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令和三年六月十日提出
質問第一八三号

新型コロナウイルス感染症の水際対策の法的根拠等に関する質問主意書

提出者  山尾志桜里




新型コロナウイルス感染症の水際対策の法的根拠等に関する質問主意書


 現在、政府は、新型コロナウイルス感染症の水際対策を強化するため、出国前検査証明書の提示、入国時の検査、検疫所が確保する宿泊施設等での待機、公共交通機関の不使用などの誓約書の提出などを行っているとしている。それぞれの事実関係および法的根拠について質問する。

一 出国前検査証明書の提示について
 1 現在、検疫所は、我が国への入国者に対し、出国前検査証明書の提示を求めている。出国前検査証明書の提示は、入国者の法的義務なのか、協力事項にとどまるのか、根拠条文とともに明らかにし、あわせて提示を拒否した事例の有無、件数および日本人帰国者の内訳を示したうえで、提示拒否への対応を説明されたい。
 2 厚生労働省サイトの「水際対策の抜本的強化に関するQ&A」には、「令和三年三月十九日より、検査証明書を提出できない方は、検疫法に基づき、日本への上陸が認められません。」と記されている。この「検査証明書を提出できない方」には、日本人帰国者が提出した検査証明書を検疫官が無効と判断した場合も含まれるのか。また、検査証明書の不提出、または証明書の無効により、上陸を拒否する場合、その措置の根拠条文は何か。
 3 検査証明書の不提出、または証明書の無効により、日本人帰国者が出発地の外国に送還された事例があると報道されている。そうした事由により上陸を拒否した件数、出発地の外国に送還した件数、およびそれぞれの日本人帰国者の内訳を明らかにされたい。また、出発地の外国に送還された日本人帰国者がいる場合、当該外国で問題なく受け入れられ、その後、無事帰国を果たしているのか、根拠条文とともに明らかにされたい。
 4 3の事例のうち、出発地の外国に送還された日本人帰国者がいる場合の送還措置は、我が国が批准している「市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)」の第十二条4「何人も、自国に戻る権利を恣意的に奪われない」との規定に抵触する可能性があり、送還ではなく空港で留め置き、検査を行うこともできたのではないかと考えられる。当該措置が適法、適切であったと言えるのか、明らかにされたい。
 5 3の措置を行ったことがある場合、行政手続法第十二条ないし第三十一条に基づく所定の手続きがとられているのかどうか、行政指導に従わなかったことを理由とする不利益な取扱いを禁止する同法第三十二条第二項に違反していないと言えるのか、明らかにされたい。
二 入国時の検査について
 1 現在、我が国への入国者に対し、新型コロナウイルスの検査を実施しているが、入国時の検査は、入国者の法的義務なのか協力事項にとどまるのか、根拠条文とともに明らかにされたい。
 2 入国者が1の検査を拒否した事例において、送還、宿泊施設での待機要請、または停留処分その他の措置は行政手続法第十二条ないし第三十一条に基づく所定の手続きがとられているのかどうか、行政指導に従わなかったことを理由とする不利益な取扱いを禁止する同法第三十二条第二項に違反していないと言えるのか、明らかにされたい。
 3 入国者が1の検査を拒否した事例において、2のいかなる措置もとらず、検査を実施しないまま入国を認めたことがある場合は、その件数、および日本人帰国者の内訳を、そのような対応をとった理由とともに明らかにされたい。
三 宿泊施設での待機について
 1 現在、検疫所は、我が国への入国者に対し、入国後十四日間の自宅等での待機を求めるとともに、一部の国、地域に過去十四日間滞在歴がある者については、検疫所が指定する宿泊施設で三日間ないし十日間の待機を求めているが、宿泊施設の待機は、入国者の法的義務なのか、協力事項にとどまるのか、根拠条文とともに明らかにされたい。
 2 入国者が1の要請を拒否した事例がある場合、どのように対応したか。送還、停留処分その他の措置(不利益な取扱いを含む)を行ったことがある場合は、根拠条文とともにそれぞれの件数、および日本人帰国者の内訳をお示しいただきたい。また、それらの措置をとらず、対象者に宿泊施設での待機もさせないまま、入国を認めたことがある場合は、その件数および日本人帰国者の内訳、そのような対応をとった理由についても、明らかにされたい。
 3 2の措置は行政手続法第十二条ないし第三十一条に基づく所定の手続きがとられているのかどうか、行政指導に従わなかったことを理由とする不利益な取扱いを禁止する同法第三十二条第二項に違反していないと言えるのか、明らかにされたい。
