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令和三年十二月六日提出質問第四号
現金とクーポンという給付方法の違いによる経済効果の比較などに関する質問主意書
提出者 櫻井 周
現金とクーポンという給付方法の違いによる経済効果の比較などに関する質問主意書
コロナ克服・新時代開拓のための経済対策(令和三年十一月十九日閣議決定)では、児童を養育している者の年収が九百六十万円以上の世帯を除き、零歳から高校三年生までの子供たちに一人当たり十万円相当の給付を行うこととしている。そして、この十万円は、五万円を現金で、五万円をクーポンで給付を行うこととしている。
十万円を全て現金で給付した場合の事務経費は約三百億円と見積もられているのに対して、閣議決定のとおり現金とクーポンによる給付とした場合の事務経費として約千二百億円かかることが明らかになった。
また、その後の財務大臣の記者会見で、五万円を現金ではなくクーポンとすることで事務経費が約九百六十七億円増加することが明らかになった。クーポンにするのであれば、事務経費の増加以上の経済効果が期待できるか、いわゆる賢い支出(ワイズスペンディング)となっているかが問題となると考える。
給付の方法を現金からクーポンに切り替えれば、家計においては有効期限のあるクーポンを優先して使うことになると考えられる。しかし、クーポンそのものは貯蓄できないとしても、そのクーポンでもともと買うはずだったものを買えば、その分手持ちの現金が節約できるので、その節約分相当の現金が貯蓄に回るのではないかとも考えられる。すなわち、国民が合理的な消費行動を行うと考えれば、現金で給付されても、クーポンで給付されても、同じ割合を貯蓄に回すことになると考えられる。
このことについては、平成十年の緊急経済対策で実施された「個人消費喚起、地域経済活性化のため地域振興券」の経済効果についての経済企画庁の調査結果「地域振興券の消費喚起効果等について(平成十一年八月)」によれば、「地域振興券は、調査世帯については、本年三月〜六月の消費を直接的に、振興券既使用金額の三十二%程度分、新たに喚起したとみられる。」としている。また、内閣府経済社会総合研究所主任研究官などによる分析(ESP二〇〇二年九月号)によれば、一九九八年の特別減税の方が一九九九年春に実施の地域振興券に関する事業よりも消費喚起効果は少し大きいが、統計学的に有意な差があるといえるほどの差ではない、としている。すなわち、過去に実施された減税と給付事業の結果を比較した分析によれば、地域振興券が減税よりも消費喚起効果が大きいとはいえない。
そこで、以下、質問する。
一 今般の補正予算において、わざわざ約九百六十七億円もの事務経費をかけて、現金からクーポンに給付方法を切り替えても、消費喚起効果を増やす効果は得られないと考えるが、政府の見解如何。
二 経済対策として消費喚起効果を得ることを目的にするのであれば、生活困窮者や低所得者など消費性向の高い階層に給付の対象を絞ることが有効であると考えるが、政府の見解如何。
三 十万円の給付のうち五万円をクーポンとするのではなく、十万円の現金一括給付とすることで、クーポンによる給付に係る約九百六十七億円の事務経費を節約し、この節約分を「住民税非課税世帯に対する給付金」などの事業費の増額に充てることを提案するが、政府の見解如何。
右質問する。