。

 右質問する。

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