四 誓約書の提出について
 1 現在、検疫所は、我が国への入国者に対し、十四日間の公共交通機関の不使用、自宅等での待機、健康状態の報告、位置情報の保存・提示、接触確認アプリの導入について誓約書の提出を求めているが、誓約書に記載された誓約事項及び誓約書の提出は、入国者の法的義務なのか、協力事項にとどまるのか、根拠条文とともに明らかにされたい。
 2 入国者が誓約書の提出を拒否した事例、および全部または一部に同意しない意思を示して誓約書を提出した事例がある場合、どのように対応したか。公表、停留処分その他の措置(不利益な取扱いを含む)を行ったことがある場合は、それぞれの件数、および日本人帰国者の内訳を明らかにされたい。これらの措置もとらず、入国を認めたことがある場合は、その件数、および日本人帰国者の内訳も明らかにされたい。そのような対応をした理由についても、明らかにされたい。
 3 2の措置を行ったことがある場合、当該措置は行政手続法第十二条ないし第三十一条に基づく所定の手続きがとられているのかどうか、行政指導に従わなかったことを理由とする不利益な取扱いを禁止する同法第三十二条第二項に違反していないと言えるのか、明らかにされたい。
五 停留について
 1 検疫法は、検疫法第二条第二号に掲げる感染症に感染したおそれのある者について、検疫所長が、合理的に必要と判断される限度において停留させることができ、その場合、検疫所長が指定する宿泊施設内に収容する方法により停留させることができるとする(検疫法第十四条第一項第二号、第十六条第二項)。ここにいう「感染症に感染したおそれのある者」とは「感染症の患者と接触した者」をいうとの政府答弁がある(第百六十九回国会参議院厚生労働委員会、平成二十年四月二十四日)が、この見解に変更はないか。もし変更したのであれば、いつ、どのような形で変更されたのか、明らかにされたい。
 2 1の見解に変更がないのであれば、入国者が提示した出国前検査証明書による陰性証明が有効と判断され、かつ、入国時の検査で陰性と判断された場合、当該入国者が「感染症の患者と接触した者」であると確認されない限り、「感染症に感染したおそれのある者」に該当しないため、検疫法に基づく停留はできないと考えられるが、そのような認識でよいか。
 3 検疫法に基づく停留に関しては、平成二十一年五月十三日付けで、厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部事務局が各検疫所長に向けて発出した「検疫法に基づく停留の期間に関する考え方について」と題する事務連絡があり、停留開始日時は「新型インフルエンザの疑いのある者が患者であると確定した時刻」、とする考え方が示されたことがある。この見解は、新型インフルエンザに関するものであるが、新型コロナウイルス感染症が確認されて以降、専門家に諮問するなどして、検疫法に基づく停留の考え方を整理したことはあるのか、もしあればその内容を明らかにされたい。
 4 検疫法第十四条第一項第二号に基づく停留を受けた者が検疫所長に停留の解除を求めたときは、検疫所長は、感染症の病原体を保有しているかどうかの確認をしなければならず、感染症の病原体を保有していないことが確認されたときは停留を解除しなければならないとされる(検疫法第十六条第四項、第六項、第七項)。新型コロナウイルス感染症の水際対策に関連して、停留処分を受けた者が停留解除の申立てをしたことがある場合、その申立て件数、停留解除の件数、および日本人帰国者の内訳を明らかにされたい。
六 個人情報の取得について
 1 入国者は、誓約書に基づき、健康状態や位置情報などの個人情報の提供を誓約させられているが、誓約書には、誓約に違反したとき、または誓約書の提出に応じないときは停留処分を受ける可能性があることが記され、実際に誓約書の提出に応じず停留処分を受けた入国者の事例があったと承知している。これは、個人情報の取得につき同意を強制していることにならないか。入国者からの個人情報取得につき、個人情報保護委員会の見解を得ている事実はあるか、あればその内容を明らかにされたい。
 2 入国者が誓約書に基づき提供した健康状態や位置情報などの個人情報が、検疫所が委託した民間事業者に提供されている事実はあるか。検疫所や検疫所が委託した民間事業者が保有する入国者に関する個人情報は、自宅等の待機期間満了後、どのように取り扱われているのか、明らかにされたい。

 右質問する。

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