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令和二年十一月三十日提出
質問第六四号

原子力安全協定における周辺自治体間の権限格差解消のための法整備に関する質問主意書

提出者  山本和嘉子




原子力安全協定における周辺自治体間の権限格差解消のための法整備に関する質問主意書


 平成二十三年に発生した福島第一原発の事故を踏まえ、国は原子力災害対策特別措置法(以下、原災法)に基づき、新たな対策指針を策定し、対策を重点的に実施する区域として「予防的防護措置を準備する区域」を意味する「PAZ(発電所から概ね半径五キロメートル圏内)」と「緊急時防護措置を準備する区域」を意味する「UPZ(発電所から概ね半径三十キロメートル圏内)」を設定した。これによりUPZ内の全ての自治体(以下、周辺自治体)は新たに原子力避難計画を作成・実施する法的責務を負うこととなった。一方、地域と事業者の信頼関係にとって重要な役割を持つ原子力安全協定は事故以前と同様に、両者の自主交渉に委ねられたままである。その結果、協定に盛り込まれる項目の種類や、再稼働等への事前了解の権限の有無、またそもそも協定が締結されるかどうかについては、その自治体が原発の立地自治体にどう隣接しているか、交渉がどのような歴史的経緯で進められたかなど、必ずしも明確・統一的とは言えない基準で決まっている実態がある。周辺自治体からは「国が仕組みを作らなければ各自治体が個別交渉で苦労を重ねるだけ」との極めて強い不公平感が表明されており、この原子力安全協定における周辺自治体間の権限格差問題を解消するためには、国が協定締結の基準や枠組みなどに関する法整備を行う必要性があると考え、以下質問する。

一 現在の法体系では、再稼働を含め原子力安全規制については専門性と独立性の高い原子力規制委員会に一元化しており、いわゆる事前了解権や法的な同意プロセス等を定めた法令は見当たらないが、それは、たとえ原発立地自治体についてであっても、事前了解やその手順・基準などを法定化する必要はない、との政府としての判断からか。判断の根拠や論理も併せて明らかにされたい。
二 原発の再稼働に際して事業者は、原子力規制委員会の安全判断だけでなく、立地自治体から事前了解を得ることが常態化している。また、そのベースである安全協定の締結は法的規制でないにもかかわらず、昭和四十四年の福島県と東京電力による最初の協定以来、各地に広がり通例となっている。しかも二年前の二〇一八年三月には、茨城県の東海第二原発の再稼働に際して事業者は、立地自治体だけでなく周辺自治体にまで事前了解権を認める安全協定を結ぶに至っている。つまり実際には周辺自治体側が、現行法で担保される安全性以上のものを得ようとする一方、事業者側も法律で求められていない事前了解権を自治体側に拡大的に付与している現実がある。これはまさに現実社会において法外の価値が見出され、その価値を法として確定していく作業が国として求められている端緒そのものと考えるが、政府の見解及び取組を明らかにされたい。
三 原発銀座と呼ばれる福井県の若狭湾沿岸部に隣接する京都府北部には、高浜原発のPAZとUPZ内に福井県の二倍以上、合計約十二万もの住民が暮らしている。しかし京都府北部の自治体の中には京都府を含め、避難に意味のある「原発からの距離」で決められたUPZ内であるにもかかわらず、立地自治体に接する「隣接」自治体であるが故に、「立地」自治体の持つ事前了解権のない安全協定となっている舞鶴市や綾部市、また、立地自治体に隣接する自治体に隣接する自治体、すなわち「隣々接」自治体のために安全協定より項目数が絞り込まれた通報連絡協定となっている宮津市や福知山市、更には、立地自治体との関係が「隣々々接」自治体であり、協定自体が未締結との伊根町などが存在する。原災法に基づきUPZ内の全ての自治体は、原発の立地自治体同様に原子力避難計画の作成・実施義務がかかるわけで、そのことが示唆するように、安全安心に行政上の境界は意味がなく、隣接、隣々接、隣々々接という分け方自体がナンセンスである。原子力安全協定における周辺自治体間の権限格差問題を放置することに科学的合理性や法的整合性があるとは考えられず、原子力安全協定の在り方については国が責任をもって、対象となる自治体の範囲、協定項目や基準を法令上明確に定めるべきと考えるが、政府としての見解及びその根拠を明らかにされたい。

 右質問する。

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