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令和二年十二月一日提出
質問第七四号

「二兎でなく三兎を追う」厳しい戦いを強いられる今後の我が国の財政運営に関する質問主意書

提出者  山本和嘉子




「二兎でなく三兎を追う」厳しい戦いを強いられる今後の我が国の財政運営に関する質問主意書


 財政制度等審議会(以下、財政審)は先週十一月二十五日、「令和三年度予算の編成等に関する建議」の中で「世界は新型コロナの感染拡大防止と経済回復の二兎を追うことが求められており、加えて、新型コロナ流行前から危機的な財政状況にある我が国では、財政健全化という三兎を追い、そのいずれも実現しなければならない」と、今後の我が国の財政運営の在り方に強く警鐘を打ち鳴らした。ただ当面必要なのは「命と暮らし」をしっかり守る財政運営であり、それがなければ倒産廃業・大量解雇が社会現象となり、誰しもが支出を切り詰める結果、総需要は落ち込み、危機に拍車がかかってしまう。建議で言うワイズスペンディングは正しい発想だが、性急過ぎる緊縮マインドでは「急いては事を仕損じる」。詰まるところ重要なのは、どのタイミングで政策の優先度を切り替えていくかという時間軸の視点であり、財政審の指摘する「三兎」のうち、現在はトーンダウンせざるを得ない財政健全化の実現ではあるが、政府はこの目標を途中段階でも棚上げすることなく、また、その旗をあたかも降ろしたかのように国内外で受け取られることのないようにすべきと考え、以下質問する。

一 政府は今年七月、経済財政運営の指針となる「経済財政運営と改革の基本方針二〇二〇」を閣議決定したが、前年版まで中核的テーマの一つであった「国・地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化」「債務残高の国内総生産比率の安定的な引下げ」など、継続して掲げてきた財政健全化の記述が今回は丸ごと消えている。背景に新型コロナウイルス感染症への緊急対応があるのは十分理解できるが、国家としての財政運営に関する基本方針において、その目標への言及を全面割愛することで、我が国が財政再建の旗をあたかも降ろしたかのように国内外で受け取られることのないようにすべきと考えるが、政府としての見解を明らかにされたい。また、財政審による「二兎でなく三兎を追う」との建議に対する認識・対応も併せて明らかにされたい。
二 二〇二五年度における「国・地方を合わせた基礎的財政収支の黒字化」目標について専門家によると、感染収束後の経済回復にある程度時間を要すると考えても、五年あれば悲観する理由は見当たらず、繰越欠損による法人税減収等に対処できれば悪影響の最小化は十分に可能であり、現在の黒字化目標の時期を変更する必要はないとの分析だが、政府としての現時点での認識を明らかにされたい。
三 財務省作成の「一般会計における歳出・歳入の状況」のグラフは、歳出が一貫して伸び続ける一方で、税収が伸び悩み、その差がちょうど「ワニの口」に見えるところから「ワニ口グラフ」と呼ばれてきた。しかし今年度、二度にわたる大規模補正後の歳出は百六十兆円を超え、「ワニの口」は一挙に大きく開き、今度は「ワニの大あくび」の如き様相へと一変した。これはコロナ対策に不可欠な財政出動の結果だが、同様に、大きな支出を一時的に必要とした東日本大震災の復興事業の場合とは異なり、財源論が必ずしも十分につまびらかになっていない印象が残っている。現段階で敢えて言えば、景気回復後の低率増税など課税平準化の発想で対応するのが基本と考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
四 国の掲げる目標「基礎的財政収支の黒字化」と「債務残高対GDP比の安定的な引下げ」については、前者が実現できれば、名目金利と名目成長率が等しくなる条件下では、後者もほぼ自動的に達成される関係と考える。しかしそれだけでは、既に一千兆円に近づきつつある我が国の債務残高は、いわば万年雪や氷河のように溶けて消えるまで果てしない年月を要することになる。「毎年の赤字減らしだけでも大変で、積み上がった借金返済など後回しだろう」との意見も耳にするが、この累積債務を最終的にどうするのか、完済をどう目指すのか目指さないのか等の論点を整理しておくことは重要なことと考えるが、政府としての認識を明らかにされたい。
五 我が国の財政状況をめぐる政府予測、例えば内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」等については、過去の政府予測値と実績値とを比較し、政府予測が楽観的になる傾向があるとの指摘や、財政政策を担う当事者である内閣府や財務省等の推計にはそもそも信頼を置きにくいとして、試算への信認を得るために客観性を制度的に担保する必要があるとの指摘が専門家等からなされている。また中には、諸外国で既に実例のある、政府から独立した、政治的に中立の立場から財政政策等の監視分析を行う、いわゆる「独立財政機関」を我が国でも創設すべきとの提言もあるが、政府としての認識を明らかにされたい。

 右質問する。

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