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令和三年十二月七日提出質問第六号
都市計画法第三十三条(開発許可の基準)の条文に関する質問主意書
提出者 早稲田ゆき
都市計画法第三十三条(開発許可の基準)の条文に関する質問主意書
都市計画法第三十三条には、「都道府県知事は、開発許可の申請があつた場合において、当該申請に係る開発行為が、次に掲げる基準(第四項及び第五項の条例が定められているときは、当該条例で定める制限を含む。)に適合しており、かつ、その申請の手続がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反していないと認めるときは、開発許可をしなければならない。」と記されている。
一方、開発に起因する水害の増大を防止するため、同条第一項第三号には、「排水路その他の排水施設が、次に掲げる事項を勘案して、開発区域内の下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)第二条第一号に規定する下水を有効に排出するとともに、その排出によつて開発区域及びその周辺の地域に溢水等による被害が生じないような構造及び能力で適当に配置されるように設計が定められていること。この場合において、当該排水施設に関する都市計画が定められているときは、設計がこれに適合していること。」と記されているが、降雨量が地域により異なるためか、同法には具体的な降雨量に関する基準が示されていない。
また、同法施行令第二十六条第一項第二号には、「開発区域内の排水施設は、放流先の排水能力、利水の状況その他の状況を勘案して、開発区域内の下水を有効かつ適切に排出することができるように、下水道、排水路その他の排水施設又は河川その他の公共の水域若しくは海域に接続していること。この場合において、放流先の排水能力によりやむを得ないと認められるときは、開発区域内において一時雨水を貯留する遊水池その他の適当な施設を設けることを妨げない。」と記されている。
すなわち、開発に伴う水害の増大防止に関しては、都市計画法第三十三条の開発許可の基準において、各自治体の開発区域及びその周辺の地域に溢水等による被害が生じないような構造及び能力が担保された設計に委ねられていると言える。
横浜市の場合、条例で他の自治体よりも厳しい三十年確率雨量(一時間に約七十五ミリ)に対応する調整池の設置が規定されているが、それでもなお、昨今、気象の激化に伴い全国的に観測されるようになってきた一時間に百ミリを優に超えるような豪雨には対応できず、この規定に基づき開発が許可された場合、水害の増大が容易に予見できることは言を俟たない。
従って、当該条文に則り都道府県知事や政令指定都市の市長が各自治体の溢水対策基準に則って開発許可をすれば、水害発生の頻度と規模が増大することは明らかである。
各自治体の開発に伴う水害防止策が、加速する気象の激化に適応できていないことは、二〇一五年に水防法と防災基本計画が改正され、「国民には想定最大級の大雨による浸水区域を明示しておき、水害発生が予測される場合、安全第一に考え早期の避難を促す(要約)」という政策(避難勧告も本年五月に避難指示に変更)を取らざるを得なくなっていることからも明らかである。
すなわち、都市計画法第三十三条で、開発許可の基準として各自治体に対し溢水が発生しないような開発設計を義務付けながら、それが遵守されていないのが現状である。
地震については、震度六以上の大規模地震の際にも建物が倒壊・崩壊しないという基準が定められているのに対し、同じ自然災害である開発に伴う水害の増大については、上記のように国民の安全が担保されていないこととなる。このような状況を踏まえ、以下質問する。
一 都市計画法第三十三条(開発許可の基準)の条文、「開発行為が法令等、開発の基準に適合し、かつ、その申請の手続がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反していないと認めるときは、開発許可をしなければならない。」の趣旨に関し、各自治体における水害防止のための開発許可の基準が、昨今の気象の激化に伴う豪雨に適応できておらず、この基準で開発許可をすれば、新たな水害をもたらすという状況に陥っていることについて、政府の見解を明らかにされたい。
二 横浜市は、同市の水害増大等を防止するための条例が、昨今の豪雨に適応していないことを認識しながら、二〇一八年三月都市計画決定された同市栄区上郷猿田地区都市計画の一部で、これから申請される上郷開発計画について、申請があれば都市計画法第三十三条の開発許可の基準に則って判断するとしている。これについて政府の見解を明らかにされたい。
右質問する。